第11話 後悔

ティセは突然号泣し、手紙をクシャクシャに丸め、外に飛び出して行った

「おい! ティセ! どうしたんだ? 待つんだ!」


 突然の出来事に、ノア・ノートン・ケニー 誰も理解できずにいた

 ケニーが丸められた手紙を拾い、ノアに渡す

 ノアは丸められた手紙を広げ、手紙の頭から読んでいく すると…


 貴殿からの犯人の引き渡しの件ですが、

 ザースマ 嘘の咎で死刑

 ゲッカ 窃盗の罪で死刑 

 ギルド職員トニー 情報漏洩の罪で死刑

 王国兵士ケイン  反逆罪で死刑

 以上の事情により、ザースマ、ゲッカの両名を引き渡す事ができなく・・・


 読んでいたノアの顔がみるみる真っ赤になり、

 激怒いや激高しているのが、明らかに分かる


「何と言う事だ!!! ・・・・・王様・・・」


 再び投げ捨てられた手紙をノートンが拾い、ケニーと共に読む


「!!!!!!!!!!!!死刑だと!!!!」


「王様はあの場で『お主の好きにせよ』とおっしゃられたんだ!!」

 ザースマ・ゲッカは兎も角、ギルドの職員とケインまで・・・

 どうされてしまったんだ・・・ 王様は・・・」


 十数分沈黙が続いたが、ノアが口を開く


「ケニー、シスターの元へ護姻環を届けてくれないか?」


「…はっ!」


「私は少し… ノートン・・・ 少し頼む…」


「今日は…もう… お休みください」


「ん… あぁ… 頼む」


 ノアが兵舎を出ると、表はもう薄暗くなっていた

 拡張工事をしていた作業員も、終わり支度をしている

 そんな間を縫って、畑に出る

 静かな、とても静か過ぎる畑で、ティセは一人泣いていた

 慰めたいが、掛ける言葉がない… 見つからない


「ティセ… ティセ」


「私の… 私のせいで殺された・・・ 私が殺したんだ!」


「それは… それは違う! 殺したのは王様だ!」


「あの時… おじいさんにも… ケインさんにも『やりすぎ』だって言われた」


「・・・・・・」


「私… 私は… 許さない!絶対許さない! 殺す!! 王を… 絶対殺すわ」


「落ち着くんだ! 私も許せないんだ… 」


「言いたい事散々言って、調子に乗ったの… 説教してやったって… 調子に…」


「ティセ… 私もそうだった、人間てそんなもんだ…」


「りょ領主様、王… 王を… 王をこ 殺すの手伝ってお願い!お願いだから…」


「ティセ… 落ち着いて聞いて欲しい… 宰相様がな、以前こう言われたんだ」


「・・・・・・」


「『いずれにせよ泡沫国は亡ぶ』と、言われたんだ」


「なんで?」


「北方や西方の泡沫国領地が、ここ数年で次々と落とされているし、 

 貴族が何人も裏切って寝返ってる」


「・・・・・・」


「【ハルヨシ村】と【タカミ村】は、北に王都があって今は安全だ

 東側は森を挟んで山脈があり行けない ※行けなくはないが、手段がない

 西と南は深い森があって、調査は不完全だが大きい諸国は見当たらない


 つまり、王都が陥落おとされるまでは、我々の領地は安全なんだ

 王都は我々の『盾』だ! 2つの村の大きな『盾』になってもらうんだ 

 だから今の内に【タカミ村】を大きくしているんだ」


「じゃあ王都はいつまで持つの?」


「恐らく… 5年は持たないだろう 早ければ・・・ 分からんが2年もありえる」


「【ハルヨシ村】と【タカミ村】を強くすれば良いのね… そんなの簡単よ」


「? どうするんだ?」


「まぁ、お金が無いと無理だけどね」


「私は金が無いからな… 助けてくれ」


「いいわよ!」


 ティセの瞳から涙が消え、ほんの少しだけ笑顔が戻った

 闇落ち間際の少女を、救えたかどうかはノアには分らなかった


 

 次回 第12話『顛末』

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