第 7話 犯人

 別室に移され、誰もいない部屋で宰相おじいさんが来るのをじっと待つ

 小一時間経った頃、宰相おじいさんが到着した


「おぉ!お前さんか、何故にワシが『宰相』だと分かった?」


「おじいさんも馭者うんてんしゅさんも、とっても親切だったから」


「親切だったからじゃと?」


「はい!」


「どういう事じゃ?教えてくれんかのぅ?」


「親切もの親切なら気になりませんが、

 を越した親切は、返って気持ち悪いものです」


「気持ち悪かったかのぅ・・・」


「気持ち悪いは言い過ぎですけど、何か裏があるんじゃないかと勘繰ります」


「それでどうしたんじゃ?」


馭者うんてんしゅさんに聞いたんです 貴方たちは何者って」


「そしたら?」


馭者うんてんしゅさんは、最初はごまかしてました」


「どうやってあやつに喋らせたんじゃ?」


「腕を掴んで喋らないと『大声出すぞ』って静かに脅したんです」


「・・・・・」


「それでお二人の事を聞きました」


「お前さんは、頭がええのぅ」


「聞いといて良かったです こんな事になってしまって…」


 それからティセは、事の経緯を全て事細かに説明した


「ふむぅ… そんな事になっとるとは…」


「それで一番の問題は、衛兵ガードマンさんが嘘を付いた時・・・」


「そうか… では、落とし物を検分するかのぅ」


 そうして数時間が経過し、検分の結果が出た


「【王都トーラ】で全ての遺失物を検分したが、無かったそうじゃ…」


「そんな・・・」


「街は広いので、詰所は幾つかあっての 全ての詰所で検分したが…」


「…それじゃあ、昨日のあの時間帯に勤務していた衛兵ガードマンさんは分かりますよね?」


「そうじゃな、確認してみるかのぅ」


 リストアップされたのが65人、休みが15人 招集され5人組で部屋に通す


「いない…」


「違う…」


 次々と部屋に通されるが、あのが見つけられないまま

 とうとう最後のグループが入室する

 先頭の衛兵ガードマンと目が合った瞬間・・・


「あーーーーっ!!!あなた昨日の・・・ 出勤で良かった!!」


「!?あ?はい? ああ、昨日の方ですね 落とし物を届けてくれた」


 残りの4人は帰され


「お主はこのから、遺失物を預かったんじゃな?」


「はっ!確かにお預かり致しました!」


「しかしな、その遺失物がどの詰所にも無いんじゃ」


「そんな事は… 勤務後に確かに届けました… 南門Bの詰所です」


「今のところ、お前さんの容疑は晴れたようじゃ!」


「でも… 今度はこの衛兵ガードマンさんが・・・」


「そうじゃのぅ… だが、一応王様に報告しておくか」


「おじい…宰相さん、確証を掴むまで待って」


「んんん、だがのぅ・・・」


衛兵ガードマンさん、あの指輪は何か知ってますか?」


「あの指輪は『護姻環ごいんかん』です 魔物を使役する為の物です」


「なんと!王様が探しとるのは護姻環ごいんかんかぁ?」


護姻環ごいんかんは指輪とは限りません 色々な形状の物があります」


「ほれ!わしの『指輪』を見てみぃ こんなやつじゃろ?」


「そう・・・こんな質感・・・ 綺麗だった・・・」


「宰相閣下、南門Bの詰所に12を洗ってみて下さい」


「それと…おじいさん、王様に魔物か聞いて!

 それと今日の朝8時から今までに『送魔鏡』を使った人で『衛兵ガードマンさん』が居ないか調べて まだあるわ、ギルドに…聞き取りをして あとお腹すいた」


「わしの仕事が増えるのぅ 『詰所と魔物』はすぐ分かるじゃろうが、『送魔鏡』を調べるのは【ジュリア】に問い合わせんといかんのでなぁ、時間かかるぞ」


「じゃあ、早くして お腹すいたから」


 午前5時頃 裁判開始から13時間経過

 運ばれてきた食事を、2人が食べてる最中に宰相テリーが戻って来た


「王様の護姻環ごいんかんは、何と『サキュバス』じゃ!」


「!!!」


「それっておいくら万円ですか?」


「マンエン?サキュバスの値段は知らんが、LVが高いので百数十万ヨーだそうだ」


「百数十万ヨー!!! そりゃ一大事なワケだ」


に『サキュバス』なんぞ買いおって・・・」


「次に南門Bの詰所には10人じゃ」


「・・・」


「【ジュリア】に問い合わせもしたぞぃ あと2時間くらい掛かるそうじゃ」


 2人は食事を終えた


「【ジュリア】から連絡が来るまで私は寝ますね・・・」


「仕方なかろぅ、起こしてやるから寝てなさい」


 ティセはすぐに眠りに落ちた


 そして時間は過ぎ午前7時16分【ジュリア】から調査結果が届いた


「そら!起きるのじゃ!【ジュリア】から連絡が来たぞぃ」


「ふぇい… ふむぅ… 」


「それとギルドがなぁ・・・・・じゃ」 


 23枚の紙に記された利用履歴 かなりの情報が記載されている

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  泡沫国  設置場所【王都トーラ】・・・・利用者検索結果」

 総利用者数  205

 内  民間人 182

 内 国家所属  23

  ^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

「国家所属が23人いるんじゃが、その中の8人が衛兵じゃ

 その8人の内、2人が南門B詰所にじゃ

 その2人の内1人が『商品鑑定』をして、

護姻環ごいんかん=サキュバス』じゃった

 犯人は・・・『ゲッカ』と言う者じゃ」


「やりましたね… 疑いは晴れました!」


「ちょっと待ってよ これでじゃないんですからね」


「おじいさん!そいつを連れて来て 衛兵ガードマンさんに確認してもらう」


「隠れて顔を確認しましょう」


「わかった、連れてこよう」


「あそこの隙間に隠れとるんじゃ」


「はっ!」


「あとね、これが終わった後が本番だから…王様との」


「余り、やりすぎるでないぞ!」


「・・・・・・」


 40分後、衛兵ガードマンが『ゲッカ』を連れてきた 部屋に入室させる

 隠れた2人は、ゲッカの顔をよくよく観察する

 数分後に退室させ、おじいさんが戻って来た


「どうじゃった?」


「はっ!あの男に間違いありません! 私は渡しました」


「そうか!よしよし みんなで行こうか」


 そうして時間は午前8を過ぎ、裁判から16時間 連行から22時間が経った

 3人は犯人である『ゲッカ』を連れ、王様の元へ向かった


 

 次回 第8話『弁明』

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