第3話 俊足 Ⅱ

「……おいアルフレッド!来たぞ!どこにいる!?」

 

 やはり確実なのは呼び出し、一人になった所を仕留める。

 それが確実だ。

 

「済まない。待たせた。」

「おいおい。呼び出し出しておいてそれは酷く無いか?わざわざ時間を割いてまで来てやってんだぞ?あいつの葬儀に出たかったのによ。」

 

 今、村ではセラの葬儀が執り行われている。

 

「お前が犯人を知っているっていうから来たんだぞ。適当な事を言ったら殺すからな。」

「……ついて来てくれ。」

 

 ここは山の中。

 もう少し進めば山小屋がある。

 そこは俺がこいつに良く監禁された場所だ。

 

「……この中で話そう。出来るだけ人に聞かれたくない。」

「……良いぜ。」

 

 扉を開け、中に入る。

 そして、鍵をかけた。

 南京錠だ。

 

「鍵いるか?」

「念の為だ。」

 

 そう、念の為。

 お前に逃げられないようにするためのな。

 懐のナイフを握りしめる。

 スキル『隠密』を発動させる。

 

「はぁ!?どこ行った!?」

 

 セインは慌てふためく。

 この狭い場所では俊足は意味を成さない。

 勢いをつけて扉を破ることも不可能だ。

 

「おい!まさかお前がセラを殺したのか!?」

 

 まずは足を斬る。

 軽く傷をつけるだけでスキルのおかげで重傷になる。

 

「がっ!」

 

 セインは思わず膝をついた。

 そして、その隙をついて椅子に縛り付ける。

 『隠密』を解除した。

 

「て、てめえ!なんのつもりだ!殺されてぇのか!?」

「……黙れよ。状況分かってんのか?」

 

 ナイフを首元に当てる。

 すると、セインは面白いように静かになる。

 

「勝手な想像を押し付けて殴りやがって!ただの嫉妬で蹴りやがって!ふざけんなよ!俺はセラなんぞ好きでも何でも無ぇ!あいつも俺を利用していただけだ!だから殺した!」

 

 顔面を殴り、腹を蹴る。

 

「や、やめてくれ……。」

「俺がそう言っても誰もやめてくれなかった。助けてくれなかった。」

 

 すると、セインは口を開いた。

 

「セラ……。セラは助けてただろ!」

「……無知って可愛そうだな。」

 

 ため息をつき、ナイフを構える。

 スキルのクールタイムは過ぎた。

 

「いつ斬られるか分からない恐怖に怯えながら死んでいけ。俺はここに監禁された時、扉は開いていて、いつ獣に殺されるか不安だった。お前にも味あわせてやるよ。」

 

 ナイフを握り、『潜伏』を発動させる。

 

「た、頼む!助けてくれ!何でもする!何でもするから!」

「じゃあ、死んでくれや。」

 

 セインの耳元でささやく。

 『潜伏』中でも声は聞こえるらしい。

 

「ひ、ひぃ!」

 

 すると、いきなり扉が破られる。

 扉は綺麗に斬り刻まれている。

 

「カ、カイン!」

「っ!」

 

 扉を切り刻み、入って来たのはカインだった。

 何故ここがバレたのか。

 誰にも気付かれないように細心の注意を払っていたのに。

 

「……やはり、セインか。」

「た、助けてくれ!ここにはアイツが、ア……。」

 

 口元を抑え、容赦無く喉元を掻っ切る。

 ここで正体をバラされるわけには行かない。

 それに、この状況すぐにでも『俊足』で逃げたい。

 ナイフが光り、スキルを奪った。

 

(スキル『俊足』を奪いました。『隠密』の効果が切れるまであと二十秒です。)

 

 カインは即座に警戒し刀を抜く。

 

「ここの出入り口はここだけ。俺の近くを通り過ぎれば俺は感知できる。その途端に俺は斬る。誰であれ、な。」

 

 時間の猶予はない。

 殺すにも俺じゃあこいつはまだ殺せない。

 どうする。

 一体どうすればこの状況を抜け出せる……。

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