第5話 出発
魔獣。
魔素や魔法を操ることのできる生き物の事。
獣とあるが、虫や魚のような魔獣もいる。
戦う力が無く、一般人はおろか、子供でも倒せるほど非力な魔獣もいれば、ドラゴンや神獣のような国一つ滅ぼすこともできる強大なものまで。幅広く、そして数多く存在している。
人間と共に生きる魔獣もいれば、何年も前から敵対し、戦争を起こしている魔獣もいる。
「着きましたね!マスター!」
宿から歩いて数十分。
勇者が集まり、クエストを受け、クエストを終え帰ってくる場所。
「ここが
「おぉ...」
照りつける太陽の光が勇者と思われる者達の武具に反射して、キラキラと輝いている。
「と、いうか...人多くね?」
勇者召喚は自分で100年目。1年に一人召喚するので、仮に100年前の人が生きていたとしても多い。
「選定勇者のほかにも、推薦勇者がいらっしゃいますからね」
「推薦?」
「マスターのような選定された勇者様を選定勇者。惜しくも選定はされなかったものの、推薦をして合格を受けて勇者になった方を推薦勇者といいます」
なるほど。
命を懸ける仕事なのに一年に一人しか選ばないのは不自然だと思っていたが、選定勇者が年一なだけか。
要はこの世界にはまだまだ勇者はいるってことだな。
「では、さっそくクエストを受けますか?少し見て回りますか?」
「ん~。俺はチュートリアル飛ばすタイプだしなぁ。とりあえずクエストがどんなもんか気になるな」
ウサは聞きなれない単語に首を傾げながらも自分の主を受付口まで案内する。
道中多くの視線を感じたが、恐らくスーツが目立つのだろう...。
「いらっしゃいませ勇者様。ご希望のクエストはございますか?」
高級ホテルのフロントさんのように整った前髪と綺麗な姿勢。
相手への失礼が無いよう努力されていることが伝わる。
「今日ここに来たばっかりなんだ。初心者向けなクエストが受けられると助かるんだが...」
その言葉を聞き、クエスト案内人は笑顔を見せる。
「カイバラ様ですね!ゼウサス召喚者様からカイバラ様宛にクエストがございます」
あぁ...強制チュートリアルだったか...。
「こちら、絶縁の森のゴブリン10体の討伐となります」
いかにもなチュートリアル。
だがまぁ、油断は禁物。自分の想像しているゴブリンは弱い存在だと思っているが、現実は小説よりも奇なり。
魔獣は知性もあれば魔法も使えると聞く。
「ご、ゴブリン!?」
ウサが大声を上げる。
それも血相を変えて。
「どうした?」
「ご、ゴブリンなんて、上等魔獣ですよ!?いくら選定勇者でもこんな...!」
なにやら異常な様子。
ウサの声が聞こえていた他の勇者もざわつき始める。
「そんなやばいの?ゴブリン」
「いいですか...魔獣にはランク付けがありまして、位・等・級があります。それぞれに上・中・下の計9段階のランクがあるんです。一番上が上級、下が下位となっています...」
「つまり、今回のクエストは中の上みたいなもんか」
「そういうことです!普通は下等魔獣からスタートなんです!上等魔獣なんて勇者を続けて5年ほど経ったら受けられる危険な魔獣なんです!」
こういった情報を知らずにここに来た俺も相当危険だなぁ...。
だがまぁ、危険なのはわかったが確かに初心者に勇者歴5年のクエストを渡すのは不思議だ。
理由を聞かなくては。
「なぁ...」
「カイバラ様は、召喚者様および転送者様の判断により、既に上等レベルの戦闘力を保持していると認定されました。そのため、今回のクエストは上等魔獣になっております」
「て、転送者様からも...!?」
さらに場がざわつく。
(やっべ~...全然着いて行けてね~...)
どれほどすごいことなのか、そもそも何の話なのか、なんでざわつかれているのか...。
「魔獣がどうであれ要は国からの依頼だろ?強さ云々はわかんないけど、行かなきゃならないなら早めに行った方がいいだろ」
「そ、それはそうですが...」
「お気を付けて行ってらっしゃいませ」
ひとまず場所を変えたかったのもあるが、自分の力がどこまで通用するのかも気になっていたため半ば強引に出発することに。
「ではカナエさん、行ってきます!」
「行ってらっしゃい、ウサちゃん」
「あれ、知り合い?」
「はい!ガイドになる訓練をしていた時によくお世話になってたんです!」
この世界に来たばっかりだというのに、「世界は狭い」と思ってしまった。
広い草原の先にある森。
目的地はあまり遠くない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます