第19話 改革

 もう一度ギルドに寄ったティセたちは

 その後昼食を摂り、昼過ぎには『王都』を出発

 夕方前には【タカミ村】に到着した

 ウィルは『赤兎馬』を厩へ

 ティセとケニーは、ノアの待つ兵舎へ向かう


「領主様~、ただいま~」


「おぉ!ティセ、大分早いではないか?」


「『送魔鏡』でお目当ての物が無ければ、こんなもんです!」


「そうか!でも… 何かしらは買えたんだな!」


 ノアは、ティセの荷物を見てそう言う


「はい!まぁ… まだ、実験をしないといけないから」


「そうか!頑張れよ」


「じゃあ、領主様、ケニーさん、ここに居ないけどウィルさん

 みんな今日はありがとうございました」


「あぁ、またな!」


 そう言うとティセは帰って行った


「して、ケニー… いかがであった?」


 ノートン他、兵士たちも集まって来る

 注目を浴びる中、ケニーは経緯を報告する


「はっ!先ず… スコットの『護姻環』ですが、こちらの7個です

 金額は『お嬢様の仰った通り、21,000ヨー』でございました

 そして、こちらが売却の代金ですが・・・」


 そう言うと懐から革袋を取り出し、皆の前のテーブルに置く

 中身が殆ど入ってなさそうな『その見た目』から、

 ノアら一同の表情は曇っていく

 ノアは革袋を逆さにする すると十数枚の硬貨が飛び出した


「ケニー・・・ 僅か物であったか?」


「…ノア様… 良くお確かめ下さい! ではございません!」


 ノアは、テーブルに出された『硬貨』をよく見ると

「!!!『10万ヨー…??』・・・」


「はい!合計で73万ヨーとなりました! こちらが買取りの明細でございます!」


 明細表を受けとるノア


「な、73万だと~」


「いぇ~い」「やっほい」「すげぇぜ」「さすがティセだぜ」「わいわい!」


 驚くノアと盛り上がる兵士たち


「『狩り』を始めて、たった5日だぞ・・・しかも1日に、各隊1回だけ・・・

 我々は今まで、どれだけの『無駄』をしてきたのか・・・

 しかもティセは『1日に5回でも6回でもできる』と言ってた…

 ノートン、これは早々に… しっかりとした『体制』を整えなければならん

 中途半端にやっていると、折角の成果が無駄になるやも知れん

 明日の昼過ぎに、ティセを呼んできてくれ」


「はっ!」


「みんな聞いてくれ! 

 ティセと相談して、我が領内の体制を今一度見直す事にした!

 明日の昼食後に『役付』は全員ここに集合 

 一般兵は、少数名を衛兵として村の警備を

 他は通常通り『拡張工事』に従事 以上だ!」


「はっ!」


 翌日の昼食後、ノートンはティセを連れてきた

 短期間で大金を稼いだ事に、ノアは感謝を述べる… そして本題に


「かくかくしかじかで、我が領内の戦力を含めた全ての体制を、

 今一度見直して、上手くいくように改めたいと思ってな、

 そこでティセに助言を求めたいのだ!

 例えばだが今回、スコットの求めに応じて、助手を都合10人に増やしたが、

 何か手直しする部分とか無いか?」


「手直しですか…『同じ仕組み』を【ハルヨシ村】でもやったらいいかな?

 それと… スコットさんのような10人組をもう5組で、全部で6組

 各村に3組ずつ、3組で魔物解体組 3組が2勤1休で、順に休む

 解体は、兵士さんの給食を作る時間を避けた方が良いけど、

 解体専用の場所を作るのであれば、関係ないかな?

 狩りは、3隊が1日2回 午前午後か、午後2回

 解体も、全てを22人でやるか、午前11人午後11人とかは話し合って

 兵士さんの給食組は『朝食のみ』と『昼と夜』の

『専門』で村人から雇えるなら、雇って下さい

 お金儲けの大事な部分です

 ここの部門の方々には、気持ちよく働いてもらいましょう!」


「なるほどな! これならば稼働を休む事無く、順番に休める

 しかも【ハルヨシ村】も全く同じ仕組みで・・・分かった」


「あのぅ、ちょっと良いですか?

 領主様は、、『5年は持たない、2年かも』と言いました

 その為に村を強くするんだと…

 ところで『兵力(軍事力)』と『経済力』どちらを優先すれば良いの?」


 不意の問いかけに対し、ノアは答えが出なかった

 それは『両方』大事だから… 

 現段階で『戦力』は無いに等しい しかしそれを支えるのは『経済力』

 この超絶短い時間ではとても答えられない・・・

 そう思ったノアは、一度ティセを帰らせる


「ティセ… 正直、どちらとも言えない… 皆で考えてみるから…

 悪いが、一度家に戻ってくれないか?」


「わかったわ、じゃあ、またあとで迎えに来てね」


 そう言うとティセは帰っていった


 ノアは一同に問いかける

「ティセが言ったように、どちらを優先させるのか?

 即答できなかったし矛盾するが、私の答えは両方だ…

 皆の意見をぶつけてくれないか?」


「やいのやいの」「違うだろ!」「がやがや」「そうだそうだ」「あーだこーだ!」


 しばらくの間、皆で言い合う

 そんな中ウィルが口を開く


「ノア様、ティセに聞くのが早いと思います

 どちらを優先させれば良いのかを、ティセは聞いてきました

 恐らくどちらの『案』もあるのでございましょう」


 ノアはウィルの進言を取り入れ、再びティセを呼ぶ


「ティセ、何度も悪いな!

 でな、先ほどの質問だが、ティセはどうするのが最善だと思う?」


「私なら・・・」



 次回 第20話 『準備』

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