第13話 道理

 ティセを呼びに、ケニーが訪れた

『何でも良いから』と言われたティセは『皮製の物入れ』を持ち、

 兵舎で待つ『おじいさん』の元へ向かった


「こんにちは! おじいさん」


「おぉ!もう一ヶ月くらい経つかのぅ?」


「そうね、もうそのくらい経ったかな?」


「食事はちゃんと摂っとるか?」


「・・・・・・まぁ… うん…」


「先ほど全部聞いたがのぅ… あれは王様が全部悪いんじゃ…」


「でも・・・」


「領主からも言われたであろぅ、泡沫国の現状を…」


「うん、聞いたわ…」


「遅かれ早かれ、この国はお仕舞じゃ お前さんがやる必要もないんじゃ

 最後の最後に、目に物見せてやるんで、そん時は笑ってやるが良いぞ

 まぁ、死んだら見れんがなぁ」


「ふふっ!」


「その時の為にも、今から準備しとるのは聞いとるな?」


「領主様から聞いています…」


「お前さんの頭をなぁ、借りたいんじゃ」


「私、そんなに頭良くないですよ?」


「儂らより、余程頭が良いぞ」


「でな、お願いした『お主の持ち物』を、見せてくれんかのぅ?」


 ティセは『皮製の物入れ』を差し出した


「これは一体、何に使う物じゃ?」


「これは『財布』と言って、お金を入れる物です」


「ほぅ『さいふ』とな 少し見て良いかのぅ?」


「どうぞ!」


 宰相テリーは『財布』を手に取り、色々な角度から観察する


「で、どう使うんじゃ?」


「ここを、こうこうこう すると開いて中にお金をしまうんです」


「ちょっと出して良いかのぅ?」


「はい!」


「これがお金じゃと? 種類が違うのは当然じゃが… 同じのは全く同じ…

 こ、こんなに同じに作れるんか…」


「そうですよ それで、これがお札でこれもお金です」


「紙が金なのか… 嵩張らなくて良いのぅ」


「この薄い『板』は何じゃ?」


「これは『カード』と言って、『カード』の種類で使い道が違うんです

 例えばこれは、お金を『銀行』…『銀行』って所でお金を預けたり出したりできる建物があるんですが、この『カード』を使って出し入れできるの」


「この中にお金が入るのかのぅ?」


「まぁ… 単純に言うと、そうです」


「凄い技術だのう!」


「そうですかね? こっちの世界でも『同じような物』売ってましたよ 競売で」


「え? そんな物があるのか? 『かーど』がかぁ?」


「カードじゃなかった… いやカードっぽかった 分かんないけど 似たようなの」


「いやぁ~、ありがとう 仕舞って良いぞ」


「はい」


「便利な物があるんじゃのう!」


「私からしたら、『送魔鏡』で便利そうな物、いっぱいありましたよ」


「でな、お前さんに『これ』を見てもらいたいんじゃよ」


 宰相テリーは1枚の紙をティセに渡した

【永世中立国ジュリア】の研究機関『ゼーク』の調査報告(非公式)


「これはなぁ【ジュリア】の報告書なんじゃが、一通り読んでくれんか」


「はい… 良いですよ」


 数分後ティセは読み終えた


「読みましたよ」


「それでなぁ、お前さんは『外乃者』なのかのぅ?」


「はい、そうですよ」


「随分とあっさり認めるんじゃのぅ」


「私は別に隠してませんよ」


「そうであったか・・・」


「ただね、おじいさん『違う世界』…を「いせかい」って言うんだけど、

 私の…元居た世界から~異世界に『転生』も『転移』も本当は、

 マンガ… マンガは… 作り手が『空想した話を書いた読み物』なの

 普通『転生』とか『転移』した人は、大体… 殆どが神様と会って、

 特別な能力とか、世界で一番強い何かを貰って、異世界に来るのよ

 凄く強い魔物が仲間になるとか、ちぎれた手足が元に戻る薬とかね

 私はこっちに来たけど、神様にも会ってないし、強い魔物もいないし

 だから『勇者』じゃないの 『商人』だけどね、商売してないけど」


「儂はのぅ、一度で良いから『外乃者』に会いたかったんじゃ…

 この世界にはお前さんが言う『勇者』がたくさんいるんだがのぅ、

 誰も… 恐らく誰一人として『魔王』を滅ぼせんじゃろう・・・

 何故なら『勇者』と同じ数だけ『魔王』もいるからじゃ

 奴らは儂ら人間には行けない『天界』で『神々や勇者』と戦ってると聞く

 だからお前さんに『魔王を倒してくれ』何て言うつもりは毛頭ないんじゃ

 其奴らで勝手にやっておれって話なんでなぁ」

 儂らの本分は、戦や魔物から『領民を守る』ただそれだけなんじゃ」


「おじいさんが言いたい事は分かったけど、私に何ができるって言うの?」


「読んで聞いて学んで知って覚えた『知識』

 知識を元に体験し、得た『経験』と『感覚』

 知識と経験で培われる『技術』

 技術を駆使して工夫する『知恵』

 それらの『要素』を加えた、お前さんの『発想』と『想像』じゃよ!」


「『発想』と『想像』… そんな事で… 私が役に立てるの?」


「うむ! 儂らはとても助かるし、皆を守れるじゃろう!」


「・・・うん、わかったわ! 私にできる事なら協力してあげる」


「分かってくれたか! ありがたい事じゃ!」


「じゃあ… 私が・・・ 例えば村の事で『ああして欲しい』とか『こうして欲しい』とかお願いしたら『おじいさん』と『領主様』は聞いてくれる?」


「うむ、村にとって役立つ事なら、できる限り叶えてやるぞぃ

 ただ、儂も領主も『貧乏貴族』でな、金はなるべく掛けん方法で頼むぞ!」


「ホント? ありがとう、おじいさん 思いついた時に、お願いするわ」


「金で思い出したんじゃがのぅ、お前さんが領主に『村を強くするのは簡単だと…

 それには金が掛かる』と言ったそうじゃが、一体いくら程じゃ?」


「あぁ、あれはね、パっと計算しただけだけど、・・・

 少なくても・・・」


 

 次回 第14話『乱玉らんぎょく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る