第34話 やってきましたドワーフ国!
活気がある、とはこういう事なのでしょう。
そう思うほどに熱量に溢れた街が目の前に広がっています。
こんにちはブロワリアです。
ドワーフ国は飛空艇を停める空港が浮島にあります、入国しない滞在者は浮島にある町で過ごすこともあり、それだけでも結構栄えています。
浮島の中をくり抜くように降りる長い階段の先、地上からはドワーフ国になります。
魔導具の発達した街は石と鉄で出来ていて緑は少なく、パッと見渡しても街中には見当たりません。
浮島から入国して直ぐに各ギルドに行けるようにと動線を組まれているので、私たちは先ず冒険者ギルドに向かいます。
そしてなんと今回の旅、フィカスさんも同行してるんです。
遡る事二日前、私たちの飛空艇に伝書魔導具で通行許可証がパフィオさんから届きました。
「あれ?これフィカスさん宛だよ?」
「え?自分ですの?」
同封されていた手紙には、フィカスさんにドワーフ国での魔導具の大量買い付けが言い付けられていました。
同時に私たちの護衛と情勢の調査が命じられていて、フィカスさんは少し大変……いえ、嬉しそうですね。
一人留守番となるユッカ爺ですが、空港のある浮島の工房に縁戚の方がいらっしゃったので、しばらくそちらに滞在しながら今回の短い空の旅で気になった箇所に手を入れるそうです。
「先ずは冒険者ギルドで滞在登録して、商業ギルドかな」
「せやね、冒険者ギルドに二人が行っている間に自分は工業ギルドの方でやることやってくるわ」
パフィオさんの指示ですが、今回のフィカスさんはペディルム伯爵家からの指示として色々あるみたいです。
そしてこの工業ギルドはドワーフ国ならではの組織。
「幾つかペディルム家から依頼があるらしいてな、まあお使いやねえ」
「じゃあ終わったら商業ギルドの前で合流しましょう」
「了解、ほないってきますー」
フィカスさんを見送り私とプルメリアは冒険者ギルドに入ります。
熱気と荒々しさが入り混じる独特の空気に一瞬足がすくみそうになりました。
今までのギルドより明らかに粗野な風体の方々、荒っぽい言葉がそこかしこから聞こえてきます。
私たちは息を飲んで受付カウンターに向かいました。
「滞在手続きをお願いしたいのですけど」
「はいはい、では冒険者証を」
サクサクと流れるように手続きを終えて、ギルド定番その国の簡易地図を貰います。
どんな依頼があるのかと依頼掲示板にも目を通しました。
「低ランク魔獣の討伐が多いね」
「採取系は山とか森に行かなきゃいけないみたいだね」
依頼の内容は結構たくさんの情報が詰まっているんです。
周辺には鉄鉱石や金鉱石などの鉱石採取場が多く、山は結構な頻度で削られているためこの辺りでは薬草など近場に生息していない、代わりに削った山から綻び出た瘴気にあてられた低ランク魔獣が多いと、治安に関わる依頼は少ないので治安は悪くないのでしょう。
私たちは確認を終えると冒険者ギルドを出て商業ギルドに向かいました。
先に用を済ませていたフィカスさんと合流して商業ギルドに入ります、フィカスさんはパフィオさんの遣いを私たちは手持ちの素材を幾つか売却してドワーフ国の通貨を手に入れました。
用向きが終われば、宿探しです。
あらかじめフィカスさんとユッカ爺がバオバブの空港で商人さんたちから聞き込んでくれていた評判の良い宿に向かいました。
「普通の部屋ひとつ、二人部屋でちょっと良い部屋ひとつお願いしますわ」
フィカスさんがカウンターで話して部屋を取ってくれました。
二階にフィカスさん、私とプルメリアは五階にある広々とした部屋です。
「今回は支払いをパフィオさまがしてくれはるから、ええ部屋にしとき」
とフィカスさんが言ったのでお任せしたら、かなり良い部屋をとってくれたようです。
「今日は散策かな、あと教会!」
「ここ、教会あるのかな?バオバブだと泉みたいなとこしかなかったよね」
「あ、そうだね、聞いてみてからかな」
私たちは簡単に置いておいて良い荷物を置き……どうしてプルメリアはクローゼットに荷物を投げる癖が治らないのかしら。
荷物を整理して宿の一階に向かいます。
既に支度を済ませたフィカスさんと合流して聞き込みです。
まずは宿の従業員さんに声をかけてみました。
「教会はないですね、精霊の加護でしたら広場の噴水がそうですよ、噴水も名所ですから是非足を運ばれては?」
「噴水?」
「ええ、魔導具を人工の池の中に仕込んで一定時間毎に水が噴き上げるんです、良い景観ですよ」
「ありがとうございます!行ってみます」
礼を言って私たちは広場に向かいました。
飾り気のない無機質でいて生命力の感じる街並みを進みしばらく歩くと開けた場所に出ました。
シュアっと水音がして広場の中央にある人工的な池の真ん中で噴き上がる水が放射線状に降り注ぐ幻想的な光景に私たちは息を飲みます。
「うわぁ凄いね」
「こりゃ見事やねえ」
「綺麗」
それぞれ賛辞を口にして噴き上げる水が止まるのを待ち、私たちは三人並んで精霊に祈りを捧げました。
ふわりと体が熱くなり「剛腕」の文字が頭に浮かびます。
「剛腕だって」
「私のこれ、初級鑑定のサーチだわ」
プルメリアはサーチを頂いたみたいです。
「うそやん」
フィカスさんが肩を落としてますが?
「自分、これでも騎士なんやけど?なんで剛腕やなくて解除なん?それシーフやレンジャーの」
ああ。
ま、まあそんなこともたまには、とプルメリアと目を合わせます。
「はぁ、自分騎士のつもりなんやけどなぁ、まあかなり役には立つからええけど」
フィカスさんは肩を落としながら立上がりました。
「さて、図書館は明日にして夕飯かな」
切り替えるように明るくプルメリアが声を上げます。
「なんやシチューが美味しい店があるって言ってはったよ」
「シチュー!行きましょう!」
フィカスさんの情報を頼りに向かった酒場は冒険者や旅の商人がごった返しています、私たちはシチューとパンを頼み一息つきました。
「さて、この後どないするん?」
「うん、図書館に行って調べものもしたいし後は魔導書の手がかりとかかなあ」
「お待たせしました」
地図を広げて話しているうちに頼んでいたシチューが届きました。
「うわぁ美味しそう!」
プルメリアが声を上げます。
テーブルに並べられたシチューはよく煮込まれた肉に野菜がゴロゴロしています。
堅めのパンがよく合います。
「せや、工業ギルドで聞いたんやけどノームの森って言うとこがあるらしいんよ、そこの住人は精霊とかなり近い生活しとるらしくて、魔導書や卵のこと聞いてみるのはどうやろか」
「ノームの森?」
「ドワーフ国ってドワーフ以外に緑と共に生きるノームって種族が住んでるんやて」
ほうほう。
ノーム族はドワーフより体躯も小柄で発展を望むドワーフ族に対し安寧を望むノーム族って感じで分かれているらしい。
対立はしてないらしいけど、不干渉として成り立っているとか。
うん、でも興味はありますね。
「行く?」「うん」
短い会話で目的地にノームの森が加わりました。
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