第44話 感情

 騎士『サリヴァン』に対し、圧倒的に勝利した ノア陣営

 捕虜となった『サリヴァン』は、マイヤーズ伯爵が降った『オルキニース』を

『バケモノ』だと評す その真意とは・・・


「ノア閣下… 『オルキニース』にゃあ、逆らわない方がいいぜ…」


「・・・一体何だと言うのだ?」


「ありゃあ… 本物のバケモノだ・・・」


 ノアはサリヴァンの首根っこを掴み、引きずり倒す

 兵舎の外に並べられた、敵軍の死体を前に、酷く乱暴に問い質す


「貴様らのつまらない争いに巻き込まれた兵士たちは、このように簡単に死ぬのだ!

 それを何とも思わないのか? 何も感じないのか?」


「閣下・・・ 我々は『上』の命令で動く 貴方もそうだろ?

 やれと言われればやる、それだけの事だ」


「屁理屈に付き合うつもりは無い! これから王都へ向かう 貴様もな

 誰か! 誰か居らぬか?」


「はっ!」


「グレーイズ、役付きをお前を含めて5人以上と、

 ノートン、ケニーらワイバーン部隊、地上部隊の5人だ なるべく早く頼む」


「はっ!」


 20分少々で集まった


「レイリアンは私の代行をせよ 村を頼む!」


「はっ!」


「グレーイズ、アズディニ、兵100を率い、捕虜1500を王都へ護送せよ

 地上部隊の鬼を15人付ける 休み休みで良い 逃げる者は殺して構わん

 大変な行軍だが頼むぞ!」


「はっ!」「はっ!」


「フォランダ、セルトーア、この者たちを手厚く弔ってやってくれ

 今日狩りは休みで構わんので、鬼たちを使え」


「はっ!」「はっ!」


「みんな、休む間もなく申し訳ないが、我々はこれより王都の救援に向かう

 レイン、エッジ、クロノ、ライズ、デイル、お前らの鬼を各自3人、

 都合15人は、捕虜の護衛に回してくれ

 それぞれの鬼とアラクネー1人ずつは、空いているワイバーンに乗らせる

 レイン、エッジ、クロノ、ライズ、デイルは、ワイバーン操者に同乗せよ


 ワイバーン隊は今言った通り、片方は魔物に、操者は人間は同乗させよ

 ラナ、【レビト】のアルと、王都のバトラーを連れて来てくれ」


「はっ!」


 ラナが、アルとバトラーを連れて来た


「アル、バトラー、これより我々は王都へ向かう

 我々は空から行くが、お主たちは済まないが馬で向かってくれ」


「はっ! それでは馬で向かいます」


 ティセが起きて、現れた


「領主様、何処へ行くの?」


「これから王都へ救援に向かう」


「私も… ついて行っていいですか?」


「・・・戦闘中は決して近づかないのであれば・・・いいぞ」


「やった! 馬を連れてきます」


 ティセが馬を連れてきたが、3人で現れた


「ティセ… 3人で行くのか?」


「はい! エンジェルちゃんと、あらくねーさんです」


「そ、そうか、良かったな!」


「ノア様、此奴は(サリヴァン)どう致しますか?」


「ケニー、お前のワイバーンの足に括り付けたらどうだ?

 ティセ、アラクネーの糸の強度って強いだろ? どうだと思う?」


「多分大丈夫じゃないかな? 知らないけど」


「ではケニー、ぶら下げて行ってくれ」


「はっ!」


 こうして各自出発した

 約1時間半ほどで王都手前まで来た所で、少し先行していたケニーが戻ってきた


「ノア様、何か様子がおかしいです 南門は開け放たれていますが・・・

 誰もいません 門兵も敵兵も見当たりません」


「敵兵もいない・・・ ケニーは南門で降り、他の者に北門、西門へ向かわせろ

 周囲を確認し何も無ければ、全ての城門を閉じよ」


「はっ!」


 ワイバーン隊は2部隊に分かれ、北門、西門へ向かった

 ノアたち『有翼のユニコーン』が南門に到着し、内側に降りた

 ケニーは南門を閉じていた


「確かに誰もいないな・・・ これは一体どうしたのだ?

 サリヴァンよ、領民たちをどうした? どこへやったのだ?」


「私は知らない… だが、連れて行ったのだろうな…多分」


「連れて行っただと! 『オルキニース』へか?」


「だから私は知らないのだ・・・」


「ケニー、ワイバーン隊3人に各門の見張りをさせよ

 もう一人は王宮の上から全体を監視させよ

 南門は、じきにアルとバトラーが到着する

 アルはそのまま【レビド】へ向かわせよ

 かなり時間が掛かるが、5人の鬼に家探しをして、人が残ってないか確認させよ

 私たちとアラクネー5人は、王宮へ向かう

 お前は王宮の前で待機だ サリヴァンもそこへ」


「はっ! 伝えて参ります」


 ノア、ティセ、ノートン、地上部隊の5人、アラクネー5人、

 エンジェルちゃん、あらくねーさんらは、王宮へ向かった


「レイン、エッジ、クロノ、ライズ、デイル

 それぞれアラクネーと1組になって、各部屋を探れ

 念の為、見つけた者はアラクネーの糸で縛れ」


「はっ!」「はっ!」「はっ!」「はっ!」「はっ!」


 小一時間王宮の中を探したが、誰一人として見つからなかった


「ノア様、やはり誰もいません」「ノア様、こちらも全くおりません」


「ノア様ーー!地下牢に、年配の女性が一人… 投獄されておりました!

 鍵の在処が分からず、どうしたものかと…」


「ライズ! 地下牢だな? 案内してくれ」


「領主様、私のあらくねーさんなら、何とかなるかも」


「そうか… では向かおう」


 一団は、王宮地下牢へ向かった


「ノア様、こちらです」


「うむ、こちらか… 其方無事であるか? 声は聞こえるか?」


 横になっていた女性が、力弱くやっとの思いで頭を上げ、こちらを見る


「!?… 王妃様? 王妃様ではございませぬか?」


「??その声は… ノア卿?? 貴方はノア卿ですか??」


「はい!! 私はノアでございます!! なぜこのような所に…

 ティセ… 開けてくれ」


「私は… 開けない! 絶対に開けないわ」


「何を言ってるのだ・・・! こんな時に、一体・・・ そうか…

 ケインとギルドの職員の事だな?」


「そうよ・・・ 2人を殺した王様の奥さんでしょ! なぜ助ける必要があるのよ」


「それは… それはな… 王様だ 王様が悪い… 悪かった だが、王妃様は違う

 王妃様がやった訳ではないだろう… なっ!」


「ノア卿… 王様が… そのお嬢さんに、何かとても悪い事をしたのね・・・」


「はい… このティセが初めて王都へ来た時に、スリだと濡れ衣を着せられました

 ティセと宰相閣下、そして証言してくれた『ケイン』と言う衛兵の青年で、

 その容疑を晴らしました

 しかしその後、ケインとギルド職員が、反逆罪等の咎で死を賜りました

 正直に私もこれは、腹いせの報復だと思っています

 このはその出来事に、とても心を痛めているのです…」


「お嬢さん… ノア卿、本当に… 本当にごめんなさい う…うう

 領民の模範となる王たる者が… 本当にすみません… 許して下さい… ううっ

 王様は… 王様はね・・・・・・」


「!?」



次回 第45話 王都編『懺悔』

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