第48話 両面

 捕虜の扱いに悩むノアは、王国宰相テリーに相談する

 テリーは、一般的には『身代金』の要求か『奴隷』として使役すると考える

 身代金の要求をしたところで、支払うとは限らず、額も思ったほどはいかない

 奴隷として使役するには、人員が少ない陣営に対して、捕虜の人数が多すぎる

 金銭も労働力も欲しい現状の中、ティセの意見を聞いてみた・・・


「お前さんなら、1500の捕虜をどう扱うのじゃ?」


「えっ!? 私!捕虜の扱いでしょ? そんなの、あるある中のあるあるよ!

 ありありのアリーヴェデルチじゃない! もちろんお金を頂くわ!

 国の争いに【ジュリア】は口を出さないんでしょ? ならそれが良いわ」


「(何じゃ… お前さんにしては普通の答えじゃな… )」


「ねぇおじいさん、捕虜の兵士さん1500人って、王国元はこちらの人じゃない?


「何じゃと!?」


「昨日、今日の事で会議をしてた時に、王都からバトラーさんが来たのよね

 その時のバトラーさんの報告がね確かこう言ったの・・・


 ヴァルガウス領領主マイヤーズ伯爵が、オルキニース王国に寝返りました・・・

 またその東方、王都直轄領モワベモタナが、サリヴァンに落とされました・・・

 オルキニース王国は、マイヤーズ伯爵軍を先鋒に、現在王都へ進軍中 こんな感じ

 マイヤーズ伯爵の家臣がサリヴァンなのよね確か…


 だとしたら、王都へ攻めてきたのがマイヤーズ伯爵軍で、

 王都を攻めてたマイヤーズ伯爵軍は、アンデッドの魔物を使った

 これって、マイヤーズ伯爵軍の中にはオルキニース軍が多少混じってたと思うの

【ハルヨシ村】に攻めて来たのはサリヴァンって人

 そのサリヴァンは村に攻めてきたけど、魔物は使わなかったって聞いた


 となると、サリヴァンが連れて来た兵士は【ヴァルガウス】か【モワベモタナ】の

 兵士って事になるわ 普通は自分の所の兵士で【ヴァルガウス】よね

 仮にオルキニース王国の人が加わっているなら、サリヴァンじゃなく違う人が

 BOSS… なんて言うの? 大将… トップんんん 言い方が分からない・・・

 なってたと思うのね しかも魔物を使わなかった 多分みんな王国の人よ」


「・・・仮にじゃ、捕虜が王国の者だとしたらじゃ、それをどうするのじゃ?」


「ん~ん、、、私が凄い悪い奴になっちゃうけど・・・ 考えたのはね~

 捕虜の人たちに、『オルキニース』に賠償請求したら、

 捕虜は要らないし好きにしろって言われたと言うの

 多分だけど、お金を寄越しなさいって言っても、向こうは出さないわ

 だって自分の国の兵士じゃないから だから先でも後でも良いんだけどね

 でね、家族が居ない人は、すぐにこちらにきてくれるはずなの

 家族がいる人は【ヴァルガウス】か【モワベモタナ】に住んでるでしょ

 だったら、2つ取っちゃうか、返してもらうかどちらかね

【モワベモタナ】なら元は王国の直轄領で、この前取られたワケでしょ?

 問題は【ヴァルガウス】の場合でね、マイヤーズ伯爵って人の兵士だから…

 返してもらえれば一番楽で最高なんだけど、そうはいかない場合は取っちゃうの

 捕虜の兵士さんに、【ヴァルガウス】を魔物で攻めるって言うの

 だけど、君たちの家族がいるから、何とかしたいとかね、適当に

 それで、近い内に攻め手(こちら)がくるから、家族や友人知人を連れて、

 王都に逃げて来いって指示するの

 もしこちらに来てくれたら、【ヴァルガウス】の平均的な家賃で、

 王都に住まわせてあげるの もし戻らなければ、戦う覚悟があるんでしょう」

 1500人丸々は無理だとしても、半分以上はこちら側になると思うの


「とても凄い作戦じゃな… そんなの誰も思いつかんぞ・・・」


「ティセの作戦は外れた事は無いが、今回のはなぁ・・・」


「『オルキニース』は、王都の人間を殆ど全員連れて行ったわ

 だから王都はすっからかんな筈だからって、油断してると思うの

 何で落とした王都を捨てて帰るの?

 普通攻めた場合って、そのお城や土地が欲しいんでしょ?

『オルキニース』が欲しかったのは、王都じゃなくて『人間』じゃないかな?

 使った魔物が『アンデッド』ってのも、そんな理由な気がするの

【ヴァルガウス】や【モワベモタナ】の領民が知ってるのか知らないのか

 分からないけど、きっとその内、食べられてしまうわ」


「閣下、騎士サリヴァンを連行した時に、

 奴は『オルキニース』は、バケモノだと言っておりました…

 私は、『オルキニース』の国王がバケモノじみてる

 つまりそれだけ強者であると受けとったのですが、

 実際は、本物の化け物ではないかと今は考えております」


「このご時世じゃ 魔物が王になったって、不思議でもないがの

 どうじゃろ、このに、従ってみようじゃないか!」


「閣下、もうじき捕虜たちが到着しますので、其奴等にまずは聞いてみましょう」


「うむ、そうじゃな… 領主、それまで少し休んでおれ!」


「そう致します、、、 ケニー、お前も休め!」


「はっ!」


 ノアとケニーは、仮眠を取りに2階へ行った


「おじいさん、ギルドを守ったんでしょ? 『送魔鏡』も使えるのかしら?」


「大丈夫じゃろ 我々には、それが必要不可欠じゃからのう 死守したぞ!」


「さすがねおじいさん! 【トーラ】って住民は何人だったの?」


「ここはのぅ 約25,000人前後で、兵士が大体5,000人くらいじゃ」


「もっと多いように思ってたけど、3万人くらいなのね…

 3万人でも、あそこじゃスカスカよね・・・

 もっと人を集めなくちゃいけないわね…」


「何の話しをしとるのじゃ?」


「おじいさん、【ヴァルガウス】や【モワベモタナ】の住民は何人?」


「【モワベモタナ】は1,700ほどで、兵士は300くらいか…

 【ヴァルガウス】は3,500くらいじゃが、兵士は分からんのぅ・・・」


「全部合わせても5,500人ちょっとなのね… 全然少ないわ…

 王都を仮住まいにして… ブツブツ その後あっちに移住させて…ブツブツ」


「住民の話しばかりしてるが、お前さんは最初に『お金をもらう』と言ったんじゃぞ

『オルキニース』に賠償請求しても、自分の兵士ではないから払わんとな…

 それで一体どうやって、金を取るんじゃ?」


「それはね、『何で落とした王都を捨てて帰るの?』って聞いたでしょ?

【ハルヨシ村】に『オルキニース』が攻めて来た時に、領主様はこう言ったの

『グラ・ディオルカ』と『オルキニース』は、繋がっているって…

 よくよく考えたら、『オルキニース』は人間が欲しかったのは分かってた

『グラ・ディオルカ』は土地が欲しかったって考えると辻褄が合うわ

『オルキニース』は王都を空にして、人間だけ連れて行った・・・

『グラ・ディオルカ』は【レビド】を落とせなくて、王都には来れなかった


 これは、2つを同時にやらなければいけないので大変なんだけど…

『グラ・ディオルカ』は、近い内にまた【レビド】に攻めてくるわ

 もしかしたら【レビド】は素通りして王都にくるかも知れない・・・


 それと『オルキニース』は、また人間が必要になったら、

【ヴァルガウス】や【モワベモタナ】の住民が連れて行かれちゃうし…


 捕虜の兵士さんの家族を避難させつつ、『グラ・ディオルカ』に対応して、

【ヴァルガウス】と【モワベモタナ】の住民をどうやって守るのか、超ムズいの…


 だけどここは思い切って・・・・・・

 領主様に・・・・・・ やってもらって・・・・・・ かな?

 それでお金もらいましょう!」


「お前さんが悪魔のようじゃぞ・・・」



 次回 第49話 王都編『布告』

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