第6話 家族の安否

 結果から言うと家族は今のところ無事だ。母さんも美紅も無事でチョコレートを作っていた。だが、その後すぐに百人面百足の塊の怪異がやって来た。


「雪夫、何あれ」

「怖いよお兄ちゃん」

「逃げろ」


 俺はすぐに立ち向かった。


「俺は確かにお前を封じ込める手伝いをしたかもしれない。だが、家族は関係ないだろう」

「ソウカ、ダガキサマハワレヲシバロウトシタ。ソノミヲモッテユルシヲコエバユルシテヤロウ」

「俺のことはどうなってもいい。だから母さんや美紅には手を出さないでくれ」

「ホホウ。ソノカクゴタメサセテモラオウ」


 俺は百人面百足に包まれた後暗い中で夢のようなものを見た。それは親しい人が殺され一人になっていく夢だった。だが、俺は最初の目的を忘れてはいない。


「コノナカデドレダケスゴセルカナ」


 塊の声が聞こえるが無視する。俺は1人のまま悪夢をたっぷり味わった。だが、それでも俺が母さんと美紅を想う思いは勝ちこの空間が消え去った。


「ねえ、お兄ちゃん。大丈夫。ねえ」


 声で俺は起きた。美紅の声だ。百人面百足は納豆を数倍臭くしたあの匂いを俺に残して去っていったようだった。


「何とかね。体洗いたいから風呂行ってくる」

「それなんだけど私が流すよ。お兄ちゃん。今日は好きな人に添い遂げる日だからね」

「ちょっ。待て、お前は」

「嫌なの?」

「嫌じゃないけど」

「はー、全く、雪夫、責任は取りなさいね。女の子を泣かしたんだから、それとバイトは私たちが行くことを許さないわよ。あのバイトには」


 母さんが会話に交じってきた。俺はあの百足の怪異を退けたのだろうか。覚悟は分かったからもういい後は私の邪魔をするなと頭の中で聞こえた気がするが百足の塊はどこに行ったのだろうか。


「母さん、美紅、あの百足の塊はどこに行ったの」

「とっとと去って行ったわよ。貴方のおかげで私たちも生きているのかもしれないわね。ありがとう雪夫」

「ありがとう。お兄ちゃん。それで風呂に行こう」

「ああ、恥ずかしいけど」

「そう思ってくれてるの私嬉しいよお兄ちゃん」

「それって」

「貴方が好きです雪夫お兄ちゃん」


 告白と共にチョコレートを持ってきた。


「ありがとう。俺でよければ。でもまだ君は俺と同じ年齢じゃないだろ立ったらもっと考えて」

「お兄ちゃん以外ありえない。私はお兄ちゃんと結婚したい」

「分かった。じゃあ一緒に風呂入ろっか」


 こうして、俺は借金を返済するために百人面百足を飼育しに行くのはやめた。今は美紅や母さんの幸せな顔を見ているだけで充分な気がする。借金のことは1日2000円でどうにかならないことは分かっている。だが、今はこの家族の幸せな時間を満喫したいと思った。


 そうして、百人面百足の飼育のバイトをやめて俺は普通のバイトを始めた。時給1100円のバイトだが無茶なことは言われないし順調にやっていけていると思う。あの後美紅とは恋人になり平日の学校が終わった時間に夕日を一緒に見るなどしてデートしている。俺は平穏で幸せな生活をこれからも満喫していこうと思う。そして借金もいつか返せたらと思う。

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奇妙な虫の観察記録 ~借金を返すために変な虫を育てるバイトをする~ 禿鷹吟 @akumanoko9777

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