第4話 だんだん冒険者らしくなってきました!

 こんにちは、先日に引き続きプルメリアです。

 あれから三日、毎日角鼠を退治した結果角鼠の被害がなくなりました。

 やり過ぎだったみたいです。

 コリウスさんに指摘されて、この三日間は後方支援という形を意識して角鼠退治をしていましたが、ついつい杖でポカリとしてしまいコリウスさんに呆れられる毎日でした、でもでも私もブロワリアも三日前より少しは逞しくなったんじゃあないでしょうか。

 けれど角鼠が居なくなったため角鼠の討伐依頼がなくなってしまいました。

 どうすんだろ。

 「おはよう、今日は依頼の掲示板からスタートかしらね」

 噴水前で落ち合ったコリウスさんと冒険者ギルドに向かいます。

 「大した依頼が無いようだったらちょっと準備して洞窟にでも行ってみる?」

 コリウスさんが欠伸をしながら提案しました、洞窟探索!是非っと思ったらブロワリアの様子がおかしいね。

 「ま、まだ早いんじゃあないでしょうか」

 「早くはないわよ、それに二人だけになってから入るより私が居る間に行った方が良いと思うわよ?」

 「え?あ?」

 ブロワリアが足を止めた。

 「コリウスさん、居なくなっちゃうんですか?」

 ブロワリアが眉尻を下げて今にも泣きそうな顔をしている、私はブロワリアの肩に手を置いて諭すように口を開いた。

 「コリウスさんはあくまでも初心者の私たちのお世話をギルドから頼まれてるだけだからね、ずっと一緒に居るわけじゃないのは最初からわかってたでしょう?」

 ブロワリアも分かっているのでしょう、唇を噛んで俯いてしまった。

 たった数日だけど、ギルドに登録してからずっと一緒に居るしコリウスさんのフレンドリーさもあって、すっかり馴染んでいて私もブロワリアの気持ちは良くわかるんだ、でも。

 「Fランクの私たちにずっと付き合わせるわけにはいかないからさ、一番は安心してコリウスさんと別々の旅に戻れるように私たちがしっかりすることじゃないかな」

 小さくだけどブロワリアが頷いた。

 「あ、あの」

 「うん?」

 「洞窟、行きたいです」

 「うん、私も行きたい!」

 私たちの反応にコリウスさんは嬉しそうに頷いた。

 「コリウスさんと、プルメリアと私で洞窟、いっぱい楽しみたいです」

 「よし、じゃあ今日は準備をして明日洞窟に行きましょ」

 コリウスさんが笑ってブロワリアと私の肩に手を置いた。

 「そうね、一番近いのはいつもの森の奥にあるゴブリンの洞窟なんだけど」

 コリウスさんはどこからか地図を取り出して指を差した。

 プラム周辺の地図だ、いつもの森に山型の印がある。

 指差したのはプラムの街、そこから指をついっと動かして海岸沿いにある山型の印を示した。

 「ちょっと行きにくいんだけどね、ここなら広さもあるしパーティーでの実戦に良いと思うわ」

 ん?パーティー?三人でなら今までと変わらないよね?一応今は三人パーティーのはずだし。

 「でもココ結構な岸壁だったと思ったんですけど」

 どうやって行くのだろう、まさか岸壁を降りるとか?

 私は街に来る時に見た高い岸壁を思い出す。

 難易度高くありませんか、コリウスさん!

 「洞窟の手前に少し砂浜があるのよ、そこまで船で行って中に入ることになるわ。まずはギルドで船の手配ね」

 そう言ってコリウスさんは地図をクルクルと丸めると、出したと同じ早さで何処かに収納した。

 「ギルドに行きましょう」

 コリウスさんについて私たちはギルドに向かった。

 今日もギルドは賑やかです、ガハガハと笑っている大男を躱してカウンターに向かいます。

 コリウスさんが前に出てカウンターに向かいながら声をかけました。

 「ねえ、明日白貝の洞窟まで船に乗りたいんだけど空いてる船あるかしら」

 「ちょっといいかな、明日白貝の洞窟まで船を」

 ん?カウンターで兎のお姉さんことプラム冒険者ギルドの受付嬢マリーさんにコリウスさんが話しかけたと同時に足速に歩いてきた男性が同時にマリーさんに話しかけた。

 「あら、グラジオラスじゃないの」

 「おう、コリウスじゃん」

 知り合い?金色の髪に赤い目をした端正な見た目の男性がヘラリと笑ってコリウスさんに笑いかけながら肩を叩いて、あ、コリウスさんに殴られた。

 「グラジオラスも船?」

 「ああ、今面倒見てる坊主が居てな、そろそろ海沿いの白貝の洞窟に連れて行こうかと」

 「あらあら、丁度良いわねぇ」

 ウフフと含みのある笑いを浮かべてコリウスさんが私たちを手招きした。

 私たちがコリウスさんの隣に立つと金髪の男性が目を見開いてから顎に手を当てた。

 「コリウスもか、確かに丁度いいな。おい、ガウラちょっと来い」

 男性が掲示板の辺りに向かい声を掛けると人混みの中から灰白の髪を後ろに結んだピンクの瞳の、私たちと近い年齢に見える少年が走って来た、あ、ぶつかって転んだ……そりゃあこんな人ばっかりの所を走ったら危ないよ。

 隣でブロワリアが手を貸すべきか迷ってオロオロしている、気持ちはわかるよ。

 「船、どうします?白貝の洞窟なら明日一隻手配しますが」

 マリーさんがコリウスさんたちに声をかける。

 「あ、うん。お願いしていい?朝からになるけど」

 「承りました、船の料金は前払いでギルド預かりになりますが」

 「いいわ、私が出しておくから」

 「いやいや、そりゃ悪いだろ」

 「後でちゃんと半分貰うから大丈夫よ」

 ちゃっかりしてました、コリウスさん。

 コリウスさんとマリーさんがやり取りをしているうちに少年がやってきたけど、流石に受付カウンターの前で立ち話も出来ないので、ギルドを出て広場近くのカフェに入った。

 お洒落なカフェは旅行者の多い港町らしく貝殻を装飾に使い可愛らしい雰囲気。

 私たちはそれぞれ飲み物を頼み、改めて自己紹介となった。

 「私はコリウス、Cランク冒険者でこの二人はこの間冒険者になったばかりの」

 「プルメリアです」

 「え、あ、えっと、ブロワリアです」

 緊張でブロワリアが固まっているね。

 そんな私たちを暖かく見ながらテーブルを挟んで向かい側に座った金髪の男性が紹介を始めた。

 「おう俺はグラジオラス、コリウスとは昔何度かパーティーを組んでたりしたことがある、で、コイツがガウラって一カ月前から俺が面倒見てる駆け出し冒険者だ」

 「ガウラだ」

 ぶっきらぼうに言い捨ててプイとガウラが顔を背ける。

 「コイツはFランク、俺はBな」

 Bランクの冒険者!思わず顔を向けてジッと見てしまったらニカッと爽やかに笑われてしまっちゃいました、白い歯が眩しいし、恥ずかしい。

 「一か月?」

 コリウスさんが怪訝そうにしてます。

 「そう、一か月」

 「ふぅん、まぁグラジオラスのことだから何か考えがあるんだろうけど、ガウラは前衛職かしら?」

 「あ、うん、一応」

 チラッと短剣を見せてガウラがふいっとそっぽを向いた。

 「丁度良いわ、パーティーを組んで洞窟に行きたかったのよ」

 「そうだなぁ、ガウラにはちょっと早いかもしれねぇけど、これもまあ経験だ、明日はこの面子で白貝の洞窟に行くぞ」

 「また勝手に決めやがって」

 ムッとした顔をガウラがグラジオラスさんに向けるが彼は気にしていないらしくガシガシとガウラの頭を撫でて笑っている。

 「お前らは、っ痛てぇ!何すんだよ!グラジオラス!」

 「はぁお前ねぇ、いくら可愛い女の子が相手で緊張するからって初対面でそんな口をきくもんじゃないって何回も言ってるだろ」

 ゴンっと拳骨を落としてグラジオラスさんがガウラを嗜める、そして私たちに向き直った。

 「プルメリアとブロワリアだっけ、君たちは見た目通り……」

 「はい、私は白属性の初期魔法をブロワリアは剣を扱います」

 「俺もメインは剣だが緑属性持ちなんで簡単な回復魔法を使ったりする」

 「私は魔法での戦闘がメインのしがない占い師よ」

 くつくつと笑いながらコリウスさんが言うとグラジオラスさんが呆れたような視線を送った。

 「さて、私たちは明日の準備に買い出しに行くから先に出るわね、明日は船着場で落ち合いましょう」

 コリウスさんが立ち上がりながら私ちちを促して立たせると、三人分のお茶代を置いてヒラヒラ手を振りながらカフェを出た。

 グラジオラスさんから船代の半分はキッチリ徴収していたのを私は見逃さないぞ。

 カフェを出て何軒かの商店をまわり必要なものを買い、遅めの昼食を取るため広場近くの大きな酒場に入った。

 勿論、私もブロワリアもまだお酒は飲めませんが、酒場は昼間食事も出しているので昼食に訪れる人も多いの。

 そもそも酒場はギルド以上に情報が集まりやすいんだ、ほら今も隣のテーブルに座ってる行商のおじさんたちが最近の情勢について話してる。

 聞くとはなしに入ってきた話では私たちが今いる帝国よりずっと東にある王国が何年か前に内乱で崩壊したんだけど、どうやら国の運営のため平民や元貴族なんかが参加して設立した議会の立ち上げが上手く行き始めたらしく、そろそろ近付けるかもしれないとか。

 東はこれから少しずつ良くなるのかな、落ち着いたぐらいに行ってみたいかも。

 今はまだ危ないだろうからね。

 そんな事を考えているうちにテーブルに料理が並ぶ。

 「そうだ、コリウスさん」

 「どうかした?」

 私は気になっていた事を聞いてみることにした。

 「白貝の洞窟ってどんな所なんですか?」

 「そうねぇ、あの洞窟って年に二回だけ完全に潮で満ちるのよ、その度に海から色んなものが流れつくんだけど、ついでに海の魔獣も入り込んじゃうの」

 海の魔獣……物語や本でしか知らない未知の魔獣、やっぱり強いのかな。

 「まあ大体は海に戻るか干上がっちゃうんだけど」

 干上がるんだ。

 「心配しなくても今の時期だとそう強い魔獣は残ってないわ、ただ海から流されてきた素材はあるからね、今回の目標としては素材の回収かしら」

 「素材ですか?」

 ブロワリアが不思議そうに聞き返す。

 「そう素材。洞窟探索の目的ならやっぱりお宝は外せないでしょ」

 悪戯っぽく片目を閉じて人差し指をピンと立てカラカラとコリウスさんが笑う。

 私とブロワリアは顔を合わせて同じ気持ちだと確認し合う。

 お宝!ワクワクする言葉!いよいよ冒険者らしくなってきたって実感が湧きますね!

 ブロワリアも同じくキラキラした瞳でコリウスさんを見てます。

 「白貝の洞窟、名前の通り白い貝がたくさんある洞窟で真珠がよく見つかるの、その中で稀に見つかる色付きの真珠、これを今回の目標にしたいと思うんだけどどうかな」

 私とブロワリアは大きく頷いてまた顔を見合わせる。

 最近ずっと緊張してばかりだったブロワリアがすごく楽しそう!良かった!私も今からソワソワしちゃう!

 「白い真珠も商業ギルドで買い取って貰えるからたくさん集めましょう」

 コリウスさんがそう笑って立ち上がりました、ここで今日は解散らしいです。

 明日に備えて休息をきっちり取るように言われた私たちは夕飯用に出店で串焼きなどを買い込み宿に戻ります。

 「明日、楽しみだね」

 「グラジオラスさんとガウラくん、上手くやっていけるかな」

 ブロワリアと二人早めにシャワーを浴びて夕陽の差し込む室内でお互いのベッドに座って話してます。

 お宝探し、洞窟探索、初パーティーと色々目白押し!

 私は久しぶりにブロワリアとたくさん話をして、早めに眠りました。

 明日はいよいよ洞窟に行きます!

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