第53話 子供

 王都を奪還して、丸一日が過ぎた

【ハルヨシ村】での戦闘からここまで、皆疲れ切っていた

 今後について、王国宰相テリーと相談したノアは、

 一度村に戻る準備をしていた


 12月2日 午前8時頃


 北門の警備をしてた兵士が、ギルド前に居たノアの元へ駆けつけてきた


「ノア様、只今北門に『ラディアーガ様』が、兵100と共に参られました!」


「!?閣下自らか? ノートン!閣下をこちらに案内してくれ

 お主は、兵士たちを中央広場に誘導し待機させよ」


「はっ!」「はっ!」


 ノートンは『ラディアーガ』と『アル』を連れてきた


「兵を連れて来たぞ! 好きなだけ使ってくれて構わない!!」


「閣下・・・ ありがとうございます! こちらへどうぞ!」


 ノアは宿屋へ案内する


「おっ!じい様、生きておられたか!」


「お主もじゃろう… お互いに悪運だけは強いようじゃのぅ!」


「全くだ!」


「閣下、『グラ・ディオルカ』の動きはありますか?」


「近い内にあるとは思う・・・ なので警戒は解かずに伺ってる所だ」


「ティセの案ですが、こちらも近々に手は打ちます」


「そうか… また見事にやってくれるのであろう!」


「お主直々に出張って大丈夫かのぅ?」


「じい様も、あの『鬼』を知っておられるのであろう?」


「まぁそうじゃな・・・」


「しかしノアよ、本当に領民はいなくなってしまったのだな・・・」


「・・・」


「そうじゃ!お主、王妃様に顔を見せてやるのじゃ」


「おぉ、そうでございますな 閣下こちらへどうぞ」


 ノアは2階にいる王妃の元へ案内した

 2階 王妃の部屋


「王妃様、ノアでございます ラディアーガ閣下が来て下さいました」


 ガチャ 王妃はドアを開けた


「王妃様、お久しゅうございます! ご無事で何よりです」


「ラディアーガ卿… 貴方にも大変な苦労を掛けました・・・

 本当にごめんなさい・・・」


「王妃様・・・ そんな事は微塵も思っておりません・・・」


 2人の会話が続く中、ノアは1階に降りて来た


「ノートン、ティセはまだ寝ているのか?」


「ティセは、朝早くから動き回ってましたが・・・」


「疲れ知らずだな・・・」


 そんな中、ティセは帰って来た


「あっ!領主様!おはようございます!」


「ティセ、おはよう! 朝から元気だな 今は何をやってたんだ?」


「生ゴミの回収とか… 色々とね」


「私はこれから、一度村に戻るからな」


「どっちの村ですか?」


「両方だが?」


「・・・じゃあ、私も一旦帰ろうかな?」


「そうか、では帰る前に食料を纏めてあるから、それを頼む」


「どこにありますか?」


「ギルド前だ」


「分かりました!じゃあ、やって来ます」


 ティセは出て行った

 入れ違いで、2階からラディアーガが降りて来た


「閣下、お話はお済になられましたか・・・」


「あぁ… おいたわしくてな・・・」


「・・・ 閣下は何でこちらまでお越しになられましたか?」


「何って、『アハルテケ』だが?」


「では私から1つプレゼントしましょう」


「プレゼント・・・ 何かな・・・?」


「ノートン、私はこれから村に戻る 南門付近に居残った兵士たちがいる

 その者達には、今日の仕事を伝えてある

 昨日その者達が回収した食料や衣服など保管したのが、昨夜の家だ

 それらと今日回収した物を全て纏めて、

 ギルド周辺の家に種類別に分けて置いてくれ

 それらはティセが戻った時に、昨日のアレをやってもらうからな

 食事や警備は皆で分担してやらせよ

 それとギルド職員の2人を呼んでくれ」


「はっ!」


 ノートンはギルド職員を呼びに行った


「閣下、それでは行って参ります」


「おぁ、気をつけて行くんじゃぞ!」


 一行はギルドに向かう


「ティセ、終わったのか?」


「はい、この通り」


 ノアは『護姻環』を1つ購入した


「閣下が着けている『護姻環』は、『アハルテケ』の物でございますか?」


「そうだが? それがどうしたのだ?」


「その『アハルテケ』と交換致しましょう」


「馬を交換か・・・ まぁ良いだろう」


「その馬は、この馬と同種の物です」


「翼がある馬か・・・ 凄いじゃないか!」


「初めてでも簡単に乗れますから ご安心ください」


「あぁ、有難く頂くぞ!」


「それでは失礼致します

 ノートン、レビドの兵たちは、私が戻るまで休ませよ 後は任せたぞ

 閣下、ノートンもそれに乗れますので、聞いて下され」


「はっ!」「ノアー、ありがとうな~」


 2人は飛んで行った


 時間は経過して・・・昼前 【タカミ村】に到着

 

「領主様、園長先生の所に行ってくるね 領主様はどこに行きます?」


「私は兵舎かな?」


「じゃあ行って来ます!」


 ノアは兵舎へ向かう

 役付き(幹部)を集め、会議を始めた


「・・・と言う訳で、王都には僅か8名しか生存者は居なかった・・・」


 重い空気が全員を包む


「王都を死守せねば、両村… 我が領地を危険に晒してしまうのでな、

 領主代行として『ヴェル』を、

【ハルヨシ村】は『アルファ』を据えると決めた・・・」


「しかし・・・ ご年齢が・・・」


「皆もそう思うだろうが、私は王都でな・・・ ティセを子供扱いしてしまった…

 早い内に責任感を持たせてやれば、自然と成長していくものでな・・・

 領主の息子だからと言って、甘やかす事は許さん・・・

 『スタン』『ウィル』『エディ』3名は王都に移動してくれ

 『エディ』は、職人の『ミナ』と『ケン』を馬車で連れて来てくれ

 『ジェイソン』『フレディ』『ダミアン』は、ここに残って狩りの作業と、

 『ヴェル』を支えてやってくれ

 困った事があれば、4人で相談して自由にやってくれて構わない

 それと職人に、毎月末に報酬を渡すのを忘れるな

 人足はこちらで払う

 金は金庫にある 足りなければ、王都まで取りに来させよ

 帳簿はこれだ 記載を忘れるでないぞ、以上だ」


『スタン』『ウィル』『エディ』を伴い、ノアは兵舎を出た

 外に出ると、血相を変えたティセと園長:テクラが駆け寄って来た


「2人共どうしたのだ?」


「領主様… ピコ(妖精:ピクシー)が具合悪いみたいなの・・・」


 ピクシーのピコは、ぐったりしている


「ここではどうしようもないな… しかも妖精 人間と同じなのか?」


「う~~ん分からない・・・ 園長先生、昨日の夜からなんでしょ?」


「そうなの… それまではいつも通り元気だったのよ・・・」


「ティセ、フェレンレン様に見てもらおう」


「うん… そうします 園長先生は来れますか?」


「ダメよ、小さい子もいるし・・・」


「・・・ 領主様、この後はどうするの?」


「【ハルヨシ村】に寄ってから、不越山の向こうで作業している棟梁の所に寄る」


「じゃあ… スタンさん、ピコを連れて行ってあげて・・・」


「構わないが、ティセは行かないのか?」


「私も領主様と寄る所があるから… もしも追いついたら、私が連れて行くから

 もしも間に合わなかったら、フェレンレン様に見てもらって・・・」


「あぁ、分かったよ ティセの頼みじゃ仕方ないだろ」


「ありがとう!」


『スタン』『ウィル』とピクシーのピコは、『赤兎馬』で出発した


「じゃあ園長先生、ピコが治ったら、連れて帰ってくるね」


「エディは、職人を頼んだぞ!」


「はっ!」


 ノアとティセは、【ハルヨシ村】へ出発した

 そして【ハルヨシ村】に到着した


「ティセはどこに行くんだ?」


「先に・・・ 酒場に行って来ます」


「酒場・・・ 終わったら兵舎に来てくれ」


「分かりました」


 2人は別行動を始めた


 ノアサイド

 ノアは役付き(幹部)を集め、【タカミ村】同様同じ話をした


「・・・それによって王都は、我々にとってとても重要である事に変わりはない…

 しかし、人手不足もあって、作業が何も進まないのが現状だ

 レイリアン、ここには兵士は何名いる?」


「役付き(幹部)を含め、およそ90名ほどいます」


「・・・今後『ヴェル』を【タカミ村】領主代行に据える

【タカミ村】には『ジェイソン』『フレディ』『ダミアン』の3名を、

『ヴェル』の補佐に任命してきた

【ハルヨシ村】は、『アルファ』を領主代行に据える

 レイリアン、お前が補佐として『アルファ』を支えてやってほしい」


「はい、かしこまりました お任せ下さい」


「『フォランダ』『セルトーア』『ハルザード』の3名は、

 早急に王都へ向かってくれ 仕事はノートンに尋ねよ」


「はっ!」「はっ!」「はっ!」


「『フラン』『エリス』『マシュー』『ジーン』『エイデン』『ギャビン』

 この6名は、街に『高札』を掲げてくれ 文面は・・・」


 王都への移住者を募集する

 移住希望者は、本年度中に申し出る事

 定数を越えた時は、直ちに打ち切る

 来年、1月1日から住居可能とする

 賃料は【ハルヨシ村】に準ずる

 賃料は先払い 月末までに支払う事


 商売を希望の場合、飲食業を優先し、直ちに開業可能

 ただし、複数の飲食店開業希望者がいた場合、

 本年度中に限り共同で営み、当方指定の店舗で営業する事

 ※当方指定の店舗での営業は(本年度中)賃料不要

 ※希望の店舗が重複した場合、決め方は当方指定の方法による

 ※希望の店舗での営業は、来年度から可能

 賃料は【ハルヨシ村】の同規模店舗の1.5倍相当

 提供価格は【ハルヨシ村】と同等とする事

 その他の商売希望者は、開業日は来年度からとする予定だが、

 早まる可能性も、十分にございます

 店舗は、契約順で埋まっていきます お早めに!


「6名は『高札』を掲げ終えたら、この村に兵士10名を残し、

 残りの兵士と共に、王都へ向かうのだ

 ただし、狩りの部隊とレイリアン以外の兵士だ

 残す10名の中に、坑道の岩を撤去している『鬼』の使役者を

 含めてくれ 確か『鬼』は8人だったな・・・

 撤去作業が終わり次第、朝昼は人足たちの警備、夜間の警備に

 半々で回してくれ」


「レイリアン、移住希望者の登録は、

 領民から5人から10人程度雇ってくれ 金額は任せる

 それと、ノッカー100人はお役御免なので、

 使役してる者から『護姻環』を回収して、保管しておいてくれ

 最後に、この村の貸家業の主を、全員集めておいてくれ

 明日の午後3時頃だ」


「はっ!」


「他に質問などある者は?」


「はい!」


「レイリアン、何だ?」


「『ヴェル様』と『アルファ様』は、いつより領主代行として来られますか?」


「2人共に明日からだ 領主の息子だろうが、甘やかす事はないように頼む

 困った時は、レイリアンとアルファ2人で相談して決めれば良い

 時には失敗させても構わんのでな 死ななければ、やり直せるからな」


「承知致しました・・・」


「それでは皆、取り掛かってくれ!」


「はっ!」



 次回 第54話 王都編『説得』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る