第32話 商会

 王都を出発し【ハルヨシ村】に到着したノアら3人

 ケニーたち『ワイバーン隊』の到着を待っていた


「領主様、さっき『試した事』ね、凄い発見をしたの 聞いて!」


「凄い発見とは一体何だ?」


「私ね、ギルドに登録してから一回も魔物を倒した事ないの

 なのにLVが上がってるの、何でか分からないけど…

『有翼のユニコーン』を買った時に調べた時は、LV28だった

 それから今日まで、大した事をしてなかった

 そして今日、『換金する前と、換金した後』で、LVを確認したのね

 換金する前がLV30で、換金した後、私の商人LVは48だったよ!」


「LV30がLV48だって!? ・・・商人?そうか、そう云うことか!」


「商人は、商人らしい事 売ったり買ったり、紹介したり交換したり

 多分そんな事で経験値が上がる仕組みだと思ったの

 戦士なら戦う、魔法使いなら魔法を使うってエミリーさんも言ってたけど

 もちろん、魔物を倒しても上がるだろうけど

 だから今日の売主を私にしてもらって、一旦お金も貯めて貰ったの

 それでLV30からLV48まで上がったんだから、もう間違い無いって確信したワケ」


「そうか・・・ それではケニーやノートンもそうだろうか?」


「ケニーさんとノートンさんは、多分商人じゃないから…、

 上がるにしても私ほどじゃないと思う

 なので、職業を商人にして換金すれば、簡単にLV上げができて、

 空きコストも増やせるって事」


「恐らくこれからも… いや、今まで以上に『魔物』を使う機会が増えるだろう

 私もその『重要性』を、最近…徐々にだが感じてきたのだ

 その為にも簡単にLV上げができるなら、組織で効率的にやる仕組みを考えないと

 いけないだろうな」


「領主様、どうせなら思い切って、兵士さん全員、登録したら良いのに」


「そうだな、資金も増えたし考えておこう」


 ケニーたち『ワイバーン隊』が到着した


「ケニーご苦労であった

 話とはな、今いるここは森を切り開いた場所だが、あそこを見てくれ」


「岩肌に穴を掘ってるようですが…」


「あれはな『坑道トンネル』を掘っているのだ 

不越山ふえつのやま』に『坑道トンネル』で穴を開けて、

 向こう側へ行けるようにするのだ!」


「少し理解が追いつきませんが、向こう側にですか!?」


「そうだ、私も最近『それ』を味わったから、気持ちは良く分かるぞ」


「・・・それでいかが致しましょう?」


「一度全員で飛んで、『不越山山頂ふえつのやまさんちょう』まで来てくれ」


「はっ!」


 上昇したノアらが先行し、『ワイバーン隊』が続く

 そして山頂に到着 各々魔物から降り、全員が眼下を見下ろす


「ノア様… ここは一体…」


「ここを我々が頂く事にした ティセが言ったのだ、ここを貰おうと

 それで『坑道』を掘ってる訳だ

 今までは、当然だが村側から掘っていた

 ティセは反対側からも掘れば、倍の早さになると、そこでお前たちの出番だ

『ワイバーン』の訓練をするなら、良いのではないかと思ったのだ

 ここで訓練すれば、誰に見られも知られもしない 最高の環境だ!

 それでだ、毎朝、逆側から『坑道』を掘る者たちを運んでもらいたい

 そして夕刻仕事終わりに、村側に送り届けて欲しい

 掘削作業の時間は、朝10時から夕方6時までだ

 だからお前たちの訓練時間も、それに合わせてくれ」


「はっ!ここが私たちの家になる訳ですね・・・畏まりました」


「折角だから今日は訓練ではなく、皆で探索でもしたらどうだ?

 それで、一日楽しんでくれ

 そうそう、今日から送り迎えを頼むぞ この下にいる者たちだ

 それと50人分の天幕の移動もだ 頼んだぞ!」


「はっ!」


『ワイバーン隊』は降りて行った


「領主様、私考えたんですけど、一度大きい会議をしたいと思ったの

 拡張工事もシークさんに棟梁をやってもらって、

 これがどんな効果があるかは分からないんだけど

 それでも人が足りない気がするし…

 人夫さんが確か500人でしょ 兵士さんが100人 村の人が200人

 800人の人が頑張ってくれてるけど、やっぱり専門の人じゃないからかな?

 そんな事とか、『坑道トンネル』が通ったら、

 今度は向こうにお家を建てないといけないでしょ?

 一旦全部の事をきれいに見直したいの」


「ティセ… お前の言う通りだ 本当は宰相様もご一緒の時が良いのだがな…

 ひと月以内に会議を設ける 全てを見直して、効率良く事が運ぶようしていこう」


「さすが領主様、ありがとうございます!」


 10月15日

【ジュリア】から『ワイワイ商会』が、荷馬車7台で到着した


「旦那様、初めまして 私は『ワイワイ商会』代表の、セバスと申します

 以後お見知りおきのほどよろしくお願い致します

 こちらが納品書でございます

 後ほどご希望の場所に、商品を降ろさせて頂きます

 つきましては決済の方は、現金と紋章どちらになさいますか?」


「紋章で頼む」


「畏まりました それでは紋章をお願い致します」


「ティセ、よろしく」


「はい! どうぞ!」


「これはこれは、可愛いお嬢様、よろしいでしょうか?」


「はい!」


「はい… お支払い完了致しました この度はありがとうございました

 またのご利用を、心よりお待ちしております」


「セバス殿、暫しよろしいか?」


「はい、何用でございましょうか?」


「お主の商会は、主に職人の道具と設備を取り扱っておるが、

 それに関連する物、専門外の物も手に入るのだろうか?」

 関連する物だと例えば、金属加工や鋳物師なら、真鍮や鋼

 ガラス職人や陶工なら、砂や土、粘土 要するに素材だな

 専門外の物なら、この世界の図面…とか

【ジュリア】が創る、特別な効果のある便利な物だとか…」


「旦那様が仰った物は、全て取り扱いできます

 市場に…つまり『送魔鏡』で取り扱える物は全て可能でございます

 この世界の図面も勿論ございますが、

 こちらは新版が出ていませんので、情報が古い可能性があります

 ですが『送魔鏡』で、この世界の図面は、無料で確認できます

 しかも地名や国名、村まで網羅し、一国が支配する範囲まで分かります

 しかしそれは【ジュリア】が把握して、書き換える仕様です

 例えば、ある国や街が敵国に支配されたとします

 その瞬間は【ジュリア】は情報を把握しておりません

 その情報を【ジュリア】が手に入れて内容が書き換えられます

 最後の【ジュリア】作製の道具は、基本的に全てが高価です

 その道具を纏めた本がございますが、それを『カタログ』と言われており、

 その『カタログ』の価格が、凡そ1億ヨーらしいのです

 ですので『送魔鏡』で出品されている物を、地道に探されるのが、

 良いかと存じます」


「いやぁ、とても丁寧に説明してくれて、とても助かった ありがとう

 また何かあれば、お主の商会にお願いするので、よろしく頼む」


「滅相もございません 今後とも、どうぞよしなにお付き合い下されば、

 幸いでございます」


「ノートン、職人たちを連れて、セバス殿を案内してくれ」


「はっ! それではセバス様、こちらへどうぞ」


「はい、失礼致しました」


 2人は兵舎を出て行った


「ティセ、今の会話で、分かった事や気付いた事はあるか?」


「あのセバスさんは、とても良い人だってのは分かったわ

 世界の図面も、本来売れたはずなのに、『送魔鏡』で見れるって教えてくれたし、

【ジュリア】の道具も『送魔鏡』で探した方が良いなんて、普通は言わないもん

 あとは、素材を頼んだ時に、専門に扱ってる商会と比べて、どのくらい盛るか

 でも、お付き合いするには、良い商会だと思います」


「そうか… やはり図面の話しを聞けば、『送魔鏡』は尚更必要だな

 敵国がどこまでを治めてるかを知れるなんて、とんでもない代物だが、

 裏を返せば、敵国の状況も把握できる訳だから」


「気になっちゃったから、私『送魔鏡』見てきます」



 次回 第33話『避難』

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