第57話 問答

 スキル:夜目を手に入れたティセは、裏切り者 ウェルソン伯爵の領地

『アイルザット』で、やりたい放題嫌がらせをして帰還した

 ワイバーン隊の4名は、旧領『モワベモタナ』『ヴァルガウス』での

 任務の為に向かい到着した

 『モワベモタナ』での作業を開始したライルとギース

 一方、『ヴァルガウス』に到着したエマとラナが見た光景とは・・・


 ライル「良し・・・ これでこっちは終わった

    おっ!早速、王都へ向かう連中がいるな」


 ギースがこちらに向かってくる


 ギース「私は終わったぞ・・・ お前も終えたようだな」


 ライル「あそこを見てみろ 早速避難を始めてるぞ」


 ギース「そのようだな… 皆急いでくれれば良いが・・・」


 ライル「では戻って、狩りを始めるぞ」


 ギース「・・・ 何か嫌な予感がする・・・」


 ライル「あの2人か? まさか自分たちで取るなんて、

   そこまでバカではないだろう」


 ギース「まあな… バカだけど」


 ライル「どうする? 俺だけ戻って、報告するか?

    ティセ様が大量に肉を持ってたから、お願いするか?」


 ギース「そうだな… ノア様に、お叱りは頂戴すると伝えてくれ」


 ライル「貸しな!もう何個目だ?」


 ギース「今回の1個だけだろ!」


 ライル「では急いで、飛んでいけ」


 ギース「あぁ… 頼んだ」


 不安を感じたギースは、ライルに報告を任せ、

 エマ・ラナが任された『ヴァルガウス』へ向かう


 12月2日 午後11時15分 王都 宿屋

 ライルは、ギースの件を報告しに、宿屋へ到着した


「ノア様、失礼します!」


「ライル、早かったな… 狩りは終えたのか?」


「その件で、ご報告に参りました・・・」


「どうしたのだ?」


「私とギースは、『モワベモタナ』での作業を、つつがなく完了しました

 ギースは、『ヴァルガウス』に向かったエマとラナに不安を感じたようです

 本人から、お叱りは十分にお受けするとの事で、『ヴァルガウス』へ向かいました

 ノア様から、狩りの作業を仰せつかりましたが、取り急ぎご報告に参りました…」


「そうか・・・ ギースの勘はどうなのだ?」


「はい… とても鋭い方ではあります・・・」


「なら・・・別に構わん ティセは2階にいる

 バトラーの元へ2人で向かい、肉を渡して参れ

 終えたら、ここに戻って来い!」


「はっ!直ちに向かいます!」


 ライルはティセを伴い、バトラーの元へ肉を届けた後、戻って来た


「ノア様、届けて参りました・・・」


「良し、それではライルよ、今回起こり得る事象の中で、

 可能性として一番高いのは何だ? お前の考えでだ」


「私の考えとしては… (何だ?何だ?何だ?何だ?何だ?何だ?一体何だ?

 可能性として一番・・・)戦だと考えます…」


「幅が広いな… 間違ってはいない…が、正確な答えが欲しいな」


「・・・(戦が間違ってはいない… だが正確ではない? 戦の可能性とは…

 我々と『オルキニース』これは、当然だし当たり前すぎる…)」


「ほんのちいとだけ、助け舟を出してやろうかのぅ・・・場所はどこなのじゃ?」


「場所…!? (場所なら『ヴァルガウス』… そこであるなら、我々ではない

 可能性は、『ヴァルガウス』と『オルキニース』… いや、、、

 『ヴァルガウス』のマイヤーズ伯爵は、敵に降った側だろ…

 マイヤーズは降った 降ったんだ… そうか兵士も降ったんだな…)

 宰相閣下のお情けで、ようやく答えが出せました!

 場所は『ヴァルガウス』でございます

 さすれば戦は、『ヴァルガウス』兵の反乱か政変でございます」


「ライルよ、閣下のヒントで良くぞ答えが出たな! その通りだ!

 それでは何故、『ヴァルガウス』兵は反乱するのだ?」


「… (終わってねぇーー 何故反乱するのか… 反乱する理由…

 兵たちが捕虜になったが許され放たれた… 祖奴らが反乱する理由…

 裏切ったマイヤーズから、兵たちが… もしも勝てば元の鞘に…

 仮に勝ったなら、泡沫国に戻る… )」


「途中まで辿り着いてるようだから、今度は私がヒント出そうかな?」


「フェレンレン様!! 余り過剰な導きはおやめ下され!」


「大丈夫! この者は、そこまで来てるからさ・・・

 反乱した兵たちは、何を得るんだい?」


「・・・(何を得るか… 勝てば土地を得る、名誉… 

 兵たちは戻って来いと言われたんだ… 戻る為に… 得た土地…を…

 ・・・)分かりました! 何を得るのか… 反乱を起こし、得る物は、土地

 即ち『ヴァルガウス』を得ます 『ヴァルガウス』をノア様に献上する為…

 で、ございます・・・」


「何の為に、私に『ヴァルガウス』を献上するのだ?」


「・・・(まだ終わらねぇーーー・・・ 献上する理由… その理由…

『ヴァルガウス』を渡すメリット… 何の為に… ノア様のメリットじゃない…

 そいつらのメリット… 奴らは何を… 物は…特に無いとなると…)

 適当な言葉が見つかりませんが、良い恰好したいが為だと考えます・・・


「まぁ、ニュアンスとしてはそうだな… ほぼ正解だな」


「… (耐えきれない… この雰囲気)ありがとうございます!」


「良い恰好したい、つまり『功名心』じゃよ!」


「『功名心』自体が悪い訳ではないのだ・・・

 誰かに仕えて、手柄を立てたい… その気持ちは理解できる

 ケニー、お前は誰の為に戦い、何の為に命を懸けるのだ?」


「私は、領民の為に戦い、皆の幸せの為に、命を懸けます」


「人それぞれ、答えは違うであろう 違って当然だ

 どんな考え方であろうが、その答えの為に自らを律すれば良い

 反乱によって得た『ヴァルガウス』を、手土産にと持って来られても、

 嬉しくとも何とも思わない… いや、却って迷惑でしかないのだ」


「それでは… 3人はどう致しましょう・・・」


「放っておけば良い… その内に帰ってくるであろう」


「・・・・・・実は今回の任務の前に、4人で話したのですが・・・」


 ライルは4人での会話を話した


「・・・・・・と、言った具合です・・・」


「甘いし回りくどいか… 4人共に間違ってはおらんぞ はっはっはっは!」


「確かに、ライルとギースが申した通りだな 私は2つの領地は全く興味が無い

 欲しいのは民… 領民だ エマとラナが言った通り甘いのも確かだ

 私が何故、捕虜を放ったのか? ティセが何故、紙を作り(印刷物)撒いたのか?

 私とティセは、彼らに『選択肢』を与えているのだ

『ヴァルガウス』と『モワベモタナ』では、明確な違いがある

 それは何だ?」


「・・・(また始まってしまったーーー 助けて… 両村の違い… 何だ???

 両方落とされた… 戦闘したしない… それは聞いてないから… 

『ヴァルガウス』はマイヤーズ… 『モワベモタナ』って誰だ?? ん!誰だ?

 知らない!! 違う!居ないのか? そうだ!直轄領か… それなら…)

『ヴァルガウス』は、マイヤーズ卿が寝返り、

 王都直轄領の『モワベモタナ』は落とされました」


「そうだ! 『モワベモタナ』は、かつての味方に落とされてしまったのだ!」


「・・・(合ってた… 良かった!)


「先ほど『選択肢』を与えたと言ったが、『ヴァルガウス』と『モワベモタナ』

 の兵士や領民も、私たちが命を懸けて守る兵士と領民ではないのだ!」


「!! ノア様、この頭でやっと理解できました!」


「そうか… 理解できたか!それはこの上なく嬉しいぞ」


「つまりノア様は、戻って来いと仰られ、捕虜たちを放たれた… 自らの意思に託し

 戻らない者は余所者 戻った者は領民であると!」


「私の気持ちが、お主にも伝わったようだな… その通りだ」

 捕虜をそのまま奴隷として使う事はできる

 だが『忠誠』は得られるだろうか? 

 その者たちは、気持ちよく仕事はできるだろうか?

 自らの意思で加わってくれた方が、断然良いのではないか?

 全て近道ではない 近道と回り道は、時と場合によるのだ」


「心に留めておきます」


「3人が戻るまで、西門の警備をせよ 戻ったら4人で参れ」


「はっ!失礼致します!」


 ライルは、西門の警備に向かった

 

 12月2 午後10時10分頃 マイヤーズ伯爵領『ヴァルガウス』領域

 エマ・ラナサイド


 エマ「ねぇ… 見て! あれ、王都へ向かうんじゃない?」


 ラナ「あ!本当だね… こんな夜遅くに移動しなくても…」


 エマ「結構いるね… なんでわざわざ夜に…」


 12月2日 午後10時20頃 マイヤーズ伯爵領『ヴァルガウス』

『ヴァルガウス』街の上空に到着したエマとラナは、

 領内の様子を見て、息を飲んだ

 マイヤーズ伯爵の居城と街中では、幾つもの箇所で小競り合いが起こっている

 領民は避難を始めている者、兵たちとやり合う者、一言で表すなら雑多な感じだ


 ラナ「これ・・・まずいんじゃない?」


 エマ「そうだね… どうしよ・・・?」


 ラナ「マイヤーズが王国裏切ったんだから、仕方ないけどね…」


 エマ「ちょっとだけ、手を貸しちゃおうか?」


 ラナ「そうね・・・ 少しだけなら良いか…」


 混乱する『ヴァルガウス』領民たちに、些か配慮しながら、2人は戦闘に参加する


 12月2日 午後10時35分頃 マイヤーズ伯爵領『ヴァルガウス』領域

 ギースサイド


「領民たちの移動が少し目立つな・・・

 領民が夜に移動するのは、無い事ではないが、普通ではない…」

 もう少し先で、聞いてみるか・・・」


 12月2日 午後10時39分頃 マイヤーズ伯爵領『ヴァルガウス』領域

 ギースは疑問を解消したくて、家財道具を持って移動する領民たちの脇に降りる


「ぎゃーーー、魔物がーーー!!」


「みんな大丈夫だ!! 安心してくれ!! 話を聞いてくれ!! 落ち着いて!!」


「本当かい!? でもみんな急いでるんだ!!」


「すぐ終わる!! 『ヴァルガウス』で、何があったんだ?」


「『ヴァルガウス』の兵士が、反乱を起こしたんだよ! みんな戦ってるんだ!」


「反乱だと! 反乱軍は勝ちそうなのか?」


「それは分んねぇ だけどそれに紛れて略奪やら何やらで、みんな逃げてんだ!!

 それだけじゃねぇ! その魔物みたいなのが2匹暴れ回ってんだよ!!」

 

「そんな… バカな!? ・・・ 皆はどこへ逃げるのだ?」


「そりゃあ王都だよ… 助けてくれるって話しだから… じゃあ悪いな・・・」


 避難民は行ってしまった・・・


「バカだとは思っていたが・・・ あいつら!!!」


 ギースは再びワイバーンに乗り、『ヴァルガウス』に向かう

 12月2日 午後10時46分頃 マイヤーズ伯爵領『ヴァルガウス』上空

 到着したギースは、暴れ回るワイバーンを視認し、近づく


「おい!!! 止めろ止めろ!! 止めるんだ!!」


「あれ… ギースじゃない? 何でここにいるのよ?」


「話は後だ!! ラナを止めて連れて来い!!!」


「ちょっと待ってて!」


 数分後、エマはラナを連れて来た


 ギース「お前たち・・・ バカだと思っていたが!!! 本当にバカだったな!」


 エマ「バカバカ言わないでよ!!」


 ラナ「ちょっと、手を貸しただけじゃない?」


 ギース「ノア様は、彼らの自主性に任せてるのだ 我々が手を貸してどうする?」


 エマ「その方が早いかなって?」


 ギース「私だってお叱りを受ける覚悟で、ここに来ておるのだ!!」


 ラナ「もうすぐ… ケリ付きそうだし…」


 ギース「そんな事はどうでも良い!! 早く紙を撒いて、王都へ戻るぞ!!

    私やライルが庇えないほど、お叱りを受けるからな・・・

    今の内から覚悟しておけ!!!」


 ラナ・エマ「・・・・・・」


 3人は手分けして紙をばら撒き、王都へ向かう


 12月3日 午前1時12分 王都西門

 3人は王都に到着した

 ライルが出迎え、4人でノアが待つ宿屋へ向かい到着した

 3人は出来事を詳細に語った


「・・・ではギースは、エマとラナに攻撃を止めさせ、紙を撒いて戻ったのだな?」


「・・・はい 左様でございます」


「お前の勘は、天性の物であるな… 培えるものと、備わってるものがあるが…

 兵士は外に出れば、指示通りに動けない場合も勿論ある

 その時は己の判断で行動しなければならない

 2人を止め、紙を撒き、王都へ帰還した その判断は、私の意を汲んでいる

 

 エマとラナ、ワイバーン隊として、2人を選んだ我々の眼は曇っていたのか…

 抜擢した判断は、間違っていたのだろうか?」


 エマ「も、も、も、も申しワ、ワ、ワケご、ご、ご、ざいません・・・うぅっ」


 ラナ「つ、、、つ、ぎつ次か、らは… しししっか…りとぉ務めまぁす…グスン」


「『ヴァルガウス』に行き、紙を撒くだけの事 たったそれだけの事だ!!

 子供でもできる事をお前たちができなくて、どうするのだ!」


 エマ「かか、返すすここ、…言葉も…ごごご、ござ、いま…せん… ぐふぅ」


 ラナ「か、かならぁず… ごご、きたい…にぃ こたええ、えまぁす… ううっ」


 ギースは1時間、エマとラナは約2時間 絞られた


「2人への罰は、『しゃーべっと』禁止だ!!

 

 エマ・ラナ「・・・・・・」

 

「今日も仕事はある、2人は先に戻って休むが良い ライルとギースは暫し待て」


 エマとラナは、休息場所に戻って行った


「エマとラナは、お前たち2人には、まだまだ及ばないようだ…

 移動や再編等も含めて、エマとラナが今後続けていけるかは、

 ライルとギース次第かも知れないな?」


 ライル「肝に銘じておきます!」


 ギース「お任せください!」


 ではあれを持って行って、2人共休むが良い ケニー出してくれ

 ケニーは、4つの器が乗せられたお盆を差し出した


 ライル「これは!!」


「そうだ、『オレンジのしゃーべっと』だ!

 フェレンレン様が、氷魔法で器を作って下さったのだ」


 ギース「ありがとございます!!」


 2人は満面の笑みを浮かべて、4つの『しゃーべっと』を持って行った

 


 次回 第58話 王都編『会議』

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