第51話 複製

 王都に到着した捕虜に食事を提供し、自由に帰って良いと釈放するノア

【モワベモタナ】の兵士を先に出発させた

 その頃『グラ・ディオルカ』国王:スナイデルは、レビド侵攻の失敗を知る

 軍勢の再編成を急がせ、レビド及びトーラの占領を再度画策する・・・


「お主たちはここに留まると申すのか?」


「はい、あちらに戻っても、何もございません…

 でしたら、こちらでお世話になろうと、皆で決めました」


「そうか… みんな、ありがとう! ありがとう!」


 ノアは、一人一人と丁寧に握手をした


「一緒に来てくれ、【ヴァルガウス】の捕虜たちの放免をするのでな」


「はっ!」


 ノアは食事を終えた【ヴァルガウス】の兵士たちに話しかける


「食事を終えた者は、私について参られよ!」


 それを聞いた捕虜たちは、ゾロゾロと集まってくる

 ノアは1200人以上の捕虜を連れ、西門広場まできた


「もう夜だ 皆、魔物に気を付けて帰られよ」


 捕虜たちは次々と門をくぐり、帰って行った…

 そんな中、数人数十人の塊がちらほら残る


「お主たちはどうした? 門を閉めるのでな、早く帰られよ」


「お待ちください… 先ほどの話しを聞き、怖くなりました・・・

 こちらに残らせてもらう事は… お願い致します・・・」


「残る者は、私に仕えると云う認識で良いのか? 残る者は手を上げてくれ」


 十数のグループの全員が手を上げた 最少は5人 最大は22人

 総勢213名が王都に残る選択をした


「しかしお主ら、知り合いや知人はいるであろう?

 私はできる限り助けたいのでな… 隣近所の人や子供がいる家族もあろう

 どうだ… 少人数でも構わんので、連れて来る事はできないか?」


 ノアのその言葉に納得した179名が、『可能な限り連れて来る』と約束し、

 王都を離れた 【ヴァルガウス】の兵士で王都に残った者は34名


「ライルよ、西門を閉じよ!」


「はっ!」


「後ほど交代を寄越すので、もう少し我慢してくれ!」


「はっ!大丈夫であります!」


「さてここに残ってくれた者が52名いる 夜になってしまったが、

 もう少し頑張ってくれ!

 これからやってもらうのは、民家に入り、衣服と食料の調達だ

 衣服は、女物や子供の物も関係なく、食料も全てだ! 全て集めてくれ

 お主たち9名は、ここからここまでの民家だぞ! 商店ではない!

 お主たち9名は、ここからここまでだ!

 お主たち10名は、ここからここまで… そうだ!

 お主たち10名は、ここからここまで

 お主たち14名は、各隊が集めた食料を、この家にまとめてくれ

 衣服は男性用、女性用、子供用で、大まかに分けてくれれば良い

 全ての隊が調達終了したら、仕分けも終了してくれ

 それぞれは、調達した民家で休んでくれ 仕分けの隊も、それで足りるであろう

 明日は朝9時 ここに集まってくれ

 変更が無ければ、今日と同じく調達をしてもらう


 何かあれば、私はギルドそばの宿屋か、ギルド前にいる

 それでは皆、よろしく頼む 以上だ!」


「はい、任せて下さい!」


 ノアはギルド前に戻る


「兵士たちは食事は摂ったか?」


「はい、ほぼほぼ終えました」


「そうか… アズディニ、疲れたであろう 食事を摂って休め」


「はっ! そうさせて頂きます」


「・・・・・・手が全然足りんな、、、」


 ノアは宿屋へ行く


「ティセ、お前の使役する3人を貸してくれないか?」

 ※正確には、ウィッチはティセでなく【ハルヨシ村】のレイリアンの眷属


「いいですよ! 今、呼んできます」


 ティセは3人連れて来た


「この中で、一番強いのは誰だ?」


「う~ん、やっぱり『あらくねーさん』かな?」


「では、彼女を『西門』の警備に就けたいのだが良いか?」


「はい!」


「皆6時間警備をしてくれ それで… 彼女を北門で 彼女は南門だ…

 今警備してる者が驚くので、人間の姿で行ってくれよ」


「じゃあ、『あらくねーさん』は西門の警備ね

『ウィッチ』は北門よ 『エンジェルちゃん』は南門だって

 みんなお願いね!」


「ハイ、ご主人様!」「侵入者は私の魔法で殺しますわ」

「は~い♡ 行ってきま~す♡」


「みんな~ ちゃんと『警備の交代で来ました』って言うのよ!」


「ハイ」「はい」「は~い」


「ティセ、助かった ありがとう!」


「その為に連れて来たってのもあるし、大丈夫よ」


「人が全然足りなくてな… やる事が多すぎて、先ず何から手を付けるべきか…」


「領主様、王都こっちなら、すぐにお金に換えられるから、ごにょごにょ

 すれば稼げますよ! それで魔物を買えば良いのよ・・・

 確かケニーさんが、やってた筈よ・・・

 それと村でやってた狩りね 食料とお金稼ぎの両方できるし、ここでもやるべきよ

 お金さえあれば【ジュリア】に頼む事もできるし、物も買えるでしょ」


「そうだな… ここにいる兵士たちと魔物を、上手く割り振らないといかんな…

 分かった、明日兵士たちの仕事を改めて考えよう そして登録だな

 ティセはもう休みなさい また明日だ」


「はい、お休みなさい・・・の前に、

 領主様、今・・・困ってる事って何かあります?」


「金に関しては、左程だな・・・ 人手が足りない事と… 食料だな」


「(お金は多分ダメだし人も・・・ 食料か・・・ これはいけるかも)」


「ティセ・・・ どうしたのだ?」


「あのう・・・ 今後、食料が困らなくなったら、どうです?」


「食料が困らなくなったら・・・ それは助かるな・・・」


「え~と・・・ 500万なんですけど・・・」


「!?500万だと・・・ また何を考えているのだ?」


「ほっほっほ~ 500万で今後食料に困らなくなる・・・

 凄い話じゃが、500万分の食料を買うのなら、

 数年分の備蓄の料じゃぞ」


「あのね、食料にだけ限った話じゃないんだけどね・・・色々と」


「ティセ、全然話が見えてこないぞ」


「(ここは商人スキル出すしかないな・・・

 レベル10:お願い レベル25:交渉 レベル42:商談 これで…)

 とにかく便利なスキルだから、ある内に買っちゃわないとね・・・」


「よし、買いに行こうか」


「お主… 何かやられたのかのぅ・・・?」


「じゃあノートンさんは、ケニーさんを呼んできて ここで待ってて

 それと… 100ヨー硬貨1枚と、乱玉1個持って来て」


「あぁ分かった」


「私はギルドのお姉さんを呼んできます おじいさんも、ここで待ってて」


「あぁ、待っとるよ」


 ティセ、ノア、ギルド職員2名はギルドへ向かった

 送魔鏡を操作し、お目当ての商品を購入した -500万ヨー


「ティセ、これがあれば食料は困らなくなるんだな?」


「はい! これから宿屋に戻りましょう」


 4人は宿屋へ戻った


「じゃあ領主様、食料はどこにありますか?」


「・・・あっ! 確かあの家に集めさせたな・・・」


 ノアの案内で、一同食料を保管した家に向かう

 到着したティセは、スキル書を使う

 部屋の中央には、食料が積み上げられていた


「ちょっと待って下さいね~ 準備しますから」


 ティセはノートンから、100ヨー硬貨と乱玉を食料の上に乗せる

 ティセは『ストレージ』から『マジックバッグ』と『ゴミ袋19P』を、

 ノアからは長剣を受け取り、食料の上に乗せる


「良いですか??? やってみますよ~」


 ティセは両手をかざし、スキルを発動する

 食料等を積み上げた山の上方に出現した魔法陣が、

 ゆっくりと降下して地面に接触して定着した


 まばゆい光が、積み上げた食料の山を包むと分裂し、

 全く同じ山を作り上げた


「どうですか? 元の山と同じ物ができました!」

 

 一同唖然としている


「ティセ・・・ これはどんなスキルなのだ?」


「これはレアスキル『複製』です 全く同じ物を作れる能力です」


「これはたまげたわい! 何でも増やせるのかのぅ?」


「おじいさん、良く見て! お金と乱玉はできてないでしょ

 それ以外の物はできてるけどね」


「ティセ… 私の剣も、全く一緒だ 傷まで・・・」


「このスキルはね、1日に3回までできるんだって

 でも2回目は今の半分で、3回目は半分の半分だってさ」


「お嬢様、コレは何でございますか?」


「あぁこれは『マジックバッグ』って言って、何でも10個入るんだってさ

 ケニーさんにあげる」


「お嬢様… グスン ありがとうございます!」


「これを肩に掛けて、開いてみて 何か入ってる?」


「・・・ごみぶくろ?と、がそりん20りっとる?が4つ、入ってます」


「こっちの『マジックバッグ』にも、ゴミ袋とガソリン20リットルあるから、

 良し!実験は成功! 領主様、おじいさん・・・ おじいさんは知らないんだ

 私の商人スキル『ストレージ』みたいに、『マジックバッグ』は収納できるの

 それでね、その中に物を入れといて『複製』をしたら、

 中に入れといた物も『複製』できたって事なの 凄い発明でしょ?」


「ティセ、と云う事はつまり… 食料の山も『複製』できた

『マジックバッグ』も『複製』できた

『マジックバッグ』の中身も『複製』できたって事だな!」


「そ~ゆ~事 だから『マジックバッグ』に入れて『複製』すれば、

 たくさんの物が『複製』できるってのが、証明できました

 なので明日、『マジックバッグ』を買い占めますけど・・・」


「あぁ、良いぞ! それで物に困る事は無いからな」

 

 一同は仮の食糧庫を後にし、宿屋へ戻った


「みんな、何か増やしたい物があったら、言ってね」


「ティセ、『マジックバッグ』は、凄く便利だ・・・

 一般の兵士まではムリだろうが、役付きには持たせた方が良いだろう?」


「それなんだけどね、ケニーさんたちの『ワイバーン隊』に、

 お願いしようかなって考えてたの」


「ケニー達にか? 一体何をだ?」


「前に・・・ 初めて【ジュリア】のエミリーさんが来た時の事なんだけど、

 あの時に『複製』や『マジックバッグ』の事を聞いたの

 その時に、リフターはレベル25で『インベントリ』ってスキルを覚えるの

 その『インベントリ』ってスキルは、10個収納できるんだって

 だから『ワイバーン隊』のみんなに『リフター』になってもらおうかと

 思ってたの・・・」


「なるほどな・・・ 『リフター』なら兵士の業務でもレベルはあがりそうだ

 しかし… 基礎的な魔法や簡単に上げられる商人… 選択肢が増えて困るな…

 フェレンレン様、どのような… 育成方法がよろしいだろうか?」


「領主殿の兵が約200 こちらで加わったのが約50ほどか・・・

 物を持たせる為だけなら、リフターはあまり意味がないよ

 それこそ『マジックバッグ』を持たせれば良いんだから

 娘が言ったように、ワイバーンの連中はあっても良いかも

 空を飛ぶ連中だから、数多く物を持てるってのは魅力だよ

 一般兵は、戦力として考えるのではなく、コストで考えた方が良い

 極端な話し、レベル10とか20とかで次の職・・・

 そうすればコストの高い魔物を使役できるだろう

 その方が、相手は怖いんじゃないかな・・・」


「そうか…コストで考える(ティセの言う通りだ…)そして魔物を使役… 確かに」


「しかし儂らの平穏な日々は、いつになったら来るんだろうなぁ・・・」


「…領主様、私がいた世界でも昔『武士』とか『侍』って言う戦士がいたのね

 だけど時代の移り変わりで、段々と必要としなくなって、いなくなったの

 兵士のような『自衛隊』ってのはあるんだけどね・・・

 ここでの戦争も、今後変わっていくと思うのね 魔物を使った戦いに…

 人間の被害を減らすなら、魔物を戦わせれば良いけど・・・

 家族になった魔物が死ぬ事だってありえるワケだからね

 【ジュリア】のように、相手の国が攻めてこないような強さを持てれば、

 一番良いのかも知れない

 私だって死にたくないし、みんなにも死んでほしくないの・・・

 その為に私… お金いっぱい稼ぐから…」


「あぁ、ティセも死なせないし、みんなも死なせない・・・

 ティセがもしいなかったら、みんな死んでいたんだ…

 だが生きてる・・・ あそこに街を、新しい国を作るんだろ?」


「あそこに街って… 一体何の事かのぅ?」



 次回  第52話 王都編『実験』




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