第28話 使者

 10月1日朝 少し大きめの豪華な馬車2台と荷車1台が

【タカミ村】に到着した

 その3台には【ジュリア】の旗を掲げている


「ノア様、只今【ジュリア】から使者の方が面会を求めております!」


「【ジュリア】…今行く ティセを呼んできてくれ」


「はっ!」


 兵舎をでたノアは、一行を出迎えた

 2台のキャビンから、12人降りてきた その中の一人がノアに声を掛けた、


「初めまして、私は【永世中立国家ジュリア 送魔塔】から参りました、

『エミリー』と申します こちらは部下の『ミザリー』です

 どうぞよろしくお願い致します

 閣下は御領主ノア男爵様でよろしいでしょうか?」


「如何にも、私が領主ノアでございます こちらこそよろしくどうぞ

 只今建設中でして散らかっておりますが、こちらへどうぞ」


 そして一行を兵舎へ招いた 同行の10人は別室で待機

『エミリー』『ミザリー』と会話を始める


「この度は【送魔鏡】にて人材募集をして頂き、誠にありがとうございます

 今回の募集に関しまして、ご依頼の通り私共【ジュリア】で選考致しました

 その結果、10名の希望者が決定しました

 本日からの業務開始と云う事で、連れて参りました

 希望職以外の依頼者もございましたので、そちらは現在保留致しております

 その前に、今回決定した職種がこちらです」


 1枚の紙を手渡す


 金属加工:セイン

 鋳物師:キッド

 大工:シーク

 木工職人:ジョージ

 ガラス職人:マリー

 酒造:ジーナ

 陶工:ザック

 料理人:ケン

 機織り職人:シュリ

 植物(食用・実用):ミナ


「こちらに記載の職種の方が、別室に待機している者たちです

 先ほど少し申しましたが、希望職以外の依頼者で今回保留している者が、

 革職人:エディー

 水車技師:ダニー

 染物師:モレノ

 以上の3名が保留者ですが、いかが致しますか?」


「革職人と染物師はお願いしたい

 水車技師も後々お願いしたいのだが、現状では期日を区切れない

 かなり先になっても構わないのであれば、その者と契約したいと思う

 可能だろうか?」


「革職人:エディー様と染物師:モレノ様は、一週間以内にお連れします

 雇用開始日時は、到着日でよろしいでしょうか?

 水車技師:ダニー様と、一度確認を取ってみないと分かりかねますので、

 その時の窓口は閣下でよろしいでしょうか?」


「到着日だと他の者とずれてしまうので、皆と同じく今日からで結構

 雇用主は私だが、今回募集を掛けた『ティセ』と云う者が窓口になる」


「左様でございますか 『ティセ』様ですね、承知致しました」


「よろしく頼む」


「提示された報酬は、12で割った1ヶ月分を毎月末日に、

 依頼者に『遅れる事なくお支払い下さい』

 約束が履行されない場合、【ジュリア】の制裁対象となる可能性がございます

 十分お気をつけ下さいませ」


「あぁ、承知した」


「最後に何かご質問はございますか?」


「例えばだが、『送魔鏡』で『商会』に商品を依頼した場合、

『商会』が届けてくれた時に『直接』次回の取引をして良いのかを知りたい

『送魔鏡』から【ジュリア】を通し依頼しなければいけないのか…」


「ご依頼は『直接』で構いません 

『商会』は【ジュリア】に登録している業者でございますので問題ございません」


「そちらの『商会』に登録するには、幾ら掛かるのであろうか?」


「はい、1億ヨーでございます」


「(1億って… )すまん最後に2つの質問だが…

『送魔鏡』を購入するに当たって、私のような小さい領主でも可能なのかと、

 既に設置されている『送魔鏡』を移動させ、使用する事は可能であるか」


「はい、閣下のようなご領主様でなくとも、個人の方でもご購入頂けます

 それと、既に設置されている『送魔鏡』を移動させた場合、

 移動先で設置完了後に『送魔鏡』で登録内容を変更して頂ければ、

 ご利用になれます

 しかし『送転幕』を設置なされないと【ジュリア】からの物資、

 設置場所からの物資の『相互移動』ができませんので、ご注意下さい」


「すまないが『送転幕』とは何だ?」


「『送魔鏡』を設置されてる場合、こちらも必ず設置しなければならない

 物でございます 閣下の登録は【泡沫国】ですので【首都トーラ】のギルド内に

 設置されてる『黒い幕』を御存じではございませんか?」


「ギルド内の黒い幕・・・ ん… あぁ!確かに!窓口の一番左に、

 そのような黒い幕があった!」


「左様でございます それを設置する事によって、

 物品物資の『相互移動』が、可能になります

 また大きさによって移動可能な大きさも変わります

【首都トーラ】のギルド内に設置されてる『送転幕』の大きさは中でして、

 中の大きさですと一般的な大きさの『馬車や荷馬車』程度の移動が、

 可能となります

 大になりますと、中の4枚分 つまり4倍の大きさまで可能となります

 只今の説明は設置場所と【ジュリア】のやり取りを解説致しましたが、

 例えば、閣下のご領内の村と村で『送魔鏡』『送転幕』両方を設置して頂ければ、

 人員も物資も相互に移動可能となります

 また、どちらか一方通行も可能です

 しかし更にもう1台追加し3台以上でのご利用の場合、

 移動登録できるのは、どちらか一方になりますのでご注意下さい」


「・・・ちなみに中と大の価格は幾らであろう?」


「はい、中は1,000万ヨー 大は3,500万ヨーでございます」


「いや、勉強になった 助かった… ありがとう!」


「とんでもございません 最近は閣下のご配下、村民のご利用が顕著で、

 こちらも大変嬉しく思っております」


「私はこういった物に疎くて、皆に頼っているのだが、

 大変助かっている また利用させてもらう」


 ティセが兵舎に到着した


「ティセ、こちらが【ジュリア】の『エミリーさん』と『ミザリーさん』だ


「こんにちは、私はティセです よろしくお願いします」


「初めまして、私は【永世中立国家ジュリア 送魔塔】から参りました、

 私が『エミリー』と申します こちらは部下の『ミザリー』です

 どうぞよろしくお願い致します」


「エミリーさん・・・ ちょっとお聞きしたい事があります・・・」


「何でもご質問下さい」


「少し前なんですけど、王都で『送魔鏡』を見てたんです

 それで… 買った後になってルール違反になったらいけないと思って…

 ✖✖って『スキル書』を見つけたんですよ…

 それって、何でも✖✖して良いんですか?」


「なるほど・・・ 試して頂く事は可能ですが、生物はほぼ死にます

 生物以外の物品で、✖✖不可の物はいくつかございます

 それらは✖✖できない仕様になっておりますので、一度お試し下さい

 こちらからは、どの物品が✖✖不可とはお答えできませんが、

 ✖✖できた物品に関しましては、当方は関知致しませんので、

 ご安心してご利用ください」


「通常だとそのスキルは、何の職業が覚えられますか?」


「当該スキルは『レアスキル』でして、

 特定のジョブで習得する訳ではございません

 しかし、極極低確率ではございますが、どのジョブでも可能性はございます」


「そのスキル書を使う場合、どんな人が覚えた方が良いとかありますか?」


「・・・ 全てのレベル合計値が高い方が適任でございます」


「低いレベルの人と、どう違ってきます?」


「✖✖✖の大きさが違ってきます」


「なるほど・・・ まだお時間大丈夫ですか?」


「全然構いませんよ! お好きなだけお聞き下さい」


「じゃあ、お言葉に甘えて・・・

 本で読んだのですけど『インベントリ』と『ゲート』って、

 魔法ですか?スキルですか? 何の職で覚えます?」


「両方共にスキルです 『インベントリ』は、リフターLV25

『ゲート』は、シーフLV50で覚えます」


「この2つのスキルも、スキル書ってありますか?」


「はい、ございますよ」


「効率の良い、レベルの上げ方って何かありますか?」


「そのジョブに合った仕事をするのが、効率的ですね

 戦士なら戦う事 魔法使いなら魔法を使う事… ですね」


「ティセ、、、 余り引き留めても・・・」


「あぁ… ごめんなさい! あと・・・3つです!

『ゲート』って、決めた場所にしか行けませんけど… よね?

 行きたい場所に自由に行き来できる魔法とスキルってありますか?」


「まず『ゲート』ですが、低レベルの場合は、1つだけです

 スキル保有者の総レベルで、行ける場所を増やす事ができます

 新たな場所を設定すると、古い設置場所を上書きして消去します

 行きたい場所に自由に行き来できる魔法とスキルでしたら、

『魔法:ワープ』があります これは『賢者』LV50以上で覚えます

 スキルでしたら『転移』がございます

 こちらも『レアスキル』でして、ジョブは関係なく、

 極極低確率で習得する可能性がございます」


「最後なんですが・・・ 『エミリー』さんのように詳しい人と…

 『送魔鏡』とかで質問できたりって、、、 できませんか?」


「そうですね・・・ 今回のように、対面でお話する場合は構いませんが、

 それ以外の接触は基本的に受付けてはいないのです・・・」


「じゃあ、ルール違反かどうかの基準って何かあります?」


「【ジュリア】に対しての一切の敵対行動をなされない事、

 契約の履行がされてれば、スキルや魔法、魔道具で何をなされようと、

 ティセ様が仰られる『ルール違反』は一切ございません

 例えば、偽りの商品を競売に出品したとします

 当方での鑑定を経て商品欄に掲載されます

 偽物及び、偽りの説明の商品は破棄され、出品者も登録を抹消致します

 つまり、当方が不利益を被る行為以外でしたら、何をなされても構いません」


「エミリーさん、とっても分り易かったです ホントにありがとうございました」


「こちらこそありがとうございます!

 それでは、希望者との打ち合わせ等々、よろしくお願い致します

 私共はこれで失礼致します」


「あぁ、よろしく頼む!」


 エミリーとミザリーは【タカミ村】を後にした


「領主様、私一旦帰るね」


「職人たちが来てるんだぞ・・・(また何か考えているんだな・・・)」


「ごめんなさい! 領主様、お任せしました・・・」


 ティセは猛ダッシュで帰って行った


 ノアは、希望者として応募してきた面々と対面する


「各々方、お待たせして申し訳ない

 私が泡沫国傘下【ハルヨシ村】及び【タカミ村】領領主のノアと申す

 この度は、我が呼びかけに応じてもらい、大いに感謝している

 各々方の技術や経験を、我が領内で存分に発揮してもらいたい

 現在、我が領地の拡大を図っており、ここ【タカミ村】も拡張工事中である

 更なる領地拡大の算段がついた事により、各々方を招いた次第である

 雇用は今日からだが、まずはそれぞれの必要な道具・材料・設備等を

 準備し用意するので、7日までに紙に書いて提出して欲しい

 8日に王都へ行き【ジュリア】に発注する

 それらが届くまで多少の時間が掛かるであろうが、自由にしてて構わない

 仕事に取り掛かれる者は、やってくれれば助かる

 住まいやその他の事があれば、すぐにこちらに寄越すノートンに言ってくれ

 雇用主は私だが、各々方を募集したのは『ティセ』と申す少女だ

 彼女の要望には、できうる限り叶えてやって欲しい

 各々方は、彼女の意思で動いてくれ 

 私の許可は必要ない よろしく頼む」


 ノアはノートンを呼びに、部屋を出た



 次回 第29話『遺言』

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