第58話 会議

 任務を蔑ろにし、勝手な行動を取った『ワイバーン隊』

 ノアは、自身の考えを示し𠮟責した

 お灸を据えられた『ワイバーン隊』の4人は、深く反省した


 時は少し遡り 12月2日 午後10時52分 宿屋

 

 ウェルソン伯爵領『アイルザット』にて、好き勝手に暴れたティセとケニーは、

 王都宿屋へと帰還した


「領主様、ただいま帰りました!」


「ティセ、こんな時間まで、どこで悪さしてたんだ?」


「ふふふ!内緒! 私は眠いので寝ます みんなお休みなさい おじいさんもね」


「あぁお休み!」


「おぉ、お休みじゃ」


 ティセは2階へ上がって行った


「ケニー、今日は何をやらされたんだ?」


「その件で少々お話がございます・・・」


「どうした? 深刻な話か?」


「そうではございませんが… お嬢様に聞かれても… アレですので…」


「分かった 小声で頼む」


「はい・・・」


「それで、どうしたのだ?」


「ここでの食事の後で、激しく燃える『がそりん』なる油を教えてもらいました

 それを持って、現在は『グラ・ディオルカ』ウェルソン伯爵領『アイルザット』へ

 向かいました・・・・・・」


 「何と!?… 『アイルザット』まで行って来たのか?」


 「はい!」


 ケニーは、『アイルザット』での出来事を、事細かく説明した


「・・・と云うほど凄まじく、ともすれば2人で陥落おとせるような勢いでしたが・・・

 それでも明らかに相手を思いやるような… 

 ケガ人や死者が、なるべく出ないような、些か配慮したような采配でした

 当初の計画では恐らく… もっと酷い状況を、想定してたようです」

 

「・・・ケガ人や死者が出ないようにか そうだな… ティセだからな…」


「ですので、極力… お嬢様の手を汚す事無く、指示さえ頂ければ・・・」


「確かにケニーの申す通りだな・・・ やり方は覚えたであろう?」


「はい、それは十分に」


「当初ティセが、どれほどの計画をしてたか分からんが、それを元にして、

 領民になるべく被害が及ばずに、今日以上の酷い状況を作り出せるか?」


「はい… 無論でございます

 ただ、居城や兵舎は使い物にならなくなる可能性が、非常に高いですが・・・」


「なるほどな… 『グラ・ディオルカ』は、いつ【レビド】へ侵攻するか分からん

 ここでダメージを与えたのは、非常に大きいかも知れん」


「『グラ・ディオルカ』の拠点は、現在のところ

 『王都・グランドール』『ビザルラス』『アイルザット』の3か所ございます…」

 

 南門警備兵が報告に来た


「ノア様、南門に【ハルヨシ村】からの、応援部隊が到着致しました!」


「ようやく到着したか! 良しノートン、出迎えて休息をとらせ、

 バトラーに、食事の用意をさせよ!」


「はっ!」


「ケニー、場所については追って検討する

 私からティセに、その『がそりん』なる油を用意してもらう」


「はっ! 畏まりました」


 ノートンは出て行き、間もなくライルが報告しに来た



 12月3日 泡沫国 王都トーラ 午前9時30分

 全員が朝食を終えた後、王軍兵舎内軍略会議室


 ノアは、役付き(幹部)17名 王国宰相テリー ティセ

 ワイバーン隊4名 地上部隊5名 伝説の魔法使い・フェレンレン 

 ギルド職員2名 レビド兵アル 料理人:ケン 植物:ミナ

 合計35名を集め、会議を始めた


 ノアは、【ハルヨシ村】【タカミ村】現体制を説明

【王都】の状況説明、作業の進捗報告、各自連絡報告を行った


「・・・・・・今後も、増えていくとの事でした」


「そうか… 今聞いた通り、避難民が徐々に集まっている

 この王軍兵舎は、閣下の話しでは最大1万人が収容可能だそうだ

 エリスとギャビンは、避難民の管理と兵舎への誘導

 単身者と二人以上の家族で、上手い事部屋を割り当ててくれ

 避難民は、一時的に西門広場で待機させ、1時間半毎に兵舎へ誘導させよ

 兵は60名 ギルド登録を済ませた後に送る

 それぞれが30名を受け持ち、8時間交代で当たれ

 先に任務にあたる者は昼食まで、昼食後はもう一方があたる事

 それまで、エリスとギャビンは西門付近で待機せよ」

 

「アルは引き続き、三門の警備と炊事を頼む」

 

「バトラーと、ケン殿は【レビド兵】50名と我が方52名で、

 引き続き炊事担当を頼む

 避難民の受け入れと共に、食事量も今後増えていくだろう」

 

「マシューとエイデンは、避難民の中から様々な協力者を募ってくれ

 炊事場担当の協力者が18名を超えたら、『旧モワベモタナ兵』18名は、

 炊事場担当を外し、別の任務につける

 今日は午後6時までやってくれ」

 

「こちらでも村同様に、『鬼』を使った狩りを始める それで肉と金が手に入る

 荷馬車を『狩り専用』にする時間もないので、荷馬車をそのまま使う

 セルトーアとハルザードは、フランが10名選抜するのを待て

 その10名は、1人で5人の『鬼』を使役してもらう

 2台の荷馬車で狩りと運搬 内容は村の狩りと同じだ

 獲物で2台の荷馬車を満載し、特定の場所に降ろす それを繰り返す作業だ

 保管場所は、後ほど決めて連絡する

 1日に4回 その作業を終えたら、それ以降は休んで良い

 兵士たちは『鬼』に、荷馬車の使い方を教えて覚えさせよ 曳き方と押す側だ

 教える場所と狩りは… 南門を出た所でやってくれ

 午後に1回、1台の荷馬車で試してみさせる事 勿論満載にするまでだ

 今日は、それで終わりで良い

 明日からは時間は問わない 2台の荷馬車で1日に4回やれば終わりだ

 セルトーアとハルザードの2人は、狩り担当として、

 兵士10名と鬼50人を監督せよ

 鬼たちの住居は当面、兵舎隣の訓練場に住まわせてくれ

 セルトーアとハルザードの2人は、ギルド前で待機」


「アズディニ、グレーイズ、フォランダ、ジーンの4人は、トーラ南西の区域

 民家を端から一軒ずつ見て回り、食料、金品、衣類を中心に回収

 その他必要と思われる物もあれば、全て回収せよ

 回収した物は、全て王宮に運んでくれ

 兵は70名 フランが連れて行くので、それまで西門付近で待機だ

 作業時間は、午前9時から午後6時まで

 明日からは、フランも加わってもらう」

 

「フラン、スタン、エディ、ウィル

 炊事担当を除いた全兵士173名を、ギルド前に集合させよ

 先に私が『送魔鏡』を使うが、

 その後で、ギルド未登録者全員に登録させてくれ

 職業は… ティセ、職業は何が良いのだ?」


「ん~ん… 魔法使いかな? その前に、領主様は『商人』にしてから支払って」


「分かった では、全員魔法使いにしてくれ

 登録後に、今回登録した者を中心に70名

 70名に満たない場合は、登録済の者で総コストが低い者を、加えていく

 次いで総コストが低い者から60名選ぶ

 登録済の者は全員、各自の総コストを調べさせ、書面に記録せよ

 下限が15の者から優先的に10名選び、狩り担当に引き渡せ

 全てが終わったら、ギルド前にいるエリス・ギャビンに30名引き渡す

 フランは、70名を連れて西門付近のアズディニたちに引き渡し、

 書面はノートンに渡せ それらが終わったら、フランは休んで良い」


「スタン、エディ、ウィルは、兵たちのギルド登録完了後、

 最終的に残った総コストが多い上位33名と・・・

 その前に、この33名の職は『僧侶』に変更してくれ

 昼食後に森に入り、魔物相手に訓練をさせよ

 南門は鬼たちの訓練 西門は避難民の受け入れがあるので、

 北門を出て左の森でやらせれば良い

 スタン等3人で考え、その33名を3~5人のパーティで組ませ、

 色々な面子で組みかえたり試行錯誤してみてほしい

 それで訓練に当たらせてくれ

 本日は、午後5時30分終了 午後6時にギルド前に集合

 私が午後6時までに、ギルドに到着しなければ、本日は終わりだ

 明日からは午前9時から昼食を挟んで、午後5時までだ」


「ケニーは『アラクネー』を、ミナ殿の護衛に就けよ

 その後、『グランドール』まで、偵察に行ってくれ

 偵察の内容は、ここ王都から『アイルザット』『ビザルラス』『グランドール』

 この三か所に着くまでの時間を、それぞれ測ってくれ

 ティセが以前教えてくれた『すとっぷうぉっち』なる、時間を測る物がある

 先ほどティセが3つ購入して、ノートンに渡してある

 使い方を説明した紙もあるので、よく読んで使ってくれ

 後は『アイルザット』の様子を暫し探って『ビザルラス』は素通りで良い

 『グランドール』では、居城と兵舎の位置等を把握する事

 どのくらいの時間が掛かるか分からんが、陽が落ちない内は、

 見つからないように気を付けてくれ」


「ミナ殿、其方にアラクネーと言う護衛を付ける とても強いので安心して欲しい

 王宮裏手の東の森で、食用になる物を採って来てほしい

 荷物は護衛に持たせるが良い

 採取した食材は、兵士にでも渡してくれれば良いのでな」


「地上部隊の5名は、それぞれの『鬼』と『アラクネー』を使って、

 訓練でやってた『魔物の生け捕り』をやってくれ

 王都の周辺では、狩りや訓練をしているので、

 王都から少しばかり離れた『北西の森』でするが良い

 とらえた魔物は、『アラクネー』の糸でキッチリ縛ってくれ

 決して、王都内で逃げ出す事が無いようにやってほしい

 それらの一時的な保管場所は、『ワイバーン隊』と相談して決めてくれ」


「そしてワイバーン隊…ライル、ギースよ、お前たちの隣に居る者は、一体誰だ?」


 ライル「エマとラナで…ございます...」


 ギース「昨夜の件がございまして…」


 エマ・ラナ「・・・・・・」


「そ、そうであったか… 見知らぬ顔があったのでな… エマとラナだったのか…」


 エマ・ラナ「・・・・・・」


「改めて、ワイバーン隊の4人は、地上部隊が生け捕った魔物を運搬し、

 ギルドで売却してくれ 売却して得た金は、各自紋章に貯める

 各自20万まではそのまま、終了時に20万を超えた分は、

 地上部隊の面々に渡して、両部隊の者は、20万は常に持ってるようにせよ

 それ以上の分は、ノートンに渡してくれ

 両部隊共に、本日は昼食休憩の後から、終了時間は午後6だ

 作業開始まで、休んでくれ」


「ティセ、食料は増やしてくれたか?」


「1回目は、やりました!」


「そうか、ありがとう!」


「暇な時で良いから、『マジックバッグ』と『がそりん』を、

 買っておいてくれないか?」


「『マジックバッグ』は、何個くらい要りますか?」


「そうだな… 多ければ多いほど良いが」


「入れられる数はどうします?」


「少ないのも多いのも、両方欲しいな だが、多く入る物は高いだろう?

『キャリーケース』を増やせばいいので、ティセが持ってるので良いぞ」


「私が持ってる物で良いなら、今まであげた物も全部まとめて増やせば、

 沢山になりますよ 今日はあと2回できるから、

 今…全部で4個… 2回やって16個になりますよ」


「そうだな!では一度、ケニーとノートンの物はティセに返して、

 それを毎日やってくれ 

 朝の一回目は、毎日食料だからな 忘れないでくれ」


「ギルド職員のお二方、どうだ、少しは落ち着いたか?」


 ビアンカ「はい… もう、大丈夫でございます!」


 フローラ「お気遣い頂き、ありがとうございます!」


「聞いての通り、今日は『送魔鏡』を大いに利用するので、

 2人共ギルド業務をしていてくれ

 時間は、これからすぐにやってもらい、昼食後休憩を挟んで再開してくれ

 終了時間は、そこにいる4名が最後の換金を終えたら 午後6時頃だろう

 終了後は宿屋に戻り、休んでくれ

 明日からは、午前9時から昼食と休憩を挟んで午後6時まで

 それで一日の勤務は終了だ」


「ノートンは、ギルドに常駐し、全体を管理せよ

 ギルドを閉めた後は、宿屋に移動 皆も何かあったら、ノートンに報告してくれ」


「フェレンレン様、何かございますか?」


「いや、大丈夫じゃない」


「それでは閣下は、何かございますか?」


「こちらに来てから皆大変じゃろうが、もう一踏ん張り、耐えて欲しいのぅ

 避難民が集まれば、その者たちも手を貸してくれるじゃろう…

 よろしく頼むぞ」


「私は3時までに、村に戻らねばならん

 それでは解散、持ち場や待機場所に向かってくれ!」


 ノアの号令で、各自持ち場に向かった

 その後ギルドで『商人』に変更

『鬼』の『護姻環』50個購入し、セルトーアに渡す

 諸々の支払いを済ませた後、『魔法使い』に変更


「ノートン、言い忘れたが、持って来た『乱玉』と『素材』を、

 それぞれの倍率が『2倍』を超えてたら、売ってくれ

 売主は… ノートンで良い

 売却前に『商人』変更して売ってくれ 売却後は『元』に戻してくれ

 それは、今後のスタンダードになるからな、忘れるな!

 金は、紋章に貯めておいてくれ

 肉の保管場所は・・・ すまんが思いつかない

 ティセと相談して、決めてくれ

 村と同じ『冷蔵冷凍庫』ができれば良いのだが・・・

 それでは私は村へ向かう 頼んだぞ!」


「はっ!」



 次回 第59話 王都編『人捜』

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