レッサー・ゴブリン
気疲れを起こしつつ、後で運営にクレームを言う決心が出来た黒狼は説明の一環で教えてもらった初心者ミッションをクリアするためにステータスを開き、それを見る前に通知のポップアップに邪魔される。
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通知:初心者ミッションが解放されました。
本文
初心者ミッションが解放されました。
初心者ミッションをクリアする事で様々なアイテムやポーション、スキルツリーを解放できます。
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初心者ミッション
・モンスターを討伐せよ!! (0/1)
・アイテムを10個取得せよ!! (0/10)
・装備品を装備せよ!! (0/1)
・レベルを上げよ!! (0/1)
・スキルのレベルを上げよ!! (0/1)
・スキルを10個取得せよ!! (0/10)
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手早く初心者ミッションを確認しようとすると見慣れないモノがあった。
「レベル? そんなモノあったか?」
疑問符を頭につけながらステータスを見るとnewの文字と共にレベルとスキルポイントが追加されている。
それを確認しながら、他の欄も色々開けようと画策しつつ独り言を呟く。
「コレらはあそこでは出て無かったはず……、地上に降りてから分かるタイプの奴か。」
初心者に優しくないゲームだなとか思いつつ(実際は説明されていたが普通に聞き流していただけ)開いたタブの説明を読み、理解を深めていく。
尤も、どちらも難解なものではなくレベルはプレイヤーがどれだけ成長しているのかを示すモノであり、スキルポイントはスキルを取得したりスキルのレベルを上げるために使うモノということがすぐに理解出来た。
「クッソ、取得方法もレベルの上げ方も記載されてないのがイヤらしいな。自力で見つけろってか?」
ブツブツ言いながら周りを見渡し、パッシブスキルかつ種族特性として渡された暗視で周辺に生えている苔に周期的に光るモノを発見する。
「なんだコレ?」
近づいて凝視すると、空中にポップアップが浮かび鑑定結果が表示される。
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鑑定結果:ヒナゴケ
・暗闇に生えており加工すれば簡易回復薬の素材となる。
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「あ、コレ採取ポイントか。」
そう理解すると同時に、骨の手で上手く剥がしてみたところ『アイテム:ヒナゴケ』がドロップする。
目線を初心者ミッションに向けてみると『取得せよ!!』の経過を示す欄が(1/10)に変化している。
「落として拾って……、は無理だな。流石に楽はさせてくれないか。」
軽く溜息を吐き、周囲を見渡す。
そうすると他にも4、5個ほど同じようなポイントを発見する。
「とりあえず、取れるだけ取るか。」
そう呟きながらポイントの苔や石を慎重に剥ぎ取っていく。
集められたアイテムは10個に満たないが、それぞれ錬金術などに生かせる有用なものであり、黒狼は喜びこそしていないが非常に嬉しくは思っている。
取得したアイテムの鑑定結果は以下の通りだ。
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鑑定結果:凝固石
・錬金術に使用する摺鉢の素材。環境変化に強くまた壊れにくい。他にも鍛治によって加工すれば武器にもなる。
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鑑定結果:洞窟蜘蛛の脚(劣)
・洞窟蜘蛛の脚。鍛治、薬学、錬金術で加工ができる。熱に弱いが冷気に非常に強い。品質が悪い。
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鑑定結果:洞窟蛇の表皮(劣)
・洞窟蛇の表皮。薬学、皮学によって加工可能。品質が悪い。
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「……レアっぽいやつは軒並み品質が悪いのか。」
若干ガッカリしてはいるが、そこまで落ち込むことでもない。
そもそも、ここは何度かのリスポーンでたどり着いた場所であり、そんな場所でノーリスクでレアなアイテムを獲得することはあり得ないのだ。
そう考えれば、運が悪いと言う認識は要らずどちらかと言えば運が良いと言う方にはいるのでは無いか?
「ま、もし高品質でも今の状態だったら基本扱えないだろうし素直に幸運だと思うか。」
黒狼もそう思い直した様で、手に入れたアイテムを端っこに纏めておくと使えそうなモノを探す様にあたりを見渡す。
「うん、まぁ、無いよな。」
はぅ、と溜息を吐き洞窟の奥へと向かうべきか思案し出す。
ここに居ても何も得るものは無いが、移動すれば何か手に入るかもしれない。
だが、再度死んだらここに戻ってこれる保証は無い。
「考えるまでも無い、か。」
そもそも先に進まなければ何も始まらないのは発覚している。
ならば、悩むこともない。
リスクを犯さなければ物事は進まないし、それにコレはゲームだ。
現実以外、しかも失うものなど殆どないのにリスクを恐れると言うのはあまりにも滑稽極まるだろう。
虚な眼孔で闇の先へ視線を向ける。
斜めになっている洞窟の先、そこに1匹の人型生命体がいるのが伺える。
つまりは、覚悟を決める丁度いい獲物がいる訳だ。
迷いはない。
「いくぞ。」
短く告げ、地面を蹴りその生命体にタックルをかます。
驚いた様な顔を見せるその生命体、否。
ゴブリンを笑いながら睨み、己の骨でできた拳を顔面に叩き込み醜悪な顔を歪ませる。
「オラ、よッ!!」
地面に倒れ伏せたゴブリンの腕を絡みとり、躊躇しながらも腕を逆関節に折って行く。
手から伝わる生きている鼓動を無視し、思いっきり捻り上げそして何かを折った感触と共に掴んでいた筈のゴブリンの感覚が消える。
直後、ポリゴン片が舞い散りゴブリンの姿がかき消える。
なんとも言えぬ感触を噛み締め、余韻に浸ろうとした時唐突にポップアップが浮かんだ。
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・モンスターを討伐せよ!!(1/1)
ミッションをクリアしましたのでアイテムを贈呈します。
スキル構成から有用なアイテムが送られます。
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確認ボタンを押すと、目の前にBOXが現れ自動的に開かれる。
中からは皮で作られた鞄の様なものが現れ地面に落ちる。
「……、箱のショルダーバッグ?」
箱なのか鞄なのか分からないがまあ、それは兎も角としてとりあえず鑑定を行う。
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鑑定結果:錬金箱鞄
・錬金術に関する道具のセットが入っている。内容物は簡易的なものかつ初心者向けであるが箱鞄の性質として中身が劣化しずらいなどの利点があるため熟達した錬金術師も愛用する一品。また加工などをして箱鞄の性能を上げるのも良い。
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「おおっ、至れり尽くせりだな。」
喜びながら鞄を開けると、中には様々な調合道具がある。
「乳鉢にフラスコに……、釜に簡易溶鉱炉ぉ? 質量保存の法則はどこいった? と言うか、火力絶対に足んないだろ、コレ……。」
若干呆れつつ、中に入っている品を見ていく。
案外、意外性は低くハンマーやピンセット、ハサミや濾布などが入っており一般的なイメージの錬金術ができる最低限の環境は整っている。
「ま、ぶっちゃけまだ使えないんですけどね。」
はぁ、と溜息をつく。
道具があっても、結局素材が無ければ加工はできない。
今集めたアイテムでは碌なものが作れない。
ある意味完全な手詰まりとも言える。
「ま、序盤は大きく道から逸れずにクエストをこなすか。」
初っ端の種族選びからずれている人間が何をいっているのやらと言う話ではあるがそれはそれ。
RPGの基本であるクエストをこなすのはやはり鉄板と言える。
「次に簡単そうなのは……、やっぱりアイテム取得か。」
何を以てアイテム取得としているのかは知らないがとりあえず地面に転がっている石を拾う。
そして鑑定をしてみると、そのまま石と表示されるだけで何も起こらない。
「うん、分かってたけどコレはアイテム扱いじゃないのか。」
その次に先程拾ったアイテムを再度拾い、ミッションを確認してみるが特に変化なし。
ズルは許されないかと、分かっていた結果を再確認し洞窟の奥に降りることを再度決意。
そうして、洞窟の奥に降りることを決意するのだった。
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