第14話 乱玉

『村が強くなる為には、金が掛かる』

 そう言うティセに、王国宰相テリーは金額を問う


「あぁ、あれはね、パっと計算しただけだから、・・・

 少なくても・・・400万円…ヨー 多ければ多いほど良いけど」


「少なくて400万ヨーじゃと・・・ 結構掛かるのぅ…」


「金額だけ聞いたら400万円は高いけどね…

 おじいさん、1年は何日?」


「1年は366日じゃろ」


「じゃあ2年だったら、732日でしょ?」


「そうじゃのぅ」


「400万円だったら・・・ この前計算したんだけど・・・ 

 確か…毎日… ごせん…し・・ご…5千500円稼げば良いのよ

 以外と簡単でしょ?」


「簡単じゃと?… 簡単なのかのぅ??」


「なんでよ!簡単でしょうが!」


「儂には… 分からんのぅ?? 教えてくれんか?」


「じゃあ、今から狩りに行きましょう」


 ティセは、宰相テリー・領主ノアと部下5人と共に、

 村の東にある畑の、奥の森に入っていった


「領主様、何でも良いので、魔物を一匹狩って下さい

 どうせなら『食べられる』のが良いんですけど?」


「あぁ、分かった 食べられるヤツだな」


「30分ほど探したところで、兵士スタンがノアに耳打ちをする」


「ノア様、あちらに『ワイルダーボア』が2頭います」


「!そうか では、お前は・・・で それで・・・」


 ノアは部下に指示を出す

『獲物』を取り囲む配置で、徐々に迫る

 すると気づいた『ワイルダーボアが』2頭共に、ノアへ突っ込む

 剣を抜いたノアが、それぞれに打撃、斬撃をを与える


「よし!今だ!」


 囲っていた兵士が、ダメージを負った『獲物』の息の根を止める


「ティセ、これで良いか?」


「はい!大丈夫です!」


 兵士たちは『ワイルダーボア』の両足を縛り、持参した棒を通し

 担いで来た道を戻る


 帰りる途中で『ダークラビット』を発見すると

 ティセがノアに耳打ちする


「できれば… 生きたままで」


「… よし!」


『ダークラビット』から凡そ10mほど距離がある

 ノアは剣を抜き・・・ 振り下ろす

 数秒後・・・ 風が遅れてやってくる

 すると、遅れてきた『風』が『獲物』に届いた時

『獲物』は倒れた


「領主様、今のはどうなったんですか?」


 テリーが答える


「今のはな『空気の玉』が当たったんじゃ!」


「殺さないとなると、加減が難しいんだ」


「へぇ~ スゴー」


「では行こうか」


 捕えた『ダークラビット』をノアが拾い、村に戻った

 着いた一同は、兵舎の炊事場に獲物を運び込んだ

 炊事場担当のスコットを呼び、解体する


 数十分後、一通り解体を終え、部位毎に分けられている

 ティセはスコットに指示する


「これが『ワイルダーボア』の心臓です」


「スコットさん、お願いします!」


「はいよ~!」


 スコットは『心臓』を指で優しく確認しながら、ナイフを入れていく

 少しずつ切っていき、最終的には手の平に収まるサイズまでになった

 その肉の表面に、慎重に切れ込みを入れ、開いた所に指を差し込む

 指が何かを掴み、そのまま引き抜く それを洗ってティセに渡す


「皆さん、これが『乱玉』です 何だと思いますか?」


 ゴルフボールほどの玉を、テリーが受け取り、順番に回していく


「中に『100ヨー』が入ってるな」


「何かのぅ?」


「わいわい ガヤガヤ なんそれ! 分からん ???」


 ティセは説明する


「これは『乱玉らんぎょく』と言って『魔王』がお金に『悪い魔力』を込めて封じた玉です

 これを使って作られた魔物は、悪い事をするみたいです

 では、質問です 悪くない『魔物』は何ですか?」


 数分後、ノアが答える


「護姻環か?」


「はい、それ正解!」


「この『乱玉らんぎょく』は、今の所確認されてるのは2種類あるそうです

 中身が100ヨーと500ヨー 今回の『ワイルダーボア』は『100ヨー』でしたけど、

 もしかしたら500ヨーだったかも知れません これは運ですけどね

 これを『ジュリア(ギルド買取り部門)』に『送魔鏡』で売る事ができます

 大体、1.5倍から3倍 つまり100ヨーなら150~300 500ヨーなら750~1500

 この価格は『この状態の場合』だからね 3倍ってのは滅多にないみたいだけど

 もしこの玉が、欠けたり割れたりしたら、玉としての『価値』が無いから、

 中身を取り出せば、100ヨーか500ヨー これは普通に使えるお金だから安心して

 今のところ大丈夫ですか~」


 テリーとノアが会話する


「こんな事、王国でも知らんぞ」


「今まで討伐してた魔物に『金』が入ってたなんて、考えもしませんよ」


「いやぁ、勿体ないのぅ」


「・・・・・・」


 ノアがティセに質問する


「護姻環とこの玉は、どう関係するのだ?」


「詳しくは知らないけど『乱玉』の使い道が2つあって、

 1つ目は『乱玉らんぎょく』を何かうまく加工して… 『護姻環』になるそうです

 中に入ってる100ヨーを、これも加工なのか技術か知らないけど小さくして、護姻環に組み込むみたいです

 2つ目は・・・ ちょっと置いときます

 先に『ダークラビット』の話しをします

 こちらは、先ほどの『ワイルダーボア』と違って『生きて』います

【ジュリア】は、生きている状態の魔物なら『買い取って』くれます

『魔物センター』で販売している価格の、大体2割から6割らしいです

 弱っちい、多く捕まえられる魔物は、もちろん安く、希少な魔物は高いみたい

 だから、捕まえるのが簡単な魔物は殺さずに、捕まえた方が高く売れます

 ちなみに今回の『ダークラビット』は、ご飯になってしまいますけどね

 そして先ほどの2つ目は、『乱玉の中のお金』に込められた『悪い魔力』を抜き取って『清らかな魔力』を満たした上で、先ほどのように『生きて捕まえた魔物』の中の『乱玉』と『新しい乱玉』と交換するそうです 方法は知りませんけど

『清らかな魔力』が込められた『乱玉らんぎょく』を『聖玉せいぎょく』と言うそうです

 私たちが護姻環で呼び出す魔物の心臓には、その『聖玉せいぎょく』が入ってるみたい

 だから『悪さ』をしないみたいです・・・ と、こんな感じです」


 一同が感心している


「そこでね、私が提案するのは・・・」


 

 次回 第15話『自給』

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