第42話 急使

 11月30日 夕刻 【ハルヨシ村】

 明日は毎月1日の換金の日 ノアらは【タカミ村】をスタンに任せ

 前日の今日は、【ハルヨシ村】にて待機し、明日に備える


「ノートン、それでは前回同様前乗りしてくれ

 昼前に到着するグレーイズら兵士50名と共に、ギルド前に集合

 私とティセが到着したら換金ののち、順次登録に移る

『乱玉』と『素材』は纏めたか?」


「はっ! 畏まりました! 『乱玉』と『素材』は既に纏めております」


「よし、では向かってくれ!」


「はっ!」


 ノートンは、一足先に『王都』へ出発した


「次にグレーイズだ!」


「はっ!」


「お前は、未登録の兵士50名と共に、馬車で翌朝出発

 昼前には到着するようにしてくれ 遅れるなよ」


「はっ! 大丈夫でございます」


「ティセ、今回は誰を『売主』にするのだ?」


「今回はちょっと考えてなかったから、領主様でいいかな?」


「私で良いのか? まぁ、向こうで考えよう… 次はアズディニ!」


「はっ!」


「お前は、明日の朝グレーイズたちが使う馬車を、8台用意してくれ」


「はっ!承知致しました!」



 ノア、ティセ、幹部連中は明日の会議を終え、少しまったりしていた時…

 ここから、とても長い一日が始まる・・・


「ノア様ー!ノア様ーー! 【レビド】より早馬でございますーーー!」


「【レビド】より早馬だと・・・ 早く通すのだーーー!」


 衛兵は、早馬の使者を招き入れる


「【レビド】より参りましたーー!、『アル』と申しますー!

 ノア閣下は居られますでしょうか??」


「私がノアだ、【レビド】より参ったと申されたが、

 ラディアーガ閣下に何かあったか?」


「はっ! 『グラ・ディオルカ』の軍勢が、現れました…

 王都へ援軍の要請と、その足でこちらへ伺いました…

 是非ともー、我が領内に援軍をーーお願い申し上げますー・・・!」


「よし・・・『アル』よ、落ち着いて聞いてくれ・・・

 閣下には70もの『鬼』を預けておるのでな、

 ちょっとやそっとの事では、落ちる事はないであろう・・・

 我が方には『ワイバーン隊』がるのでな、その者たちを遣わす

 今日はもう遅い、なのでお主は明日の朝、ここを出て向かうのだ!」


「ですが・・・しかし…」


「誰かーー!、ケニーら『ワイバーン隊』と、地上部隊の『5人』を呼んで参れ!」


「はっ!」


 暫くして、ケニーら地上・上空の部隊10名が兵舎へ集まった


「ケニー、【レビド】が『グラ・ディオルカ』の軍勢との戦闘になるようだ…

 お前たちは・・・」


『ワイバーン隊』に指示を出してるノアの声を遮るように、衛兵の声が上書きする


「ノア様ーー! ノア様ーー! 王都よりし…使者… 急使が参られましたー!」


「何事だーーーー!」


「王都より遣いで参りました、バトラーと申します…

 王都より西方、『ヴァルガウス』領領主『マイヤーズ伯爵』が、

『オルキニース王国』に寝返りました・・・

 またその東方、王都直轄領『モワベモタナ』が、

『マイヤーズ伯爵』子飼いの騎士『サリヴァン』に落とされました・・・

『オルキニース王国』は、『マイヤーズ伯爵』軍を先鋒に、現在王都へ進軍中

 王都より閣下へ、『急ぎ参陣せよ』との事・・・ 急ぎお支度を…」


 今度は王都よりの遣い『バトラー』の声を遮るように、声が響いた・・・


「ノア様ーーー!! ノア様ーーー! 大変でございます!!」


 その大声の主は、数時間前に王都へ向かった『ノートン』だった


「ノートン… いかが致した!?」


「ノア様… 一大事でございます… 」


「先ほど【レビド】から援軍要請と、王都より招集が掛かってな…

 ノートン、どうしたのだ??」


「はい・・・ 王都は既に包囲されております…

 しかも… 南門付近に別動隊を用意し、こちらに向かってきております!」


「進軍から間もなく包囲を終え、更にこちらへ向かっているのか・・・

 用意周到だな・・・ 恐らく『グラ・ディオルカ』と『オルキニース』は、

 繋がっているな・・・」


「ご名答、さすが領主だけあるね」


「フェレンレン様・・・居られたのですか?」


「さっきね… こんなに都合よく同時に起こるって事は、そう云う事だよ」


「フェレンレン様、どのように… どう… 何か策はございませぬか?」


「私は一線を退いた身 その為に訓練をしてたんだろ?」


 ノアは『攻めの戦闘』は幾度となく経験し、輝かしい戦果を幾つもあげているが、

『守りの戦闘』に関しては、未だ経験した事は無かった


「(小さな村と戦闘になるとは、向こうは考えてはいないだろう…

 と、なると・・・ 最初は… やはり話し合いで、降るのを待つ…

 だがこちらには、陸と上空の部隊が控えている…

 戦闘になったとしても、負ける事はないだろう・・・

 勝つ前提として、王都方面には1人も逃がしたくない いや全てを捕えたい

 その為には・・・ 敵方の包囲を・・・・・・ 良し…

 あとは、敵方の魔法と矢・・・ これをどうするか・・・)」

 ティセ… 大方作戦は決まった! ただ1つ・・・

 敵方の魔法と矢を何とかしたいのだが、何か策はあるか・・・?」


「・・・う~ん… それだけで良いなら、領主様… ごにょごにょごにょ」


「本当にそれで良いのか・・・? それで防げるのか?」


「はい!」


「よし・・・やってみよう! アル、バトラー、聞いた通りお主たちは戻れない

 なのでここのケリがついてからになってしまう

 済まないが、見守っててくれ

 レイン、エッジ、クロノ、ライズ、デイルはいるか!」 


「はっ! こちらに」


 ノアは地上部隊5人に、各人の配置を地図で細かく指定し、作戦を伝える


「エッジ、クロノ、ライズ、デイルの各隊は、それぞれ森に身を潜めよ

 エッジはここ、クロノはここ、ライズはここ、デイル、

 東の森はひらけておるので、やや南側のここだ

 エッジら4人は、ケニーの合図の段階では、そのままで待機だ

 上空のワイバーンが攻撃を開始し、敵の混乱が見られたら、

 ワイバーンを先頭に村を包囲するように、徐々に近づきつつ、敵を排除せよ

 森の奥に逃げようとする者は、殺しても構わんが余裕があれば捕らえよ

 レインは、北東と北西の森2手に分かれよ そして王都方面へ逃げる者たちは、

 逃がす事なく全て捕らえよ

 配置につくまでには、まだ時間はあるだろう、それまで少し休んでくれ」


「はっ!」「はっ!」「はっ!」「はっ!」「はっ!」


「ノートン、これに」


「はっ!」


「お前の見立てで、おおよそどのくらいの時間と兵力だろうか?」


「馬は十数頭と少なかったので… あとは徒歩でした

 私がここまで戻る時間と到着してからの時間を加味して、

 大体8時間程掛かるのではないでしょうか?

 兵力はおよそ2千かと…」


「9時間で2千か・・・ 

 アズディニ、ハルザート、お前たちは櫓へ上り『板木ばんぎ』を鳴らせ

 レイリアン、グレーイズは領民を伴い、坑道を抜け『向こう側』へ避難させよ

 アズディニは、兵士半数と坑道掘りの際、岩の撤去をさせてた『鬼』たちを使い、

『向こう側』で天幕を張ってくれ 全員分は無理だが、あるだけ全て持っていけ!

『向こう側』にも魔物はいるであろう 鬼と兵士らで領民を守ってくれ」


「はっ!」「はっ!」「はっ!」「はっ!」


「セルトーアとフォランダは、炊事場の担当を10人ほど連れて、

 食料庫からごにょごにょを持ち出し、掘りの内側はほどほどに、

 外には満遍なく撒いてくれ 門の直線状には特にだ!

 兎に角、村の周囲にやってくれれば良い できたら知らせろ

 狩りの『鬼』も使って良い そしてそれを4袋ケニーに渡してくれ」


「はっ!」「はっ!」


「ケニーと『ワイバーン隊』の4人こちらへ!」


「はっ!」「はっ!」「はっ!」「はっ!」「はっ!」


「ライル、ギース、エマ、ラナら4人は、ごにょごにょを持ち待機しててくれ

 私が板木ばんぎを鳴らしたら、ケニーのワイバーンが合図の『ブレス』を出す

 それをきっかけに、4人が上空を旋回し、戦力の多い所にそれを撒け

 敵が北門だけなら、4人は集中してそこに撒けば良い

 敵が村を包囲したならば、それぞれの指揮官あたりに撒けば良い

 撒き終わったら、地上に攻撃せよ その際の攻撃はブレスとファイアだけで良い

 それぞれが乗ってない『片方のワイバーン』は、地上部隊の最前に置き、

 4人が撒いた後攻撃を合図に、地上部隊と共に攻撃に参加させよ

 ケニーは、4人が攻撃を開始したのち、2頭で真北へ向かいレインと合流

 敵軍を王都方面へ、一兵たりとも逃がすな


 それまでは北東・北西の森で、敵の行軍を交代で監視しててくれ

 敵軍を確認したら、こちらへ戻ってきてくれ 頼んだぞ!」


「はっ! 畏まりました それでは交代で監視致します 失礼します」


「ケニーさん待って、ケニーさんのもう一頭のワイバーンに、

 エンジェルちゃんを乗せて、敵の捕獲に参加させて

 もしも負傷者がでたら、エンジェルちゃんに治療(ヒール)させて」

 

「お嬢様、畏まりました それでは失礼します」


 ケニーら『ワイバーン隊』は兵舎を出た


 それぞれがノアの指示通りに動き備える

 敵軍の到着までリミットは約8時間弱



 次回 第43話 『守戦』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る