第5話 キャンプ Ⅰ
後日、案の定警備が厳重になっていた。
村では連続殺人事件として話題が出来上がっていた。
そしてやはり……。
「ここも駄目か。」
(……やはりあなたに疑いがかかっているようですね。)
町中で巡回が行われており、その警官の手には俺の似顔絵が書かれた紙が握られていた。
俺を疑っているのか、それとも被害者として捜索しているのかは知らないが、姿が見えない以上探すのは当たり前だ。
スキルを使えば自由に行動できるが、クールタイムがあるので乱発はできない。
「……一度引き返すか。」
引き返そうとしたその瞬間、視界の隅に見覚えのある人物が映る。
「あれは……。」
あの美人はフレン。
今回の標的だ。
その顔を見て、昔の記憶を思い出す。
「もう妹に近付かないでくれる?」
厩に放り込まれる。
フレンとそれを取り巻く男達。
「じゃあ、そいつが逃げないように見張っててね。」
「おう。」
フレン達は見張りの一人を残し、何処かへと去っていく。
その中にはカインの姿もあった。
「く……。」
「おら!大人しくしとけ!」
立ち上がろうとした所、思い切り腹を蹴られる。
この取り巻きはフレンとカインの手下的存在だ。
フレンの美貌とカインのカリスマ。
その二つが村の中でも圧倒的な勢力を作るに至っている。
「お前が可愛そうだとは思うけどよ……。」
男はしゃがみ、こちらと目線を合わせてくる。
同情の目だ。
「逃げられたらご褒美が少なくなっちまうんでな!」
いきなり思い切り頭突きをかまされる。
「あ、そうだ。」
すると、フレンが戻って来ていた。
「腕の骨、折っちゃって良いから。肋も二、三本やっちゃっていいわよ。ちゃんとご褒美はあげるから。」
そう言うとにやりと笑い、スリットから足を出してみせた。
男は笑顔を隠さず、俺を殴った。
「まぁ、そういう事だからよ。我慢してくれや。」
男はそう言うと俺の腕を掴んだ。
「ま、待て!待ってくれ!」
「嫌だよ?」
思い切り、腕を反対方向に曲げられる。
今まで感じたことのない痛みに俺は悲鳴を上げた。
「あは!面白い!そんなに泣くんだ!ねぇねぇ!もう一本やってよ!」
「おうよ!」
そのまま反対も折られる。
俺は痛みに耐えられず、泣いてしまう。
「あはは!マジで馬鹿みたい!子供みたいに泣いてさ!」
「なぁ、フレン!褒美、もらってもいいだろ!」
男がそう聞くとフレンは汚物を見るような目で男を見下した。
「はぁ?じゃあ誰がこいつを見張るのよ?馬鹿なの?」
「うぐ!す、すまねぇ……。」
フレンは男の側に駆け寄り、肩に手を回す。
「……大丈夫。ちゃんと仕事が終わったらご褒美上げるから。ね?」
「お、おう!任せてくれ!」
俺はそのやり取りを見ていた。
いつか復讐するために。
「あいつには俺と同じ思いをしてもらう。苦痛を感じて死んでもらう。」
(でも、警戒は厳しいですよ。)
ティルのその言葉に思わず笑みが溢れてしまう。
「大丈夫。俺に考えがある。」
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