第6話 可愛い先輩の手作りオナホ

「そういうわけなんで。悪いけど俺は帰らせて貰います」

「待ってください!」

「んほぉ!?」


 いきなり後ろから抱きつかれ思わずオホ声が飛び出す。


 ち、ちくしょう!


 なんて乳圧だ!


 こんなの絶対違法だろ!?


「愛園先輩! 離してください!」

「お願いします! 私にはどうしても竿谷君の男性器が必要なんです!」

「なわけないでしょ! サキュバスですかあんたは!」

「人間ですけど?」

「知ってますよ! とにかく! 俺は愛園先輩とはエッチ出来ません!」

「え、えっちぃ!?」

「どぁ!?」


 いきなり手を離されて盛大にすっ転ぶ。


「いてててて……」

「わ、私とエッチって……。竿谷君、あなたはなにか、とんでもない勘違いをしていませんか?」


 愛園先輩は真っ赤になってアワアワしている。


「勘違いもなにも、愛望先輩が言い出したんでしょ!」

「言ってませんよ!? 私はただ、自作のオナホールを竿谷君に試して貰いたいだけなんです!」

「自作の、オナホール?」


 突然のパワーワードに思考が停止する。


「はい。私は奉仕部の活動の一環でオナホールの研究をしてるんですけど……。言いませんでしたっけ?」

「初耳ですよ!」

「ご、ごめんなさい! 私ってちょっと天然系みたいで。竿谷君は貴重な男子の上にかなりの経験者だと聞きましたので、色々とアドバイスを貰いたいなと……」

「……はぁ」


 ツッコミどころが多すぎて何処から手を付けたらいいか分からない。


 とりあえず。


「期待を裏切るようで悪いんですけど、先輩の聞いてる話はどっかの似非ビッチが吹聴してる根も葉もない大嘘で俺は女性経験ゼロの童貞っす」

「えぇ!? その顔と男性器でぇ!?」

「驚き過ぎだろ」

「だって竿谷君、どこに出しても恥ずかしくない完璧なエロ漫画の竿役ビジュですよ?」

「むしろそんな奴はどこに出しても恥しかないだろ!」


 エロ漫画の竿役だぞ?


 存在そのものが男性器、歩く猥褻物陳列罪だろ!


 ……まぁ、それが俺なんだが。


 自分で言ってて死にたくなってきた。


「とにかく! そういう事なんで! 悪いけど先輩の期待には応えられません!」

「あ、そこは大丈夫です。童貞の方の感想も欲しかったので。むしろそちらの方が欲しいまであります!」


 グッと親指を立てるその上で巨大な胸がバルンと揺れる。


 早く帰ってシコる気満々だった俺と相棒にはあまりにも刺激が強すぎる光景だ。


 って、いかんいかん!


 鎮まれバカ息子!


 これも新手のエロ漫画展開に違いない!


「知りませんよ! そもそも俺にはその気がないんです! てか普通に考えて見ず知らずの先輩が作ったオナホを試す男子なんかいないでしょ!?」

「よかったですね! 竿谷君が栄光あるシコリ手第一号ですよ!」

「嬉しくねぇし! シンプル嫌だって言ってんの!」


 てか女子がシコリ手とか言わないでくれよ頼むからさぁ!


「どうしてですか!? 可愛い先輩の手作りオナホですよ!?」


 それは正直惹かれるけども。


「そもそもの話なんで奉仕部の活動でオナホなんか作ってのかって所ですよ! おかしいでしょ!?」

「目の付け所がシャープですよね? 自分でも感心しちゃいます!」

「褒めてねぇの! 異常だって言ってんの!」


 天然とかそういうレベルじゃない。


 シンプルに頭がどうかしてるだろ。


 まぁ、エロ漫画世界のヒロインだからと言われたらそれまでだが。


「ふむ。それでは可愛い後輩君に説明してあげましょう。そもそも奉仕部とは博愛の精神で学校の内外に向けて奉仕活動を行う部です。ここまでは分かりますよね?」

「それはまぁ、異論ないっすけど」


 愛聖はそっち系の学校だし、聖書の授業でもその手の話は嫌って程聞かされる。


「そしてオナホールは世界を救います」

「一瞬で置き去りにされたんだが?」


 あるいはここが異能力バトル漫画の世界で時間を吹き飛ばキングクリムゾンされたかだ。


 まぁ、異能力バトル漫画の世界に竿役みたいな見た目の主人公やオナホを自作するヒロインが出てくるわけはないからその可能性は皆無だろう。


「あ、ごめんなさい。IQが20以上違う相手とは会話が成立しないって事忘れてました」

「もはやそれは天然じゃなくてただの嫌な奴だし」


 テヘって舌出してんじゃねぇぞ。


 お前みたいな癖の強いバブ味枠ヒロインが居てたまるか!


 せめてエロ漫画の世界ならスタンダードな奴を出してくれよ!


「竿谷君みたいな脳ミソよりも男性器の方が大きいタイプの人類にも理解出来るように説明すると――」

「一応言っておくと俺の場合は脳ミソが小さいんじゃなくて男性器がデカすぎるだけだからな」


 当然のようにスルーして愛園先輩が話を続ける。


 いや、俺ももはや期待はしてないが。


 それでも抗う事をやめてしまったら人としておしまいだと思うんだ。


「――人間は平等ではありません。その証拠に、一生エッチする相手の出来ない人が男の人の場合約20%、女性の場合は約15%存在します」

「……すいません。いきなり怖い話するのやめて貰って良いですか?」

 

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