第45話 懺悔

 ハルヨシ村でサリヴァンを退けたノアたちは、王都の救援に向かった

 到着した王都には人っ子一人居らず困惑する一同

 王宮の捜索で発見されたのは、地下牢に閉じ込められた王妃だった

 開錠を頼むノアを拒否するティセ 王妃は謝罪し、王様を語る・・・


「・・・・・・領民の模範となる王たる者が… 本当にすみません…

 許して下さい… ううっ 王様は… 王様はね・・・・・・

 忘却症(認知症)なの…」


「!?忘却症でございますか? しかし… 王様はまだ五十手前・・・

 忘却症(認知症)となるに、若いのではございませんか?」


「歳は関係無く… なる事もあるようです・・・ 

 あれは、2年ほど前… 王様の行動と記憶が徐々に合わなくなり、

 ザースマ卿の紹介で、薬師と祈祷師を【オルキニース】から招きました…

 それからというもの、ザースマ卿や【オルキニース】の者たちを重用し、

 近しい者を遠ざけたので、其奴らの専横を許す事になってしまいました・・・


 他国と戦争をしても連戦連勝、領土は果てしなく拡大、じきに世界を統一する

 ありとあらゆる嘘を吹き込み、気持ちよくさせ、忘却症(認知症)と相まって、

 魔物を使い堕落させました・・・

 やがて家族の記憶も曖昧になり、言葉も用いなくなり、遠ざける事になります…


 このままでは王国は飲み込まれてしまうと思い、

 ベネディアード卿に『王権』を委ねようと、王様に申し上げましたが…

 この通り、私は檻に繋がれてしまいました・・・


 他の記憶は全て消えても… 王様は、王である事を決して忘れなかったのです…

 それさえ忘れてくれれば… なぜ忘れてくれなかったのかと・・・ううっ…」


「王妃様… 何故、、、何故もっと早く… 御相談なされなかったのですか!

 宰相閣下やベネディアード閣下にでも… 打ち明けてくれれば良かったのでは

 ございませんか!・・・」


「・・・今となっては… そう感じています… 遅過ぎですね・・・」


「それでは… ベネディアード閣下は無駄死にではございませんか!」


「!!!? ベネディアード卿が死んだと・・・!?」


「はい・・・ 先般『グラ・ディオルカ』との戦闘で【ビザルラス城】は落とされました…」


「・・・・・・そんな…」


「もうこの国には・・・ラディアーガ閣下と私しか残っておりません・・・」


「うっ・・・ううううっ・・・」


 黙って話を聞いていたティセは『あらくねーちゃん』に指示し、糸で鍵を開けた


「ティセ… 許してくれたのか??」


「私は天邪鬼だから・・・ 王様は病気だったし、ザースマに操られてたんでしょ?

 仕方ないってワケじゃないけど…

 領主様が言う通り、おじいさんに相談してれば良かったのよ・・・」


「お嬢さん… 本当にごめんなさい・・・ とても後悔してるわ・・・」


「王妃様、取り敢えずここを出ましょう

 王宮は広すぎるので、トーラの酒場へ向かいます」


 王宮を捜索していたノア等は表に出てケニーと合流し酒場へ


「クロノ、王妃様を2階の部屋へお連れして、食事を頼む」


「はっ!」


「ノートン、私とケニー・・・・・・


 指示の途中でエマから、南門にアルとバトラーが到着したと報告が入る


「エマ、2人をここへ」


「はっ!」


 アルとバトラーが酒場に到着した


「アル、これより少し食事を摂ってから、【レビド】へ向かうが大丈夫か?」


「はっ!」


「ノートン、私とケニー、アルは、食事を摂った後、【レビド】へ向かう

 ここに残った者は、監視、食事、休憩を順番に取らせてやってくれ

 鬼とアラクネーもだ! 少ない人数で大変だが頑張ってくれ

 あと9時間10時間ほどで後続が来る 頼むぞ!」


「はっ! 何とかがんばります!」


「ケニー、もう一頭のワイバーンに、アルを乗せてやってくれ

 あと… サリヴァンも連れて行く」


「はっ! 畏まりました!」


「アル、馬は捨て置け ワイバーンに乗って行くのが早いのでな」


「はい、私に乗れるのでしょうか・・・?」


「なぁに、しがみついていれば、すぐに着く」


「・・・・・・」


 食事を摂った3人は小休憩を取り、出発した

 あっという間に【レビド】に到着した


「閣下! ご無事でしたか?」


「おぉ! そうなんだ、何ともないぞ 敵がな【レビド】を囲んだのだ

 それでお前が寄越した『鬼』たちを放したんだよ・・・

 1時間も経たない内に、其処ら中屍の山だ!

 しかも『鬼』は20人だ! あいつらはだな!」

 王都の援軍はやはり来ないが… だがあいつらがれば鬼に金棒だな!」


「その事なんですが、お話があります・・・

 取り敢えずその前に、此奴(サリヴァン)を、牢にぶち込んで頂きたい」


「誰か! その者を牢へ!」


「はっ!」


彼奴あやつは何者だ?」


「名は、騎士サリヴァン 『ヴァルガウス』領領主『マイヤーズ伯爵』の

 家臣だそうです

『グラ・ディオルカ』の軍勢が【レビド】へ進軍と時を同じくして、

 王都と我が領内【ハルヨシ村】へ『オルキニース』の軍勢が侵攻して参りました

 我が陣営はサリヴァンの軍勢を打ち破り、王都の救援に向かいました

 しかし… 王都には誰一人居らず、つい先ほど王宮の地下牢にて、

 王妃様を保護致しました」


「な、なに、、何故だ?・・・ 王都が落とされたのか!?・・・」


「落ちた… 確かに落とされたのでしょうが、王妃様以外誰も居ないのです

 王都を現在も捜索中ですが、見つけたのは王妃様だけです…」


「少しおかしいではないか…

 王都より西方は、王都直轄の『モワベモタナ』がある

 更にその西には『マイヤーズ閣下』の『ヴァルガウス』があるではないか

『オルキニース王国』は、更にその西だ!

 そんな遠方の国が、何故王都やお前の領内へ軍勢を出せるのだ?」


「それが・・・『マイヤーズ閣下』は『オルキニース』に降ったようです

 そして閣下の家臣、騎士サリヴァンを『モワベモタナ』に遣わし、

 落としたそうです・・・」


「なんて事だ・・・ 人とはそんなに簡単に裏切れるものなのか・・・」


「王国の3つの拠点が、同時に襲われました・・・

 よって、『グラ・ディオルカ』と『オルキニース』は、手を結んでる公算は大きいのではないかと…」


「なるほどな… して、王様はどうなんだ!」


「王様は行方が知れません サリヴァン曰く、連れて行ったのでは…と」


「どうして… 何故こうなった!! 何なんだ一体!」


「もう王国には… 閣下と私しかおりません・・・」


「・・・・・・クッ!!!」


 ノアは王妃から聞いた言葉を、ラディアーガに正確に伝えた


「王様は忘却症(認知症)であったと・・・

 援軍要請も其奴等に、握り潰されたのであろうな・・・」


「・・・・・・」


 一方その頃、王都では

 交代で休みながら、生存者を捜索していた

 地上部隊のライズ、デイルは、ある建物に『違和感』を感じていた


「なぁデイル、ここって… 何かおかしくないか?」


「あれ… 何だろう?? 変えたのかも知れないぞ…」


「変えるって… 横も裏も無いだろう!」


「そうだな・・・」


 2人の前にノートンが現れた


「ライズ、誰か発見したのか?」


「あっ、ノートン様 いえ… そうでは無いのですが・・・」


「どうしたのだ??」


「ギルドの入り口が・・・ 無いのです・・・」


「!?」



 次回 第46話 王都編『偽装』

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