第39話 旅人

 11月7日 夕刻 【ハルヨシ村】

『ワイバーン隊』の訓練開始から、この日で丁度1ヶ月

 ティセはケニーに、次の作戦を伝えにきた


「ケニーさん、お疲れ様です!」


「!これはお嬢様、お疲れ様でございます」


「ワイバーン隊が5人で特訓を始めてから、今日で1ヶ月でしょ?」


「はい、丁度1ヶ月です!」


 ティセは前もって、フェレンレンに助言を求めていた

 部隊を今後、どのように鍛えていくのかを・・・


「・・・と、フェレンレン様が言ったのね

 部隊のみんなの職業は、今のまま『魔法使い』で良いみたい

 基本的に空からの攻撃が、主体になるからって…

 だけどケニーさんは、コストの残りが15以上あるならこのままで、

 足りなかったら、『戦士か僧侶』にして、残りコストを15以上にして欲しいの

 それでね… ぺらぺーら、ぺらぺらぺ~ら、ぺらぺ~ら、

 だっふんだ~で、まんまみ~あで、もんまんちぇっちぇ…すると・・・

 LV上げと、お金稼ぎが同時にできるって言って教えてくれたの

 そのお金稼ぎは私も知ってたけど、なるほどな~って感じ

 だから、ケニーさんは明日『王都』に行って、LVを確認して来て下さい

 紋章も『眼球』に、仕直した方が良いですね」


「はい、畏まりました! それでは明日『王都』へ向かいます」


「ありがとうケニーさん、これは領主様から預かったお金ね

 私は『訓練』や『特訓』とかは、分からないから…

 そしたら『送魔鏡』で『アラクネー』って言う『魔物』を1個買ってね

 それで、『ワイバーン』で王都に入らないでね なるべく見られないようにね」


「はいお嬢様! 承知しております」


「じゃあ、明日の夕方にまた来ますね!」


 ケニーに作戦を伝えたティセは、【タカミ村】へ帰った

 翌日、ケニーは王都へ向かい戻った

 11月8日 夕刻 【ハルヨシ村】

 ティセは再び、ケニーの元へ訪れた


「ケニーさん、お疲れ様! 残りコストはどうだった?」


「2ほど足りなかったので、『僧侶』に変えました」


「じゃあ、すぐに上がりそうね」


「はい、そうですね」


「あと2上がったら、買ってきてもらった『アラクネー』の『護姻環』を着けてね

 ちなみに『アラクネー』って、この子なんだけど…」


 ティセは連れて来た『アラクネー』を、ケニーに紹介した


「この子は普通の女の子に見えて・・・ 変身して(※小声で)」


 普通の女性が、見る見るうちに『蜘蛛の魔物』へ変身した


「!!!お嬢様!これは一体!?」


「凄いでしょ! 『アラクネー』ちゃんは、蜘蛛の魔物だったのDEATH!」


「はい・・・ 言葉もありません…」


「『アラクネー』ちゃん、元に戻って!」


 また人間の姿に戻った


「昨日も言ったけど、この子をケニーさんの後ろに乗せるか、

 もう一頭の『ワイバーン』に乗せて、ごにょごにょして、

 王都に行ってごにょごにょすれば、お金儲けとLV上げが同時にできるってワケ

 これを4人と連携でやって欲しいのね

 ケニーさんに余裕ができて、連携も上手くいくようになったら、

 4人にも『アラクネー』ちゃんを渡そうかなって考えたの」


「畏まりました! それでは早速明日から、こちらの訓練をやってみます

 それで、ごにょごにょは、毎日の方がよろしいでしょうか?」


「そうねぇ~… 坑道掘りの人たちの送り迎えがあるからなぁ~…

 かと言って置いておくのも何だしな~… 」


「それでしたら、坑道掘りの者たちを村に送り届けた後でも構いませんが…」


「それだと夜遅くなるから、ダメ絶対! 私はブラック企業と違いますからね!」


「???(ぶらっくきぎょう??・・・)」


「う~ん… ちょっと領主様に相談してみる…

 朝のは、やって下さいね 夕方のは任せてね」


「分かりました、お嬢様」


 会話を終えたティセは、村へ帰った

 翌日11月9日 午前中 【タカミ村】兵舎


「領主様、いますか~?」


「おぉティセか、今日も早いな!」


「はい、おはようございます! 領主様に相談があるの…」


「どうした、相談とは何だ?」


「ケニーさんの特訓の事なんですけど… あーでこーであーでこーで・・・

 そんな具合で、あーしてこーして… そんだらあーだこーだあーだこーだ…

 てなワケで、領主様とノートンさんの『有翼のユニコーン』を貸して欲しいの」


「!?『有翼のユニコーン』を貸して欲しいと・・・  しかし…それがな」


 ノアは昨日の出来事を話した

 11月8日 夕刻 【タカミ村】


「ノア様、只今『スカアハ』と名乗る旅人の女性が、

 責任者に会いたいと申しておりますが、いかが致しますか?」


「?『スカアハ』と… 聞いた事が無いが… まぁ良い、通してくれ」


 衛兵は、旅人の女性を連れて来た


「こんにちは、私は『スカアハ』 遠い西の彼方より旅をしてる者

 私とお会いになった事で、あなた様の『寿命』が、少しばかり延びたようです」


「お主とどこかで、お会いした事がありましたか?」


「いえ、お初にお目にかかります」


「そして会った事で『寿命』が延びたと・・・?」


「そうかも知れませんし、違うかも知れません」


「なぜ、訪ねて来てくれたのだろうか?」


「私は、気まぐれなものですから」


「ではこれで、私は救われたのかな?」


「いいえ… まだです 私のことばを取り入れたならば…」


「私のことばとは?」


「断る事、守る事、聞き入れる事、これで運命さだめは変わるでしょう」


「しかし… 断る事と聞き入れる事とは、相容れないのではないか?」


「何を捨て、何を拾うかは、あなた様の御心のままに」


「・・・では、いつまで守れば良いのだろうか…? いつまでもは無理がある…」


「ひと月も掛からないであろうかと・・・ 

 この国が亡ぶまで」



 次回 第40話 『憂慮』

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