第55話 進化

 王都より一旦村に戻ったノアとティセ

 ノアは人手不足を解消する為に、人員の移動を行う

 両村の領主代行に長男のヴェル・次男のアルファを据える

 一方ティセは、かつて知り合った冒険者パーティー

『勇戦団』を勧誘し、同盟?を結ぶ事に成功した

 新領地の開拓を棟梁シークに任せ、2人は王都へ戻った


 12月2日 午後4時25分


「すっかり遅くなってしまったな・・・」


「領主様、スタンさんたちが見えなかったから、もう着いてるはず

 フェレンレン様の所に行きますね」


「あぁ、行ってこい」


 ティセは宿屋へ向かった

 ノアは、ギルド前で作業しているノートンの元へ降りる

 ノアサイド


「ノートン、帰ったぞ 様子はどうだ?」


「ノア様!、問題は特にございません」


「想定より遅くなってしまった… もう3人は着いているか?」


「警備等々、割り振っております」


「そうか… (この時間では何をやらせても中途半端だな)

【レビド】のアルを呼んでくれ」


「はっ!」


 数分後、ノートンはアルを連れて来た


「ノア様、何かお申しつけ下さい 何もやらないと言うのは・・・」


「アルよ、もうこの時間だ・・・」


「しかし閣下…」


「・・・では0時から、三門の警備を任せて良いか?

 時間やローテーションは【レビド】流で構わない

 基本的に私は、このギルド前かあちらの宿屋にいる

 他の者にも知らせておいてくれ」


「はい!喜んで致します」


「今、この王都には、魔物も含めて300弱いる

 食事の準備が大変でな 半数は、炊事担当にしてくれないか?」


「はい、畏まりました」


「材料は、この家に集めているから、使ってくれ

 食事は8時14時20時の三回だ

 こちらも兵50で、共同で作らせる では、今夜の分から頼むぞ!」


「お任せ下さい!」


 アルは戻って行った


「ノートン、50名の兵は・・・ いや・・・ バトラーを呼んでくれ」


「はっ!」


 数分後、ノートンはバトラーを連れて来た


「バトラーよ、王都はこのありようだ… お主は兵士を続ける気はあるのか?」


「・・・ 私は、兵士しかした事がありませんので…」


「では私の元で、働く気はあるか?」


「は、はいっ! 加えて頂ければ… お願い致します…」


「良し、たった今から私の指揮下に入る!役付きであるからな!

 西門付近で回収作業をしている『モワベモタナ兵』と『ヴァルガウス兵』が居る

 その者たちに作業の中断を伝え、54名をバトラーが率いよ 

【レビド兵】50名と共同で、毎日の食事を担当してくれ

 毎日8時14時20時の三回だ 覚えたか?」


「はい!覚えました!」


「それではノートン、バトラーを案内してやってくれ!」


「はっ!」


 ノアは宿屋へ行く

 時は少し遡り・・・ ティセサイド


「領主様、スタンさんたちが見えなかったから、もう着いてるはず

 フェレンレン様の所に行きますね」


「あぁ、行ってこい」


 ティセは宿屋に到着 中に入る

 奥の方に、フェレンレンを見つけ駆け寄る


「フェレンレン様… 妖精の・・・」


 テーブルにタオルが敷かれ、ピコは寝ている


「ポコは大丈夫だよ・・・ もうちょっと掛かるかな?」


「フェレンレン様… ピコですよ・・・

 ピコはどうしたのですか? 病気じゃないの・・・?」


「お腹をおしてごらん」


 ティセはピコのお腹を優しく押してみる


「ぐぇーーー !? ティセ・・・ 何すんのよ! 寝てんのに…」


 フェレンレンは、ゲラゲラ笑ってる


「(やりやがったな… 根に持つタイプだな) ピコ、具合はどうなの?」


「う~ん… あんまり良くない… 園長先生のとこへ帰りたい… グスン」


「ピコ… いつまで経っても赤ちゃんみたいね」


「ピコは、赤ちゃんじゃない! ぐわぁくぁwせdrftgyふじこlp ・・・」


「ピコ・・・ 大丈夫!?」


「大丈夫です~~ ティセ騙された!! ・・・くぇrちゅいお・・・」


「しょうもな・・・ もう良いよ! ・・・ ピコ… もう終わり!!」


「・・・・・・」


「・・・ ピコ!? ピコ?? ちょっとピコ・・・」


 フェレンレンがお腹を指さす

 ティセは更に優しく押してみる・・・ 反応が無い!!


「もう始まるよ」


 反応が無かったピコは、徐々に苦しみもがき出した


「フェレンレン様・・・」


「大丈夫、見ていな」


 段々と体が大きくなり・・・ 一回り大きくなった

 着ていた服の縫い目がほつれ、ビリビリと破れていく

 苦悶の表情が少しずつ和らぎ、そして眠ってしまった・・・


「フェレンレン様… コレってもしかして、『進化』ですか?」


「そうだね 『ピクシー』が『ハイピクシー』になったんだよ」


「えぇ~!! ピコが『ハイピクシー』になったって!?

(ゲームだったら、少しは役にたちそうだけど・・・)」


「フェレンレン様、『ハイピクシー』って、何かできます?」


「元が弱っちいからね 戦闘には向かないね…」


「まぁ… ピコだから、別に良いんだけど…」


「ピクシーに限らず『妖精』はある意味『人たらし』な部分があるんだ

 この娘が甘えんぼさん卒業して、本当の意味で『大人』に進化した時に、

 人間の役に立てるかも知れないね」


「・・・(深すぎて分からん??)

 体が大きくなっちゃったから、服がビリビリだよ・・・

『送魔鏡』で売ってるかな? そもそも魔物用の服ってあるのかしら?」


「どんな時代でも『こんな時代になったね』って、変遷を懐かしむものなんだ

 元の世界だって『変な物』は売ってるだろ? なら、ここにもあるさ」


「・・・ フェレンレン様、ピコの事ありがとう!2階に行きますね」


 ティセは2階に上がり、ギルド職員の部屋へ向かった

 宿屋へ戻って来たノアは、一息つく


「閣下、先ほど村より戻りました」


「そうか、そうか 人員の確保は、どうじゃ?」


「・・・ それぞれの村に『ヴェル』と『アルファ』を、領主代行にしました」


「領主代行じゃと… お主も大胆になってきたのぅ!」


「ティセを見てて、遠く才能は及ばないでしょうが、やらせてみたくなりました」


「ええんじゃないか! 色々と経験させれば、覚えていくもんじゃ!」


 2階からティセが降りて来た

 ティセはタオルを巻いたピコを、ノアに見せる


「領主様、見て見て! 何か分かる?」


「何って人形だろう…」


「違うの 正解は『進化して、ハイピクシーになったピコ』でした!」


「!?ピコが『進化?』したのか!!」


「そうみたい それで体も大きくなったの」


「では『赤ん坊』卒業だな!」


「それはもうちょっと先みたい・・・」


 アズディニとグレーイズが戻って来た


「2人共戻って来たところ悪いが、役付きを全員ここに集めてくれないか

 ワイバーン隊と、地上部隊もだ

 バトラーは先ほど役付きにしたが、今回は除外する」


「はっ!」「はっ!」


 数十分後、役付きは宿屋に集合した 午後5時半過ぎ


「エディ、職人2人を呼んでくれ」


「はっ!」


 エディは2人を連れてきた


「今ここには、バトラーを除いて10人の役付きがいる

【タカミ村】には、『ジェイソン』『フレディ』『ダミアン』を残した

 領主代行は『ヴェル』が担う

【ハルヨシ村】は、『レイリアン』を残し、『アルファ』が領主代行だ」


「バトラーは先ほど私の指揮下に入り、役付きとした

 そのバトラーは、ここに残った『モワベモタナ兵18名』『ヴァルガウス兵34名』を率い、兵52名と【レビド兵】50名が、共同で炊事担当とした

 また【レビド兵】50名が、明日0時より三門の警備をする事になった

 時間割やローテは、アルに任せている」


「地上部隊の5名は、各々の魔物達と共に、引き続き生存者がいないか、

 確認をしてくれ 区割りは5人で決めよ

 これから作業し、夜食を摂って休憩1時間、後に作業再開してくれ

 本日の作業終了時間は、午前0時までだ」


「『ライル』『ギース』『エマ』『ラナ』4名は、この『紙の束』を4等分してくれ

 ライルとギースは『モワベモタナ』へ エマとラナは『ヴァルガウス』へ

 4等分したその紙の束を各々持って、向かってくれ

 現地に到着したら、上空よりそれらを各自ばら撒いてくれ

 一か所ではないぞ 兵舎などは除いて、領民がいる場所になるべく満遍なくだ

 それが終わり次第帰還してくれ

 ライルとギースは帰還後、少し狩りをして肉を確保してくれ

 今回は…6体ほどあれば良い 取った獲物は、バトラーに渡してくれ 

 それが終わったら、報告後に休んでくれ

『ヴァルガウス』の方が遠いのは、勿論承知している

 エマとラナは、帰還したら私に報告して終わりだ

 ティセが『送魔鏡』で写した地図がある 各地の場所が良く分かるから持って行け

 4人は夜食までゆっくりしていろ 夜食後に小休憩30分挟んでから行動開始だ」 


「『フラン』『エリス』『マシュー』『ジーン』『エイデン』『ギャビン』

 この6名は、兵を率いて本日中に到着する予定だ

 到着し次第、食事と休息を取らせよ 休息場所は、これから作る

 到着時間は不明だがその食事は【レビド】の手は借りずに、

 バトラーが率いる、我が方の兵士54名で作るようにと

 これはノートンからバトラーへ伝えてくれ 多めに100名分だぞ

 料理人のケン殿は、その到着する部隊への食事から、炊事担当に加わってくれ

 明日から食事は、毎日8時14時20時の三回だ」


「『アズディニ』『グレーイズ』『フォランダ』『セルトーア』『ハルザード』

 この5名はこれより、それぞれ兵士10名を率いて王都軍兵舎へ行き、

 必要物資の回収作業に当たってもらう

 必要物資は、食料、日用品、金品、衣類、その他必要と思われる物、一切合切だ

 ただし、寝具はそのまま使うので、手を付けなくて良い

『スタン』『エディ』『ウィル』は、それぞれ10名の兵士を率いて、

 集められた物を全て、王宮へ運んでくれ 荷車や馬車何でも使って良い

 宰相閣下、兵舎への誘導お願い致します」


「残りの兵士20名で、三門の警備を引き続きやらせよ 0時までだ

 20名で三門なら、休み休みできるであろう ノートン、伝達を頼んだぞ」


「は~い!は~い!は~い!」


「ティセ? どうした?」


「領主様、今日『勇戦団』の人と会ったでしょ?」


「あぁ、そうだな… それがどうしたのだ?」


「今日スカウトした時に、私のパワーを見せつけてあげたんだけど、

 その時にリフターの人が『マジックバッグ』持ってたの

 それで… その『マジックバッグ』1つ貰ったの

 それがね50個入るんだってwww」


 ティセは『ストレージ』から『マジックバッグ』タイプ:キャリーケースを出した


「この中に、金目の物がパンパンに入ってるみたいなの~

 このバッグ使えば、持ち運びが楽になるから、使って良いよ」


「ティセ・・・ お前は本当に… 優しいな」


「今… 中身出しちゃうから、ちょっと待って」


 ティセは収納物を、テーブルに次々と出していく


『鉄剣』『銅剣』『大剣』『鋼剣』『鋼剣』『鋼剣』『鋼剣』『鋼剣』『鋼剣『杖』

『鋼剣』『鋼剣』『鋼剣』『鋼剣』『鋼剣』『鋼剣』『鋼剣』『鋼弓』『鋼弓『杖』

『鉄盾』『鋼盾』『鋼盾』『鋼盾』『大盾』『大盾』『小刀』『小刀』『鉈』『鉈』

『薬草』『薬草』『薬草』『毒消』『毒消』『毒消』『手斧』『手斧』『蜜』『蜜』


「ティセ・・・ 残念だが、今の所金目の物は無いぞ・・・」


「えぇ~、そんなぁ でもあと…10個あるから」


『フレイル』『フレイル』『フレイル』『牛の糞(乾燥)』『牛の糞(乾燥)』

『Hな本』『天幕(大)』『ランタン』

『ゴールドダガー』『スキル書:夜目よめ


「ティセ、『ゴールドダガー』なら… 多少価値はありそうだがな…

 他は価値としては・・・ないな 

 ただ、普通に使えるものだから、そんなにガッカリしなくても…

 ただで手に入れた物だろう?」


「そうなんだけどね・・・

(『スキル書』・・・オリジナルの方…持って来ちゃったかな・・・? ヤバっ)」


「お嬢様… 『金目の物がパンパンに』と仰いましたが、『金目の物』が

 正しいのではないのでしょうか?

 その『マジックバッグ』自体の価値が高いのではございませんか?」


「えっ!・・・ 考えてみれば確かに・・・そうかも知れない

 それで『フレイル』ってどんな物?」


「『フレイル』は…これだ 持ち手が棒状になってて、鎖の先に鉄球がある物だ

 使い勝手が悪くて、武器としては役に立たないぞ」


「ふ~ん じゃあ『夜目やめ』って、何かしら?」


「儂が教えてやろう 真っ暗な夜中でも、ハッキリと見える目の事じゃよ」


「夜中でもハッキリと・・・(それはマジ使えそう)」


「ご領主様・・・ ケニーさんを借りて良いですか?」


「ティセ・・・ とても… 悪い事を考えてる顔だな・・・」



 次回 第56話 王都編『報復』

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