第30話 貸借

 ゼルによって知らされた討死と降伏 もたらされた『遺言と忠告』

 解決策がないノアは、ティセに相談する


「ゼルさん、【レビド】の兵士さんは何人いますか?」


「兵は400前後かと思いますが…」


「表に繋がれた『アハルテケ』はゼルさんのですか?」


「はい、そうです」


「【レビド】の兵士さんで、ギルドに登録してる人は何人いますか?」


「30人いるかどうか… ではないでしょうか?」


「分かりました ありがとうございます

 領主様、この前の『鬼』確か70個買ったと思います アレお願いします」


「ああっ!そうだ! あれがあったか!!」


 ノアは別室にある『護姻環』を取りに行き、戻ってきた


「これだ!」


 ノアはゼルに布袋を手渡す


「これは何でしょうか?」


「これは『鬼』と言う魔物で、とにかく強い子です!

 コストは3 馬を使ってるから、LV2以上ある筈、特別魔物を倒さなくても、

 自然に上がってる事はしょっちゅうあるから、3なら使えると思うの

 これから登録してってなると、どのくらい時間に余裕があるか分らないから、

 登録済の約30人にこの『護姻環』を着けてもらって下さい

 ちなみに『馬系』は外して下さいね

 それで、この子たちのお家も用意してあげて下さい

 ご飯は、食ってこいって森に放せば食べて戻ってくるよ

 って言うか… 領主様、【レビド】に行った方が早くないですか?」


「そ、そうだな… ノートンのを借りるか!」


「ゼル、私たちも一緒に向かおう」


「しかし… 結構な距離ですが・・・」


「構わない、行こう!」


 3人は兵舎の外に出て、3頭の『有翼のユニコーン』を待つ

 ノートン、スタンが連れて来た


「ゼル、今からこの馬で閣下の元へ向かう 其方の馬は置いていけ」


「はい… ??この馬は翼があるのですか?」


「そうだ! 正に飛んで行くんだ なっティセ!」


「よし、皆乗ってくれ スタン、ゼルに『護姻環』を渡してくれ」


「はっ!」


「落とすなよ! では行く!」


 3人は飛び立った

 1時間半を切るペースで、王都上空を通過する


「ゼル、王都から馬でどのくらい掛かる?」


「およそ6時間です…」


「そうか、ここからはお主が先導してくれ」


「はっ!畏まりました」


 馬で6時間の距離もあっという間に到着した


「閣下、こちらが【レビド】でございます こちらへどうぞ」


「あぁ、向かおう」


 3人は馬を降り、ゼルの案内で屋敷に向かう


「閣下、ノア様、ティセ様をお連れしました」


「何だと、ノアが・・・」


 2人は互いの顔を認識すると、力強い握手を交わした


「ノア… 何故お前がここに…」


「閣下、お久しゅうございます ゼルからあのような事を聞けば…」


「いやぁ、まさか死ぬ前にお前に会えるとは思わなかったぞ!」


「その件で参りました… その前に、こちらはティセです」


「ティセです、よろしくお願いします」


「あぁ、よろしく」


「お前の子か? 似てないが」


「私の子は、こんなに賢くないです この子は、私の軍師です」


「この子が軍師とな… はっはっはっは! 頼もしい!」


「閣下、冗談ではございません 私共は、閣下をお救いに参りました」


「王様は援軍を出してはくれん 善後策も無い どうしようもないのだ」


「ベネディアード閣下が、今でもご存命であれば、私は駆けつけましたよ」


「それでは、どうするのか聞こうではないか 向こうの部屋で」


 4人は別室に移動した


「して、この状況いかが致す?」


「ティセ、頼む」


「はい! ゼルさんに聞いた所、こちらの兵士さんでギルドに登録してる人は、

 大体30人くらいですね

 その30人くらいの人が、馬を扱える… これは『護姻環』の話しですが

 領主様は、LV幾つですか?」


「私は… 登録してから確認してはいないのではっきりしないが、

 20から25くらいあるのではないだろうか?」


「今、『護姻環』着けてます?」


「あぁ、『赤兎馬』だけだが着けているぞ」


「ゼルさん、『護姻環』をお願いします」


「はっ!」


 ゼルは布袋から1つ『護姻環』を取り出し、テーブルに置いた


「こちらは『鬼』の『護姻環』です」


「『おに』とは… どんな魔物なのだ?」


「人間の3倍4倍くらい大きいです 筋肉も凄いし顔も怖いです」


「そんな魔物がいるのか…」


「はい! ここにその『鬼』の『護姻環』が70個あります

 それをギルド登録してる人に着けてもらって呼べば、もう勝ちです!

 正直70個も要らないかも知れません

 ただ、はめるなら、この子たちのお家も用意してあげて下さい

 ご飯も食べさせてあげて下さい

 お願いします」


「ノアよ、俄かに信じがたい話であるが、お主からしても勝算はあるのか?」


「勿論です 人間が、このような魔物と戦って勝てる筈がございませんし、

 敵方にしたら現状は勝ち戦、誰も死にたくはございません

 ですのでティセの申す通り、家と食事を用意して可愛がってやれば、

 閣下の勝ちは揺るぎません」


「お前がそこまで言うなら信用しよう ゼル、『護姻環』を着けてみろ」


「はっ!」


 ゼルはケースから指覇を取り出し、指にはめる・・・ すると

 筋骨隆々の『鬼』が現れた ゼルは緊張しながらも、片方の指覇を鬼にはめる


「これは・・・これが『鬼』・・・ この体躯で暴れるのか… 最高だ!」


「これから、色んな魔物の『護姻環』が必要になる筈です

 その時の為に、魔物はばらけて持たない方が良いと思います

 つまり、10人で10個より1人で10個の方が、管理しやすいです」

『鬼』のコストは3なので、単純にLVの合計が30なら、10個着けれます

 なので、ごにょごーにょ、ごにょごーにょしたらごにょです

 途中でごにょご~にょすれば、もうLV30です

 だから兵士さん5人選抜して、さっきの方法でLV上げ 1人で10個着ける

 人間は50人の『鬼』には勝てません これで勝ち確定ですね

 念の為に、味方の兵士には何か目立つ目印を付けて下さい

 あっそうだ!5人の紋章は『眼球』にし直した方が良きですよ

 それと普段から『鬼』の存在は知られないようにして下さいね」


「お主の言う通りの軍師っぷりだ 早速取り掛かろうと思う

 ノア… ありがとう!」


「これは貸しです、必ず返して下さい それではご武運を… 失礼します」


 2人を乗せた3頭の『有翼のユニコーン』は、

 大空へ翔け上がり村へと帰った



 次回 第31話『始動』

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