第56話 報復

 人手不足を解消する為に、人員の配置換えを次々に行ったノア

 そんな中、竹馬の友『ラディアーガ卿』は、兵士100名を貸し与える

 ティセは『勇戦団』を勧誘した際に得た『マジックバッグ』の中身に、

 ガッカリしていたが『スキル書:夜目やめ』を見つけた

 意味を聞いて悪さを考えつき、ケニーを貸してくれと頼んだ


「ご領主様・・・ ケニーさんを借りて良いですか?」


「ティセ・・・ とても… 悪い事を考えてる顔だな・・・」


「できる事は、早め早めが良いでしょ! お願いします!」


「あぁ、分かった 分かったが、危険な事はするなよ・・・

 それと、今日は食事を摂ってないだろう 何かするなら、食べてからだ」


「じゃあ、すぐに食べます ケニーさん、何か作って!」


 ノア「ケニー… 私のも頼む」


「分かりました!少々お待ち下さいね」


 スタン「俺も!」

 エディ「俺もだ!」

 フォランダ「俺も欲しい!」

 ハルザード「食べたい!」

 テリー「儂も食いたいぞ!」

 セルトーア「私も・・・」

 アズディニ「少し欲しいな・・・」

 グレーイズ「早く作って!」

 ウィル「美味いの頼むな!」

 ノートン「・・・私も食べたいな」


「ちょっと!!・・・皆でやったら早いですよ!! 手伝って下さいよ!!」


 料理人:ケン「では、少し早い食事にしましょうか?」


「ケン殿、やってもらえるか?」


「勿論構いませんよ! ミナさんもどうですか?」


「いいですね~ では、野草や野菜を採って来ましょう」


「良し良し、皆わかった…

 エマ、ミナさんを連れて、野草や野菜を採って来てくれ

 肉はライル・・・・・」


「領主様! 肉だったら【タカミ村】から持って来たよ」


 ティセは、『ストレージ』から大量の『冷蔵肉』を出した


「ティセ・・・ やるじゃないか!!」


「ではエマ、ミナ殿と頼む」


 2人は出て行った


「みんな!食事したのは内緒だぞ!

 ノートン、伝達事項だけは、今やってくれ

 後ほどケン殿を、バトラーに引き会わすのも忘れずにな

 いや… この際だから、バトラーも呼んでやろう

 改めてノートンは、20名の兵士に三門の警備 これの伝達と、

 バトラーを連れてきてくれ

 皆、この後の食事も食べたい者は食べて良い

 先ほど伝達した業務は、全員夜食後にして構わない

 兵舎の回収は、【レビド兵】含めて、兵達の寝床になるので、

 それは早急に済ませて欲しい 以上だ!

 ケン殿・・・ 2階にいる者も含めて… 30人分ほど頼む」


「はい! やっと仕事ができます」


 一同は美味しい食事を囲み、楽しいひと時を過ごした



 12月2日 午後7時過ぎ

 首都トーラ 某民家炊事場

 ティセはケニーと共に侵入していた


「ケニーさん、これが『ガソリン』って言う・・・ 油なの

 油でも食べたりはできないからね」


「はい… それをどうなさいますか?」


 ティセはポリタンクの蓋を開け、キャップに少しだけ出そうとしたが重かった


「重くて、私じゃムリだ… ケニーさんやって バシャっと出ないようにね」


「はい… やってみます」


 ケニーは慎重にポリタンクを傾け、ガソリンをキャップに上手く注いだ

 ティセはそのキャップを両指で掴み上げ、

 竈に置かれた鉄鍋(フライパン状の物)に入れた

 中身が無くなったキャップをポリタンクに戻す


「このガソリンって油は、油の中でも一番燃えるの

 ケニーさんに、ファイアはサンダー系でも、ホントに小さい奴

 火なら小指くらい、サンダーならパチってするくらいのを、

 この鍋の中のガソリンにやってみて」


「はい・・・ いきます サンダー パチっ」


 静電気ほどのサンダーが鉄鍋に注がれたガソリンに触れた瞬間

 ボワっと燃えた


「お嬢様!! 凄い引火力ですね!?」


「そうなの ちょっとした事で燃えちゃうから、注意してね」


「それでどうしましょう?」


「色々やりたい事があるから、どうしようかな??

 まぁ… 全部はできないから… 今日は3つやります」


 ティセは『送魔鏡』で印刷した『グラ・ディオルカ』周辺の地図を出す


「これから『グラ・ディオルカ』を、やっつけに行きます

 まず今日は… ここね『アイルザット』

 1つ目は、要らないゴミを捨てます

 2つ目は、捕まえた魔物を放ちます

 3つ目は、門を燃やします」


「(・・・とても恐ろしい お嬢様が敵じゃなくて良かった!!)」


「?? どうかしましたか?」


「いえ・・・ 大丈夫です」


「ケニーさんの『アラクネー』は、どこにいます?」

 

「森にいますよ」


「じゃあ、行きましょう」


 2人はそれぞれワイバーンに乗り、王宮裏手の東の森へ行った


「ケニーさん『アラクネー』を呼んで」


「はい」


 ケニーは指笛を吹くと、数分でアラクネーが現れた


「ケニーさん、この辺の魔物で、相手にするの面倒な魔物って何?」


「そうですね・・・ この辺だと、『グレイトグリズリー』ですね

 強さもそこそこですが、スキル『毒の息』を使いますので」


「じゃあ、そのグリズリーを2頭、アラクネーが捕まえられるかしら?」


「アラクネー、『グレイトグリズリー』2頭生きたままで、

 糸で口を塞いで捕まえてくれ」


「少々おマチくだサイ 行ってマイりマス」


「お嬢様、10分から20分で帰って来ますよ」


「ありがとう! じゃあやり方ね

『アイルザット』に着いたら、ここの王宮みたいに偉い人がいる場所とか…

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 上空からファイア…

 こんな感じで、お願いしますね」


「(お嬢様… 笑顔なのに、とても怖い)上空からファイアですね・・・」


 10分少々で、アラクネーは『グレイトグリズリー』2頭を捕えて来た


「ケニーさん、ガソリン重くて私じゃムリそうだから、持っててもらって良い?」


「はい、勿論」


「じゃあ出すから、ケニーさんの『マジックバッグ』にしまって」


「はい、分かりました」


 ティセは、ガソリン20リットルを4つケニーに渡した

 ケニーは『マジックバッグ』にガソリン20リットルを4つ収納した


「グリズリーは、この前の悪者みたいに… アラクネーの糸で吊って行きましょう」


 2人はそれぞれワイバーンに乗りこんだ ティセはアラクネーと相乗りだ

 ワイバーンの爪には、縛られた『グレイトグリズリー』が2頭ぶら下がっている


 王都を出発してから少々


「ケニーさん、『スキル書:夜目』使って下さい」


「お嬢様、私もワイバーン隊も、地上部隊も、全員持ってますよ」


「えぇ~!? みんな持ってるの~!!」


「はい! 【ハルヨシ村】や【タカミ村】周辺は、結構ドロップしますよ」


「(マジか・・・レアじゃないのは分かるけどさぁ)

 じゃあ… 私が使おうかな~」


 ティセは『スキル書:夜目』使った


「これで、スキルを発動する」


 スキルを発動したティセは、陽が落ちてすっかり暗くなったにもかかわらず、

 昼間のように辺り一面が見えて、少し感動している


「お嬢様、西側に見えるあの光の場所は【レビド】でございます」


「あぁ!前に一回行った所ですね

 帰りに寄りましょうか? 用は無いけど」


「一応後で寄りましょうか・・・」

 

 更に1時間程過ぎた頃


「お嬢様、お待ち下さい ここからは少しスピードを緩めて下さい」


「はい… (ちょっと緊張してきた)」


 そして到着した 上空やや南側から

 現『グラ・ディオルカ』 ウェルソン伯爵領『アイルザット』

 

「お嬢様、あの高い建物が、ウェルソン伯爵が住んでいる場所です

 そして右手の角あそこが、兵舎でございます

 どちらに仕掛けますか?」


「ケニーさん、ワイバーンごと、中に入れそう?」


「兵舎が城壁の角にあるので、そちらの方からならいけそうです

 ただ、1匹の方が良さそうです」


「いや・・・ ちょっと悲惨な感じになっちゃうな」


「何か?」


「考えてた事をそのままやったら、まずいなぁって・・・

 計画変更します

 閉じられてる4つの門に、外側からガソリンをかけて、

 全部燃やします

 順番は、北門から始めて、東門と西門は、ほぼ同時に

 南門は残して上空へ避難 これでいきましょう」


 2人は上空から急降下し、ケニーは素早くガソリンを取り出し、

 閉じられた北門にかける

 ポリタンクを捨てたケニーは、ファイアを放つ 激しく燃え上がる炎

 素早く上空へ移動し、今度は二手に分かれる

 ケニーは西門 先ほどと同じ動作を繰り返す

 ティセは東門 急降下したワイバーンは東門上空でホバリング中

 ティセはポリタンクを『ストレージ』から取り出し、

 蓋を開けてアラクネーに渡し、指示を出す 

 指示通りケニーのように動いた


「ワイバーン・・・ ブレスね」


 ティセの言い終わりと同時に、ワイバーンはファイアーブレスを放つ

 三門はあっと言う間に燃えている


 2頭のワイバーンは上空にあがる


「お嬢様、上手くいきましたね」


「大丈夫みたいね、死者は出てないから・・・

 じゃあ、あの居城?にゴミを捨ててから、魔物放って帰りましょう」


 結局ティセは、22袋の生ゴミを上空から不法投棄した

 その後、城壁角から上手い事『グレイトグリズリー』2頭を、

 糸を切り放つ

 暴れまくった『グレイトグリズリー』2頭は結局はやられたものの、

 周囲に毒をまき散らし、大混乱に陥れた


「じゃあ、ケニーさん帰ろうか」


 2人は、【レビド】に寄らずに帰った


 時は少し遡り、午後9時35分 『モワベモタナ』近くの森 エマサイド


 エマ「でもさ… ティセ様もノア様も、敵に甘くない?」


 ライル「何がだ?」


 エマ「『モワベモタナ』もさ、上空から見たけど、簡単に陥落おとせそうじゃない?」


 ギース「バカな事を申すな!」


 ラナ「でもエマが言う通り、私たちだけでも十分やれそうだけど?」


 ライル「そんな事は、お二人ならとっくに分ってるさ」


 エマ「なら… なんで取らない訳?」


 ギース「取らないのは、要らないからだよ…」


 ラナ「要らない??? なぜ、要らないのよ?」


 ライル「エマとラナが言う通り、我々が取りにいけば、すぐにでも取れるだろう

   ではなぜ取らないのか… 城や土地が欲しい訳じゃなくて、人が欲しいんだ」


 エマ「人が欲しいのは分かるけど、捕虜だって解放しちゃったし…」


 ラナ「何か回りくどい感じじゃない?」


 ギース「お二人共優しいじゃないか? 捕えた捕虜を放って、

   近々に攻めるから皆を連れて逃げて来いなんて、普通あり得ないだろ?」


 ライル「お二人共本来は、戦なんかしたくないのさ 手を出され仕方なしに…

   特にティセ様は… 敵に教えてやりたい 頼むから怒らせるなって…」


 エマ「領民たちを避難させて、土地は要らないのか~ 凄く勿体ないな」


 ラナ「特に『ヴァルガウス』はね! マイヤーズ伯爵領だもん」


 ギース「バカな事言ってないで、仕事を終わらせよう

   気を付けて行って来いよ!」


 エマ・ラナ「いっちょやりますか!」


 エマ・ラナは『ヴァルガウス』に向かい、ライル・ギースは作業を開始した


 12月2日 午後10時20頃 マイヤーズ伯爵領『ヴァルガウス』

『ヴァルガウス』上空に到着したエマとラナは、

 領内の様子を見て、息を飲んだ



 次回 第57話 王都編『問答』

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