第47話 本分

 ノアは、『生まれ変わる王国の盟主になって欲しい』と、

 ラディアーガ卿へ提案するが拒否されてしまった

 逆に『お前が立て!』と諭されたノアは・・・


「何と申されるのか・・・??」


「だから、これは簡単な話だよ・・・ お前が立て!!!」


「!?」


「お前が立ち上がり、皆を纏めるのが一番だと言っている…」


「そのような事はございません…」


「お前が居なければ… 私は既に、この世には居らぬであろう・・・

 だが幸運にも、今も尚生きている・・・ お前のお陰ではないか!」


「それは… ティセの… ティセの献策があっての物実ものざねでございます」


「そうかも知れぬ・・・ 実際はそうであろう…

 あのむすめには地頭があり、お前にはそれを実行する行動力早さがある

『御姻環』の件もそうだ 

 だから私は生きている… 残念ながら私には、地頭や行動力そんなものは無いのだよ…

 それが『時代に即してない』と言った理由なのだ・・・

 それらを以てしても尚『無理』と言うのであれば、もう何も言う事は無い・・・

 いや… 腰抜けだとか無責任だとか、わめき散らすかもな…

 そうなれば、ただ飲み込まれて消えてゆくだけだ・・・

 さあ、決断するのだ… 立つのか立たないのか・・・ どちらだ!」


「・・・・・・はっきりと言わせてもらえば、正直荷が重すぎます…

 即答は致しかねますが、他の者と相談し、善処いたします・・・

 その暁には、閣下よりの御助力を… 何卒賜りたいと存じます…」


「まぁその返答なら、ほぼほぼ確定であるな…

 お前が立ってくれるのであれば・・・

 私は、、、足元を支える土台となり、北方への盾となろう・・・」


「分かりましたが… 飽く迄も『善処』でございますので…

 私は一度王都へ戻ります」


「一つ頼みがある・・・」


「何でございましょうか?」


「ベネディアード閣下の仇を討ちたい…のだ…」


「お気持ちは重々承知しております… しかし、全てが整っておりませぬ…」


「いや… 急かす訳では無いのだ… 月日つきひは問わない・・・

 閣下の仇を、、、『グラ・ディオルカ』に鉄槌さばきを下したい、ただそれだけだ」


「分かりました… そうできるように、努力致しましょう」


「こちらも兵は少ないが、少し回そう 明日出発させる それでは王都を頼むぞ!」


「ありがとうございます それでは失礼しました」


 王都へと戻ったノアとケニーは、酒場へ向かう


「只今戻ったぞ・・・ 宰相閣下!? どちらかで難を逃れておられましたか?」


「そうなんじゃ… 領主も戻った事だし、皆聞いてくれ・・・

 儂が【ハルヨシ村】を出てから一度王都を経由し、北方へ向かった頃の話しじゃ

【ビザルラス】では、『グラ・ディオルカ』の動きが少々活発でな、

 近々に攻めてくると情報があったんでな、王様に報告をしたかったんじゃが・・・

 王様の周り取り巻きに煙たがられてのぅ、お目通りできなくてのぅ

 仕方なく西方へ向かうが、こちらはこちらで、きな臭い情報を手に入れたんじゃ…

 再度王様の元へ伺うのじゃがの、王宮に現れた時は『容赦せん』と言われてな…

 其奴等が王様に、ある事無い事吹き込んだのであろうがな…

 それから儂は、で寝泊りしてたんじゃが、昨日の夕刻じゃ・・・

 突然『オルキニース』の軍勢が攻めてきたんじゃ・・・

 備えも何もない状態で、こちらが勝てる見込みなんてものはのぅ、

 小指の先ほども無いのは、火を見るよりも明らかじゃった

 そこで儂が考えたのは、『送魔鏡』を守る事じゃった

 奴らに使わせない事で良し、お主らが取りにくる事が最も良しじゃった…

 敵方は魔物を使い、街を襲わせた・・・ 

 正確には『魅了チャーム』で、民たちは操られたんじゃ・・・

 儂はギルドの入り口を破壊しようとしたのじゃが、ギルドに居合わせた御仁がの、

 外から外観を『偽装フェイク』で作り変えると言うんじゃ 高度な魔法じゃ!

 その時に敵方はアンデッドを解き放ったのじゃ・・・

 その御仁がの、アンデッドは匂いや音、呼吸に反応すると教えてくれたんじゃ

偽装フェイク』の内側を『氷壁アイスウォール』で固めたら、念の為の結界じゃと…

 それのお陰で助かったわい!」


「その御仁はどうなされたのですか?」


「用があると言ってな、どこかへ行ってしまったんじゃ・・・

 名前は聞いたんじゃがのぅ… 確か・・・『スカーハ』と、言ったかのぅ?」


「そのお方は『スカアハ様』ではございませぬか?」


「すまぬが… そのような名前だったとしか覚えてはおらぬでな…」


「恐らく私も、その方とお会いしました

 旅をしている女性で、近い内に『王国』は亡ぶと教えられました

 その御仁のお陰で、今日に至るまで、無事に備える事ができました」


「そうであったか! その予言者に助けられたのぅ」


「兎に角閣下がご無事で何よりでした… 私は只今【レビド】より戻りました

 王都への侵攻と時を同じくして【レビド】より救援の要請がございました

 ただ前もって、『鬼』を70ほど預けておりましたので、

 落ちる心配は無かったのですが、念の為安否の確認をして参りました」


「奴はどうじゃ? 元気にしておるかのぅ?」


「はい、『グラ・ディオルカ』の軍勢を、鬼20人で破ったそうでございます!」


「そうか、そうか! それは良かったのぅ!!」


「閣下、問題は山のようにあるのですが・・・ 先ずは、王様の件です

 現在、王様の行方は知れませんが、王妃様曰く忘却症(認知症)であると

 見つかったとて、今後国事に携わる事は適いません

 よって私は、ラディアーガ閣下に『王権』を取り、立ってくれと願いましたが、

 拒否されてしまいました…

 仕舞には私に立てと冗談を云う始末でございます

 閣下にも説得に加わってもらえないでしょうか?」


「何故じゃ?? お主が立てば良かろう!」


「な、、、閣下まで何を申されるか!」


「奴は… 人としては良い 人としては良いが、『王権』となれば、話は別じゃ

 お主は敵を破り、ここまで来たのであろうが、奴は来なかった…

 何故来ないのか… 知ってて来なかったか、ただ情報が無く来なかったのか…

 知ってて来なかったのであれば、それはそれで問題じゃ・・・

 だがのぅ、情報が無く来なかったのであればじゃ、それは仕方ない事じゃろ

 恐らくだが、王都が落とされた事を知らなかったではないかのぅ

 王都の情報が、もしも入っていれば、助けに来たじゃろうからな・・・

 情報を仕入れる能力と、その先の心配をする気持ちじゃ!

 お主のその『心配する気持ち』があるからこそ、敵を打ち破り眠りもせずに、

 寡兵であっても、助けに来てくれたのであろう!

 それによって8人が救われた訳じゃからのぅ

『機を見るに敏』とは、この事を云うのであろう

 人にはのぅ、それぞれ『本分』と言うものがあるのじゃ…

 奴は己の本分を分かっておるからこそ、お主を立てたいのであろう

 それなら儂も同じじゃ!」


「閣下… この話はまた今度に致しましょう・・・

 人数は不明ですが、【レビド】より明日、兵士を派遣してくれるそうです

 もう4,5時間もあれば、我が方も後続が到着するでしょう

 その後続が『オルキニース』の捕虜、約1500を連行して参ります

 問題はその捕虜たちを、どのように扱うのか… 何か策はございますか?」


「ふむぅ~、捕虜が約1500とな・・・

(通常なら身代金の要求をするか、奴隷として使役するのじゃが、数が多すぎる…

 扱う側より、何倍も多い奴隷なんてな… 争いの火種でしかないわな…

 さて、どうしたものかのぅ・・・)

 お前さんなら、1500の捕虜をどう扱うのじゃ?」


「えっ!? 私!捕虜の扱いでしょ? そんなの、あるある中のあるあるよ!

 ありありのアリーヴェデルチじゃない! もちろん・・・・・・」


「何じゃと!?」



 次回 第48話 王都編『両面』

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