第22話 恩義

 ケニーがLV上げに出掛けてから27日が過ぎた

 ティセは『異世界あるある』でお馴染み、転生者は日本食作りがちに挑戦

 皆が困る『醤油』や『味噌』は、どこかの転生者がすでに完成させてたりする

『米』もあるんだ 『日本酒』もあれば当然『みりん』もある

 案の定『送魔鏡』で検索するとヒットした

 それでも特定の物は無かったりするので、独自の研究は必要だったりする


 ティセはノアを尋ねて兵舎に来た


「領主様、ご飯まだでしょ?」


「あぁ、まだ食べてないが… どうした?」


「私が研究して作った、私の世界の食べ物なの

 食べてみて!


 ティセは作りたての『カツ丼』『鳥の唐揚げ』『ポテトサラダ』を並べる

 それを近くで聞きつけた兵士たちも寄って来る


「これは… どんな食べ物なんだ??」


「これはね、カツ丼っていうの 肉は『フォレストピッグ』なんだけど、

 味を付けて衣… 小麦粉と卵をつけてパンくずでまぶして、油で揚げるの

 それでたれ… それをソースと卵を絡めるて煮るのね 下のは米ね

 ちょっと食べてみて」


「私たちは米は食べないんだが・・・」


 一口食べたノアは、自分が信じられなかった 一口のはずが全部食べていた


「ティセ… これはお前が作ったのか?」 


「そうよ! 美味しかったでしょ?」


「あぁ… 美味かった… ではこちら・・・」


 次の物を食べようと、ノアは目を遣ったが、

 カツ丼を食べた時の反応を見た兵士たちは、

『鳥の唐揚げ』も『ポテトサラダ』も我先にと食べてしまい、全て無くなっていた


「みんな~ どうだった?」


「こんなの食べた事ないよ」「美味しかった」「最高だ!」「シンジラレナーイ」

「幸せだ」「ヤムヤムウマイ」「わいわい」「わっしょい」


 反応は上々だった


「ティセ… お前はこんなにも料理が得意だったのか?」


「いやぁ~それほどでも 分量を覚えて無かったりで… 結構失敗したけどね」


「米も美味かった!!」


「そう、この国の人は米を食べないって、信じられなかった

 米って高く売れるの?」


「いや、大したものではない 小麦の方が価値が高いのでな」


「それでね、もしこの領内で穫れたのを他所に売ってるのなら、

 止めて欲しいなって

 他国で安く売ってるなら、米は買った方が良いと思うの

『小麦』の方が高いのは、みんなが『パン食』だからでしょ?

 高いとは言っても所詮小麦だと思うのね

 主食になる物が増えたら、食料問題は起こりにくくなる気がするの

 これを期に、『米とパン』2大主食にしたら良いんじゃないかな?

 ちなみに『麺』ってのもあるけど、それはまた今度」


「そうだな・・・ こんなに美味いなら問題無いな

 ただ領内では作ってないし、王国でもやめた筈だ

 小麦の三分の二以下の値段なら、買ってもいいかも知れないが…

 正直私は美味いと思った… 皆はどう思うのか・・・」


「じゃあ今度、お米に合う料理を何品か作ります

 それで『試食会』をしましょう

 そうすれば『お米って美味しいんだ』って分かってもらえるから」


「そんなに種類が出せるのか? それは楽しみだ!」


「まだまだいっぱいあるんだから! じゃあまた今度ね!」


 ティセは満足して帰って行った

 ノアは、ノートンに話しかける


「ノートン、お前は食べたのか?」


「はい、とても美味しかったです」

 あんな料理は、食べた事がございません」


「私は、あの子供のティセが… 15は超えてるが…

 本当に15なのかと、信じられないんだ

 宰相様に伺ったが、本人は頭は良くないと言ったそうだ

 ティセは『謙遜』してるのかも知れんが、それにしても…だ

 ティセにとって、この村では… 世界が小さいのではないだろうか?

 もっと広い舞台で、活躍させるべきなんじゃないかと… 

 最近思うのだ・・・」


「・・・・・・

 そうかも知れません…が、

 神が… 神に代わる何者かの意思で、ティセを遣わしたのならば、

 あの子がこの村にきた意味が、何かしらあるのではないでしょうか?」

『勇者』は、勇者の意思で『魔王』討伐に赴くと聞きます

 ※ノートンは『勇者あるある、魔王討伐は、神や王のお願い』だとは知らない

 しかしティセからは、そのような話は一切ございません

 恐らく… 私見ですが、唯一ティセを縛るものがあるとしたら、

 ノア様への許可取りではないでしょうか?

 今までのティセの提案は、村にとって利益のある事ばかりでした

 ですから、思い付きでやりたいと思う事は、即実行してもらうのが良いでしょう

 然すれば結果も早く出る ティセも満足し、村も助かる…と、なりましょう

 ティセに3,4人付けて、金も行動も自由にさせるのはどうでしょうか?」


「・・・・・・ 確かにノートンの申す通りだ・・・

 実績から言えば、王国の誰よりも素晴らしい…

 恩に報いる形がティセの自由であるならば、是非叶えてやろう

 よし! それでは、近いうちに纏めよう」


「はっ!」



 次回 第23話『戦力』

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