第4話 学校
俺は月曜日、学校に行っていた。学校では和彦が俺のバイトがどうだったか聞いてきた。
「なあ、あの後どうなったんだ」
「なんかあの虫怪異だったらしいんだ。それで襲ってきて」
「流石に嘘だろ。で、どうだったんだよ」
「普通に掃除して鶏肉をあげるだけのバイトだったよ」
和彦が信じてくれそうになかったので一日目の話をする。だが、続けない理由が分からないだろう。まあ、怪異だということが信じられなければその先は分からないだろうが。
「もうやめることになったよ。現場の人の都合でね」
「そうなのか。案だけ募集掛けてたのに」
とりあえずそれらしいことを言ってみたが信じてくれているようだった。
「そこ、授業中の会話はしない」
今は数学の授業で教師がチョークを投げてきた。それは正確に俺達二人の眉間に当たった。教室ではちょっとした笑いが起きた。
「はあ、まあこんな感じさ。続き聞きたいなら休み時間な」
「ああ、分かった。でもそのバイトにはまた行ったらどうだ。何しろ人手不足らしいしよ」
こうして、数学の授業に耳を傾ける。昨日のことがよぎり全く内容が入ってこない。とりあえずノートを写してその授業では以後叱られないように頑張った。そうして休み時間になった。
「おっ。現場の中山さんからだ。お前にもう一度来てほしいみたいだぞ」
「本当か?メール見せてくれ」
俺は和彦のスマホをじっくり見る。人手不足というのは本当らしい。和彦のメールには先日やめるように言ったがまた来てほしいとの通知があった。俺のところに来ていないか確認する。俺のところにも同じ時間に来ていた。
「はあ、行くしかないか。でも時給2000円だからな」
そう言ったところで昨日の怪異の恐ろしさを思い出す。だが、それ込みでのあの価格なら納得できる。俺は借金を返さなければと思ってもともと申し込んだのだ。そのメールに了解の旨を伝え、俺は休日にそこにまたバイトに行くことを決めた。それにしてもあの百足が怪異が正体だったのは驚いた。俺は学校で頭に入らない授業でひたすら写すことをしながら休み時間には和彦と雑談して過ごし、帰ろうとしていた。そうして、帰ろうと下駄箱に行った時、女の子の悲鳴を聞いた。急いでその場に向かうと男子生徒の二人が小学生くらいの女の子を犯そうとしていた。俺は咄嗟に二人に立ちはだかり、女の子を引きはがす。
「何だお前。こいつは俺等の獲物だ。あっち行け」
「誰が犯罪を見過ごすか。お前ら、この子を犯そうとしてただろう」
「正義のヒーローぶってるがそいつに保護者はいない。つまり何したっていいんだ」
「ふざけるな」
「あの、ありがとうございます。見捨てないでください」
「当たり前だ。君は下がってて」
俺は男子生徒二人に殴りかかる。後ろに可哀そうな女子がいることを思うと自然に力が入った。それにあの怪異に比べればこんなの何てことない。男子生徒二人と取っ組み合いになったが、男子生徒二人は俺が戦うことを想定してなかったのか予想よりも早く退散した。
「大丈夫かい」
「はい。お兄さん、ありがとうございます。私、親が先日亡くなったんです。それで居場所がなくて」
「うちに来なさい。面倒は見てやる」
「いいんですか。私がいたらお金もかかるし」
「いいんだ。君みたいな困ってる人を放っておけない」
「......ありがとうございます。お礼は家事なら少しできます」
「無理に気負わなくてもいい。こういう時はお互い様さ」
「ありがとうございます」
こうして、俺は家にもう一人暮らすことになった。これではもっと収入が必要になるが俺は養っていくと決め、バイトを頑張ろうと思った。
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