第12話 強敵 Ⅰ
「こ、坑道を抜けましたね……。」
「……はい。」
死体を片付けてから帰ってきたと思ったら先程までの頼れるお姉さんは何処かへ行き、ポンコツお姉さんが帰ってきた。
本人によると……。
「そ、そういう状況になれば真面目モードが暫くは続くんですけど……だれか先輩に会うと自信が持てなくなっちゃんです〜。」
とのことだ。
まぁ、実際はかなり頼りになるというのは分かったし、問題は無い。
「どうやら見張りは居ないみたいですね。付近に人も居ないし行くなら今ですね。」
「い、行きましょうか。念の為『隠密』を使って進みましょう。」
レインの提案通りに『隠密』を発動する。
レインの手を引き先導する。
影で見つかってしまうという欠点が分かったのでできる限り影の中を移動するようにした。
村の中心まではそこまで遠くは無い。
というか、『ワープ』先に最適な場所がある。
「こ、ここは?」
「廃屋です。村ではお化け屋敷だとか色々と言われていて近寄る人は居ません。俺も基本近寄りません。」
村には人が殆どおらず、警備のための警官が数名いるに過ぎなかった。
そのお陰でスムーズにここまでこれた。
扉は板が打たれており、入れない。
が、裏手の窓からは入れそうだ。
「ここから入りましょうか。」
「は、はい。」
手を繋ぎながら入る。
中は蜘蛛の巣やホコリまみれであり、暫く使われていない事が見て取れる。
「さて、ここからどうしましょうか。」
「も、もう少し奥まで行って『ワープ』先を登録しておきたいです。」
レインの提案通りに廃屋の中を探索する。
結構な豪邸で二階、三階まであったが、取り敢えず一階のみマッピングした。
「これでこの一階はどこにでも行けますね。」
「……。」
レインは階段を見ている。
二階も行きたいのだろうか。
「二階も行っておきますか?」
「い、いえ!今は取り敢えず戻りましょうか!隊長の方も進展があるそうなので。」
先程死体を片付けた時に話をしたのか。
ならば、戻ったほうが良いな。
「じゃ、じゃあ、戻りましょう。」
「はい。」
手を握り、『ワープ』する。
気が付けばそこはもうシャルのいる臨時のキャンプであった。
「あ、おかえり。デートはどうだった?」
「た、隊長!」
レインは顔を真っ赤にし、シャルの元へと駆け寄り、肩を揺さぶる。
シャルは全く悪びれた様子は無い。
「ハハハ。冗談だよ。さて、君達の関係には進展が無かったようだが、こちらは進展があった。早速君の力を貸してほしいんだ。」
「俺の?」
シャルは頷く。
「あぁ。国はこの村の事件を重く見たのか騎士団を派遣するつもりらしい。もしそうなれば村の警備は厳しくなり君の復讐も我々の情報収集や排除も難しくなる。」
「つまり、騎士団を排除しろと?」
シャルは笑顔で頷く。
嫌な笑顔だ。
「そうだ。君の『奇襲』を有効活用した作戦を計画した。いきなりで悪いが、君の復讐の為にも手伝ってもらいたい。」
「で、いつなんですか?」
シャルは少し驚いた顔をする。
もう少し文句を言うと思ったのだろう。
そして、少し目をそらしながら口を開く。
「……明日だ。」
「あ、明日!?」
少し申し訳無さそうにシャルは言う。
その言葉にレインが驚く。
「拠点の設営とか色々してたら警戒が遅れてねぇ……。本来なら王都からは一月近くかかる村なんだけどねぇ……。」
「い、いくら何でもアルフレッド君が可愛そうです!彼は訓練を受けた人間じゃ無いんですよ!」
「……やけに彼にご執心だね。でも、彼はやるつもりらしいよ。」
俺は頷く。
「レインさん。俺は大丈夫ですよ。全然疲れてませんし、問題はえりません。」
「ほら、彼もこう行ってるし。」
「う、うぅ……。」
レインさんとしては俺が心配なのだろう。
確かに俺は戦闘のド素人だが、目的の為ならば無理でも何でもする。
「ま、そうと決まればアルフレッド君は休んでいてくれたまえ。詳細の作戦は我々で錬る。」
「す、少しでも休んでくださいね!」
そう言うと二人は一番大きなテントの中へと入っていった。
あれが指揮所か。
まぁ、今はお言葉に甘えて休むとしよう。
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