第10話 手紙

 あの騒動から2日が過ぎた午後

 領主ノアが、部下のノートンと共にティセの元へ訪れた

 大まかな経緯は分かったものの、本人の口から聞く為に


「・・・では、そのようにして宰相様とケニーを知ったのだな?」


「はい、お二人共とても親切にして下さいました…」


「そうか… 宰相様にも伺ったが、ケニーを上手く問い詰めたらしいな」


「え! はぃ… ケニーさんも喋ってくれて良かったです!」


「実はな、裁判で私が質問しただろう」


「はい・・・」


「あの疑問を言ってくれたのは、このノートンなんだ」


「あっ!そうだったんですか? ノートンさんありがとうございます!」


「本当に無事で良かったな」


「でだ… 賠償の内容は決めたのか?」


「決まってます… 後は、書くだけです」


「そうか… 分かった これは君と王様の問題ではあるが、

 私と王様の問題でもある なので内容は確認させてもらうが良いか?」


「はい… 構いません」


「よし、できたら私の所に届けてくれるか?」


「はい、分かりました」


 こうして2人はティセの元を後にし、宰相:テリーからの要望であった『村の拡張工事』をこの日から取り掛かった


 ノア男爵領【ハルヨシ村】の人口は、約1800人 

 総兵士数は200足らず

 この内兵士約100人、領民から約200人を使い、村の拡張を急ぐ


 翌朝ティセは、賠償内容を記した手紙を持参し、ノアの元へ訪れる


「領主様、おはようございます!」


「あぁ、おはよう! できたのか?」


「はい! こんな感じでいこうと思います」


「よし、確認しようか… ふん、ふん… …こんなもんで良いのか?」


「はい! それで良いです!」


「それでは、部下に届けさせよう」


「え? 領主様、良いんですか?」


「あぁ、構わんぞ 元々用事もあったからな」


「ありがとうございます 領主様?」


「どうした?」


「村で工事が始まりましたけど、何か建てるんですか?」


「【タカミ村】を【ハルヨシ村】くらいでかくするんだ」


「ええー!ほんとに?じゃあお店とかできますか?」


「ああ、色んなお店ができるかもな」


「へ~え、じゃあお金もいっぱい稼がなきゃ」


「何か目当ての物があるのか?」


「まぁ~ それは内緒! それじゃ領主様またね~」


「あぁ」


 ティセは帰って行った


「ノートンはいるか?」


「はっ!」


「ケニーを呼んでくれ!」


「はっ! しばらくお待ちください」


 数分後、ケニーがやってくる


「これとこれ2通を、王国の宰相閣下に届けてくれ」


「はっ!畏まりました! して返信は頂きますか?」


「いや渡すだけで良い」


「私の赤兎馬を使って良い」


「ありがとうございます それでは行って参ります」


「うむ! 頼んだぞ」


 こうしてティセの手紙を携えたケニーは、王国へ向かう


 それから半月が過ぎた頃の午後、王国の兵士が『荷物と手紙』を持参し訪れる

 ノアはティセを呼び出し、直接『荷物と手紙』を受け取らせる


「それでは、確かにお届け致しました」


「ありがとうございます!」


 そして王国の兵士は帰っていった


 ティセは手紙よりも『荷物』が気になって仕方がない

 布袋を逆さまにして『荷物』を取り出す

 中からテーブルに出された物は、現代で言う『指輪のケース』が4つ

 それぞれにメモが貼ってあり、

『ゴブリン』『コボルト』『猫又』『アハルテケ』と書かれてる


「やったー!!! この子たちが欲しかったの~!! うれしい!」


「ねぇ!領主様! どう? これ、綺麗でしょ?」


「あぁ!良かったな!」


「領主様! 私ねこの子たちと商売するの!」


「商売?? では、ティセが就いた職業は『商人』か?」


「へへん! そうなの! 私は商人になってたのです!」


「ほぅ! どんな商売をするんだ?」


「ええ~、まだ内緒! 村も大きくなるし、色んなお店も必要でしょ?」


「そうだな! 美味い酒場も必要だぞ」


「私は、酒場はやりません!」


 そして同封された手紙を読む


「何々… この度の騒動にて・・・ 大変な・・・・

 お詫びの・・・・ ふんふん 御希望の・・・

 何卒・・・・   御受領・・・  申し上げます」


「王様も、物分かりが良いわね」


 続く文章がティセの目に映った瞬間


「何よ… これ・・・ うそよ・・・ そんな・・・ うぁ~ん」


 ティセは突然号泣し、手紙をクシャクシャに丸め、外に飛び出して行った


 

 次回 第11話『後悔』

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