第54話 説得

 時間は少し遡り・・・ ティセサイド


「酒場・・・ 終わったら兵舎に来てくれ」


「分かりました」


 ティセは宿屋兼酒場に向かい、到着した


「いるかな~?」


 店内は6割程度の入りだ ティセは店員のエルフに聞く


「お姉さん… 『勇戦団』の人たち居ませんか?」


「あ~『勇戦団』さっき帰って来て、上に居ますよ 呼んで来ますね」


 店員は2階へ呼びに行き、連れてきた


『勇戦団』リーダー フォル:戦士LV33 デニス:リフターLV38


「あれ・・・!? あの時のお嬢ちゃんじゃねぇか!

 全然来なかったな! 元気にしてたか?」


「あれからまだ半年は経ってないか… でも少し大きくなったな」


「フォルさん、デニスさん、お久しぶりです」


「お嬢ちゃん、今日はどうしたんだ?」


「ちょっとお話したくて来ました」


「話ってなんだ? まぁ折角来たんだ座ってくれ 何か食べるか?」


「私は… 飲み物だけでいいや」


 フォルは適当に注文をした


「最近はどうなんですか?」


「う~ん… まずまずってとこだな・・・」


「まずまずではないだろう… 正直余り良くはないな・・・」


「そうなんですか・・・ 皆さんでどれくらい稼げたら、

 あぁ~今月は稼げたなぁ~って 幾らくらいなんですか?」


「そうだな・・・ 俺らは10人だから… 40万も稼げればなぁ」


「最近は中々厳しくてな… 30万前後って所だな」


「ちょっと… お二人に相談があるんですけど・・・」


「何だよ… もったいつけずに言っちゃえよ!」


「私と組んで… 儲けません?」


「お嬢ちゃんと!? 組んで?? わはははは!」


「君はレベル幾つなんだ?」


「私は商人でレベルは50超えてますよ」


「!?50を超えてるのか・・・!」


「れ、レベル50なんて… 初めて聞いたぞ!!」


「お待ちどうさま~ 熱いのでお気をつけくださいね~」


「一体何をするんだい?」


「王都で私の『お手伝い』をしてもらいたなぁ~って」


「王都でお手伝い・・・ なんだそりゃ?」


「もう少し具体的に教えてくれないか?」


「今…王都はね、『グラ・ディオルカ』と『オルキニース』に狙われてるの

『オルキニース』は、しばらくの間、大丈夫だと思うの

『グラ・ディオルカ』の方が、相手になるんだけど・・・

 私この前・・・ 宣戦布告しちゃって・・・」


「!!!!!!!」


「(小声で)戦線布告だと・・・ 一国を相手に何やってるんだ・・・」


「みんなが戦うワケじゃないから、安心して欲しいんだけどね

 一方的に嫌がらせするの そのお手伝いをしてくれれば良いの」


「それで儲けられるのか?」


「うん、儲けさせてあげる 毎月40万以上稼がせてあげるから…」


「しかしなぁ・・・ 皆が何と言うか・・・」


「みなさん上にいますか?」


「あぁ、いるが・・・」


「ちょっと上に行きましょう!」


「あ、、ああ、行こうか・・・」


 3人は2階の部屋に行った


「ここは大部屋なんですね!」


「そうだ、金が勿体ないからな」


 事情を知らない他の8人は、分からないまま聞いている


「この部屋の中心に、みなさんの大事なアイテムとか武器や防具でも、

 何でも置いて下さい 特に『マジックバック』とか、高価な物とかあれば

 お金とか【ジュリア】が作った物はダメですよ~ お金以外の金目の物で」


 10人は部屋の中央にスペースを作り、それぞれ思い思いの品を並べる


「横に広がらずに、そうです 上に積んで下さい はい、そうです

 あら!このキャリーケースは『マジックバッグ』ですか?」


「そうだ『マジックバッグ』だ 50個収納できるんだ」


「中身は入ってますか?」


「パンパンに入ってるぞ 金目の物も」


「他の物も含めて、どのくらいの価値になります?」


「どうだろうか・・・ ゲイル分かるか?」


 ゲイル:商人LV35


「『マジックバッグ』も中身も山も込みで、6~80万はあるんじゃないか?」


「だ、そうだ」


「じゃあ、ここに私の『マジックバッグ』を置きます いきますよ!」


 ティセはスキル『複製』を発動した 同じ山が2つできあがった

 皆は目を見開いている

 ティセは自分の『マジックバッグ』2つを仕舞う


「はい! ここに6~80万相当の品物が、出てきましたよ どうですか?」


 皆、言葉もない


「それは全部、みなさんにあげます だからアノ件をお願いします

 それと… そのキャリーケース… もう一回スキル使うので、

 その分は下さい」


「あ、、ああ良いぞ・・・ なぁ、デニス??」


「ゲイル・・・ 一応『鑑定』してみてくれ」


「よし・・・・・・ 問題ない、大丈夫だ・・・」


 ティセは『マジックバッグ』タイプ:キャリーケースを『複製』した


「さっきも言ったけど、お金と【ジュリア】が作った物とか、

 ダメな物もあるからね 『スキル書』とかはやった事ないけど、

 多分できないはずだから それ以外ならやってあげられるからね」


「良し決まった、我々『勇戦団』は、お嬢ちゃんに手を貸すぜ!」


「ありがとう!! じゃあ、みなさん支度して兵舎前で待ってて下さい

 私はもう少し用があるので、終わったら向かいますね」


「おぉ!分かった じゃあ後でな!」


 ティセは酒場を後にし、兵舎へ向かう

 兵舎に入ると、ノアは会議中だったので、暫し待つ

 会議を終えたノアは、部屋を出てティセを見つける


「ティセ、待っていたのか… すまんな、時間が掛かってしまった」


「いいえ、全然大丈夫」


「これから『メルゼイン』の所へ行くのだが、もう少し待っててくれないか?」


「はい、分かりました ちょっと領主様にお願いがあります!」


「何だ?」


「私の『傭兵』を雇いました その人達を王都に連れて行きたいので、

 馬車を貸してもらいたいんですけど・・・2台」


「傭兵を雇った!?・・・? ティセ…(いや…ティセを守らせるなら…アリか)

 それは良かった! 馬車2台か? では、私から… 後でその者達に私から言おう

 今… 伝えるから待っててくれ」


「はい、お願いします!」


 ノアは再び中に入って行き… 出て来た


「ティセ、馬車の件は『フラン』に伝えたからな では今一度待っててくれ」


「はい、待ってます!」


 ノアは急いで出て行った

 自宅に到着したノアは『メルゼイン』に、大事な話しをする

 ノアサイド


「お帰りなさいませ」


「メルゼイン、突然で申し訳ない

『ヴェル』と『アルファ』に、明日から『領主代行』をさせる事にした

『アルファ』はここだから大丈夫だな レイリアンを就けた

『ヴェル』には剣と馬を渡し、一人で【タカミ村】に行かせてくれ

 本日中に着くよう、早めに伝えて欲しい

 向こうでは『ジェイソン』『フレディ』『ダミアン』の3人に任せた

 4人で協力して上手くやれと伝えてくれないか?」


「しかし… 年齢が少し足りないのではございませんか?」


「それは分るが、幼くして親がいない場合もあるだろう?」


「そうではございますが・・・」


「何かあったとしても、周りが支えてくれる 過剰な心配は不要だ」


「分かりました・・・ 2人には後ほど伝えます」


「君は、領民から10名程度募って、その者たちと王都へ来てくれ

 なるべく女性の方が良い 料理と衣類の仕分けや雑事があるのだ

 近しい人で誠実なら尚良い

 1日1000ヨーまで出す 給金は月末払いだ

 現地で見つけた現物も支給する ただし、1人1日に1つだがな」


「衣類の仕分けとは・・・?? 王都がどうかなされましたか?」


 ノアは全て話した


「!!そんな・・・全員がですか…」


「あぁ… そうだ しかし、ここや【タカミ村】を守る為にも、

 王都は絶対に死守せねばならない…」


「領主代行の件も、その事があったのですね… 分かりました…」


「では、その者たちを募って、馬車で王都にきてくれ

 同行者はティセが雇った『傭兵』がいる 兵舎で待ってるんだ

 一度顔合わせをしてくれ」


「それでは、向かいましょう」


 ノアとメルゼインは、ティセの元へ向かった

 その頃・・・ ティセサイド


「・・・でね~ おかしいでしょ? ゲラゲラゲラ」


「あっ!来た来た!」


「ティセ、待たせたな!」「ティセ、相変わらずカワイイわね!」


「メルゼイン様、こんにちは~」


「お嬢ちゃん、こちらはどなたで?」


「こちらはね~ ご領主のノア様と奥様で~す」


「ご、ご領主様で!?!? これは失礼致しました・・・

 我々は… 『勇戦団』リーダーのフォルと申します…」


「私がノアで、妻のメルゼインだ よろしく!」


「いえいえ… こちらこそ お願いします…」


「ティセが世話になるそうで、守ってやってくれ」


「はい… それは勿論… 頑張らせて頂きます・・・」


「ティセ、訳あってな… 少しゴタゴタしているのだ…

 彼らも出発するつもりであったのだろう?」


「そうでしたけど… 何か?」


「領民から10名ほど募って、集まった者たちも連れて行きたいのだ

 その中にメルゼインも加わるのだが、集まるまでお主たちは待って欲しいのだ

 要するに、その馬車を護衛しながら、王都に来て欲しい

 だから出発は、1~2日待ってくれないだろうか?」


「あっしらは構いませんぜ!」


「ありがとう!宿を引き払ってしまったのであろう?

 詫びと言ってはなんだが、この馬車2台と馬を2頭プレゼントしよう

 それでよろしいか?」


「えっ!? 十分でございます… ではどのようにすれば・・・」


「「そうだな… 1~2日落ち着ける場所を見つけてくれ

 見つかったら、兵舎にいる者に知らせてくれれば良い」


「了解致しましたぜ」


「メルゼインは、早急に募集して、彼らの事をレイリアンに伝えてくれ」

 それと今『アハルテケ』の『護姻環』2個と、この馬車を2台渡してくれと」


「分かりました」


「それでは各々方失礼する ティセ、不越山に向かうぞ」


「はい、行きましょう!」


 ノアとティセは、『不越山』向こう側で作業する、

 棟梁:シークの元へ向かい・・・ そして到着した


「ティセ… 私たちは初めて、こちら側に降り立ったんだな」


「(あれ…? 私って来たかな?来てないかな… 分かんないや)

 そうですね、ご領主様!感動です」


 広大な敷地の中で、建設途中ではあるものの、一目で『壮大』であるのが分かる

 700名の人間が、一致団結して作業していた


「棟梁は、どこかな?」


「棟梁ーーー!棟梁ーーー! ご領主様が参られましたぞーーーー!」


 大工の棟梁が顔を覗かせ、こちらに歩いてきた


 大工棟梁:シーク


「棟梁!これは凄いな!! たった1日半であろう?

 これが人足たちの宿泊施設になるのか・・・ その後は、何に転用できるのだ?」


「ご領主様!、そりゃあ700人ですぜ! こんな規模感で作れるのは嬉しいぜ

 そうですな~ 兵舎にもできますし、坑道そば西側の宿としてもいけますぜ

 ここが発展すれば、冒険者や移住者も… たくさん人が集まりますぜ!」


「そんな光景を、早く見てみたいものだ・・・

 して棟梁、これでどのくらいの出来なのだ?」


「2.5~3割ってとこですな」


「これで3割か… それではな棟梁、これが出来上がったら同じ規模で、

 あちら側にも作ってくれないか?

 あちら側のは、街にある商店のような、小さく区切られた感じでできるか?」


「それは任せてくれ 大丈夫だぜ!」


「棟梁実はな・・・」


 ノアは、王都での出来事をシークに話した


「・・・そんな事って・・・そんな酷い話しあんのかよ・・・」


「・・・皆にも言ってるのだが、王都を守らなければ、両村は救えないのだ

 棟梁に頼むのは、筋が違うのは良く分かってるのだが・・・

 ここで作業している者たちの事を頼みたいのだ

 各々の休みやら作業工程なども、やってはくれないだろうか?」


「ご領主様・・・よしてくれよ! こちとら、最後のご奉公で応募したんだぜ

 ここまで任せてもらえりゃあ、大工冥利に尽きるってもんだぜ」


「そうか!受けてくれるか・・・ ありがたい!

 それらの建物以降は、棟梁に全て任せる 自由に街・・・いや、国を作ってくれ」


「人間に生まれて、長い事大工やって、ここまで信頼された事ってないだろうな…

 お願い事のレベルじゃねぇ・・・ 

 ご領主様… 年寄りを泣かせるもんじゃねえぜ」



 次回 第55話 王都編『進化』

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