第26話 渇望

 山頂に到着した3人は、山の向こう側を見下ろす


「・・・なんだ… この素晴らしい景色は・・・」


 ノートンは泣いている


「そうでしょ! 王都に行った帰りに、気になって寄ってみたの

 そうしたらこんな最高な場所を見つけちゃったの」


 2人は言葉がない


「それでね、領主様とノートンさんに相談なんだけどね、

 ここをもらいましょう」


「!!!!!!」


「手前と左右は山に囲まれてて、中央に川が流れてるでしょ

 まだ確認してないんだけど、あの奥の方に海みたいのが見えるでしょ?」


「ティセ・・・ 海とはなんだ??」


「えっ?? 海…(海を知らないんだ)

 海ってのは… 湖のもっと大きいやつで、水が塩辛いの… 飲んじゃダメだけど

 川には住めない魚もいるのよ 美味しいのがたくさん」


「海とな・・・水が塩辛い??」


「私たちがここで暮らせたら、きっと幸せになれる気がするの

 領主様、どうですか?」


「ノートン、お前はどう思う?」


「・・・ティセの言う通り、三方を山に囲まれており、

 前方も左右の山が中央の原野を、両手で包み込むような形になっています

 それは自然とできた『城壁』のようです

 ここを攻め落とせる軍勢はいないのではないでしょうか

 ですので、私は賛成です」


「確かにとても広い原野だ 王都が6つ?いや、それ以上収まるだろう

 ここに街を… 正に理想だ!

 だがしかし、三方を囲まれ向こう側に回り込むのは、とても現実的ではない

 ここに居を構えるのか…

不越山ふえつのやま】の岩盤地層は非常に固い… それが問題だ」


「そうなの… そこをどうしようかって…」


「ティセ、お前は今まで色々な事を魔物で解決してきただろ?

 今回の事も、魔物で解決できるんじゃないか?

『送魔鏡』で調べれば、何かいるかも知れないぞ?」


「う~ん… じゃあ2人共、私に賛成なのね?」


「あぁ、もちろん賛成だ! こんなに良い環境は他に無い」


「私も賛成だ ここに街を作ったら最高だ」


「じゃあ、一旦村に戻りましょう」


 3人は【タカミ村】に戻ってきた


「領主様にあそこを見せたくて『有翼のユニコーン』を

 衝動買いしちゃったの

 でもこの子は、ここから王都まで1時間半も掛からないのよ」


「そんなにも早いのか… 十分使い道はあるから心配するな」


「『ワイバーン』はもっと早いけどね、多分」


「・・・」


「じゃあ私は、もう一度王都に行ってきます

 ノートンさんの言うように、魔物の力で何とかできないか探してみます、

 なので良い子がいたら買って下さいね」


「あぁ、大丈夫だ! 気を付けて行ってこい!」


「はい! 行ってきます」


 ティセは、飛んで行った・・・


「ノートン… あそこに居を構えたら、

 他国の脅威に怯えずに、村の人々は安心して生活できる・・・

 ただ裏を返せば、彼の地は誰もが欲しがる土地だと言う事だ!

 そんな意味でも、王都が彼の地を守る最大の壁である事は間違いない

 仮に王都が落ちれば、現状そこからの侵攻にはとても耐えられない

 そこが一番心配なのだ」


「・・・王都が落ちた時は…速やかに奪回しなければならないでしょう

 しかし我らの陣営には『ワイバーン』がおりますし『鬼』もいます

 我々人間が、相手にできる者たちではございません」


「それは… そうなんだがな…」


 一方ギルドに到着したティセは、『送魔鏡』を操作する


「どう検索すれば良いのかしら・・・

 …特殊な技能 これかな? 穴掘りとか 採掘… 炭鉱夫?

 ああああ!いたいた! この子ね お値段は・・・5000!?

 意外とリーズナブル じゃあ100人っと」


 今日一日で100万ヨーを使ってしまったティセだった

 そして帰路につき【タカミ村】に到着 兵舎に向かう


「領主様、領主様! いたの いたの 良い子が!!」


「分かった… 落ち着いてくれ、ゆっくりだ」


「ばっちり、この子なの~ マジ最高!」


「ばっちり??(まじって何だ?)そんなに最高なのか!」


「それでね領主様、この村の工事なんだけど、ちょっと変更して欲しいの」


「変更? どんな変更だ?」


「この村を【ハルヨシ村】みたいなるんだったら、ごにょごにょ、

 ごにょごにょご~にょ、であるからして、こうするの

 10月1日に職人さんがくる予定だから、ごにょご~にょ

 そんだらごにょごにょして下さい」


「ティセ… それは・・・ 本気で言ってるのか?」


「もちろん、本気よ!」


「ま…まぁ、すぐにどうのこうのする訳ではないから…問題は無いだろうが…」


「それで、ギルドに登録をしててLV15以上の人… 

 あっ!他の『護姻環』着けてたら外して

 とにかく残りコスト15以上の兵士さんを、10人集めて欲しいんです」


「コスト15以上… いるだろうが、この村だけでは集まらないかも知れんぞ

【ハルヨシ村】の者も集めれば大丈夫だろうが…

 ノートン、この村にいる兵士で総コスト15以上の者を10名集めてくれ

 馬などの『護姻環』は外す事

 もちろん『狩り』や『炊事場』の連中はダメだ!

 足りなければ【ハルヨシ村】で募り、待機させろ

 こちらから送った人数を、あちらから向かわせてくれ

 早速馬を使えるな」


「はっ! 只今確認して参ります」


 こうしてノートンは確認作業に取り掛かった


「ノア様、こちらには総コスト15以上の者は6名おりました

 これより【ハルヨシ村】へ向かいます

 6名はもう送ってもよろしいかと

 それでは行って参ります」


「おぉ、頼んだぞ!」


「はっ!」


「スタン! スタンはいるか!」


「はっ!」


「こちらから6名の兵士を【ハルヨシ村】へ向かわせてくれ」


「はっ!直ちに!」


「ティセ、これで良いか?」


「はい!」


「それでは、明日の朝迎えに行くので待っててくれ」


「分かりました、ありがとうございます!」


 そして翌朝・・・



 次回 第27話『掘削』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る