第36話 質問

 翌日午前8時頃

 レイリアンは、50名の兵士を引き連れ『王都』へ出発した

 ティセとノアは、午前10時【ハルヨシ村】を出た


「ティセ、メルゼインは昨夜、暫く見なかった『悪夢』を、また見たそうだ

 やはり、私がいる事が原因なのだろうか?」


「・・・そばにいると見る、そばにいないと見ない・・・だったら、

 …多分そうだと思います…だけど何か理由があるんじゃないかって…」


「・・・・・何とかしてやってくれないか!」


「はい!もちろんです!」


 1時間ほど飛んでいると、前方から走って来る馬車が見えた


「ティセ、あの馬車は【ジュリア】のではないか?」


「えっ?そうかも知れない! ちょっと止めましょう」


 2人は地上に降り、馬車を待ち構える

 馬車は2人の手前で止まった


「止めてしまって申し訳ない、私は【ハルヨシ村】の領主ノアと申します

 こちらは【タカミ村】へ向かう馬車ではございませんか?」


「左様でございます、少々お待ちください」


 馭者はキャビンの扉をノックし、乗車している人物に話しかけた

 中から2人、外へ出てきた


「これは、ノア様、ティセ様、これより【タカミ村】へ向かう所でしたが、

 お二人はどちらへ行かれるのですか?」


 話しかけてきたのは【ジュリア】のエミリーだった

 隣にはフードを被った『とても若い女性』がいる


「これから『トーラ』へ向かうところで…

 しかし、途中で会えて良かった!」


「何かございましたか?」


「いや、大した事ではないのだが、【タカミ村】に向かうのであろうが、

【ハルヨシ村】に変更したくて… 部下には伝えてはいるが…

 で、そちらが『魔法使い』の御仁だろうか?」


「はい、左様でございます こちらが募集に応じてくれました、

『魔法使い』のフェレンレン様です」


「(ブッ… フェレンレンって・・・)」


「そこの娘、今笑ったかな??」


「い~え、そんな笑うなんてないです!!」


「まぁ良い 私はフェレンレン 御所望の『魔法使い』だよ」

 

 伝説の魔法使い:フェレンレン


「立ち話は何ですので、馬車の中へどうぞ」


 エミリーは3人を車中へと促し、4人は中に入る


「しかしフェレンレン殿は、とても若い女性のようだが、

 今まで何をしておられたのでしょうか?」


「私はかつて、仲間と共に『魔王』を倒した事がある 4人組だったが…

 それは160年ほど前の話し・・・ 細かい事は忘れたよ」


「『魔王』ですと!? 『魔王』とは本当に存在するのですか?

 それに160年前とは・・・ 人間ではありえないが・・・」


「そうだ、ただし勇者の数だけ存在するんだよ、それに私は『エルフ』だから」


「フェレンレン様、私はティセって言います フェレンレン様は『魔法書』を、

 集めてたりします?」


「何故それを・・・ まぁ、そう云う事か… なら納得だよ

 偽物はして燃やしたよ」


「(ブホッ… ククク フランベって…師匠にかかってるわ)」


「また笑ったね、ただ真面目な話、私の寿命は近い・・・

『エルフ』は、何千年も生きるなんて噂があるけど、そんなのは嘘なのさ

 精々長生きして200年程度だよ・・・

 だから弟子を育てると言っても、そこまではどうかな?・・・

 それでも若い連中に、少しでも教えたくってね」


「そうでございますか… 只今領内の兵士50名が、王都にて登録をします

 総勢200余りを鍛えてやって欲しいのですが・・・」


「うん、そのつもりだよ」


「ありがとうございます」


「あの、エミリーさん 聞きたい事があるの… いいかなぁ?」


「はい!何でもお聞き下さい」


「エミリーさんに聞きたい事があってそれでまた募集したの・・・ 聞きたいのは、

『護姻環』は1人で10個までしか、絶対ダメなのか? 足の指はダメなのか?

『護姻環』を着けて呼び出した『魔物』に、違う『護姻環』を着けさせる事は?

【ジュリア】の商品でね、普通なら販売した商品はたくさん売りたい筈なのに、

 それなのに商品を紹介する『カタログ』が異様に高いのは何故ですか?

 ギルドで聞いても分からないって言われて…」


「はい!お答えします

 今現在は1人で10個まで『護姻環』を着ける事ができます

【ジュリア】でも、1人で沢山の『護姻環』を装着できるようにと、

 開発は進めていますが、現状では10個までです

 次に、足の指でも装着は可能ですが、やはり10個までです

 次に、『魔物』に違う『護姻環』を装着させる事は、

 その『魔物』が、次の段階へ『進化』した場合可能です

 例えば『ゴブリン』が進化すると『ホブゴブリン』へ、

『ピクシー』なら『ハイピクシー』へと進化します

 進化した『魔物』が、使役する『魔物』が進化すれば、

 その『魔物』も『護姻環』を装着し、更に使役する事ができます

 それを『陪臣』と申します

『陪臣』とは、家来の家来を指します

 家来の家来は、ご主人様のご主人様に対して忠誠を誓う必要はない為、

 ご主人様のご主人様と『魔物』には主従関係はございません

 しかし『陪臣』の場合、

 ご主人様のご主人様と『魔物』に、主従関係はございます」


「ティセ、つまりこう言う事だ

 王様と私は『主従関係』にある

 だが『王様』と私の部下の『ノートン』には、『主従関係』はない

 だから『ノートン』は『王様』の言う事を、本来聞かなくて良いのだ

 は、『ノートン』は『王様』の言う事聞く

 なぜなら『主従関係』にあるから、と言う具合だな」


「あ~なるどね!良く分かったわ」


「そして最後の『カタログ』ですが、【ジュリア】では『カタログ』を

 販売しておりません」


「え~!?でも『送魔鏡』で売ってるのを見ましたよ… 1億で」


「それはどこかの国の誰かが、『競売』で出品したのではないでしょうか?」


「あーそうなんですか!! なら『カタログ』は?」


「はい!少々お待ちください ・・・はい、こちら無料です!」


「ありがとうございます(ただで貰えるんかい!)」


「色々とありがとう では、これで失礼する」


 ティセとノアは馬車を後にし、再び王都に向かった

 一方馬車の車中


「フェレンレン様、いかがなされましたか?」


「あのは『外乃者』だね・・・」



 次回 第37話『休息』

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