第 4話 何者

 嫌がらせをされたティセは、ギルドを後にする


「なんなのあいつ… 折角ここまで来たのに、結局買えなかった・・・」

 時間的にもう買えない・・・ 涙が溢れてくる

 もう一泊するか、帰るべきか、馬車は待たせてる、宿屋代は… 食事…

『逡巡する』『途方に暮れる』とは、まさにこの事だ


 しばし立ち尽くしていると、後方からまたが聞こえてきた


「ざーす、ざーす、想定より安く買えざーす、さぁ帰るざーす」

 ガシン わざとらしくぶつかってきた


「うわっ!」


 倒れこみ、右肩を地面に打ちつけた


「うぅ~ い、痛い~・・・」


「暗くて見えなかったざーす」


 私は睨みつけた


「まぁ~何て悪い目つきざーすか、行くざーす」


 悪態をつきながら歩いて行く

 余りの事に気が付かなかったが、が乗る馬車が待機している

 キャビンのドア前に『従者』のような女の子が立っている

 女の子には『?』があるように見える

 が女の子に近づくと激しく喚いて、ぶったり蹴ったりしている


 「あんたね~」


 ちょっと言ってやろうと態勢を変えた時、足元に『光る物』を見つけた

 一対のリングが小さいリボンで結ばれている

 ゴールドやシルバー、プラチナとも違う 金属とガラスが融合したような素材

 透明感のある淡いブルーがとても美しい

 そのリングには、100表面おもてめんが埋め込まれてる?? 

 通常の100ヨー硬貨より、気がする

 もう片方のリングには100裏面うらめん

 そのリングを拾い立ち上がると同時に馬車は行ってしまった

 私はガードマンさん(衛兵)を探すのに、辺りを見回す

 それらしい人がいたので、小走りで近寄る


「すみません、ガード…いや 衛兵さんですか?」


「…えっ!はいそうですが・・・」


「ギルドの前で拾いました 落とし物です」


「はい、お預かりしますね ご丁寧にありがとうございます!」


 衛兵にリングを渡す


「それと、南門の方向に本屋さんはありますか?」


「はい!途中右側にありますが、もうそろそろ終わる時間ですよ」


「ありがとうございます」


 南門へ向かう途中で、店じまいしている最中の書店を見つけた


「あっ!ここだ、終わるとこごめんなさい!」


「いいよ~、何をお探しで~?」


「ギルドの職業とか『送魔システム』関係で魔物とかの本はありますか?

 それと・・・安い絵本とかあったら、欲しいんですけど・・・」


「ギルドの…職業~っと、これね 魔物は~これだ! あと… 絵本はこれだ!」


「おいくらですか?」


「職業は~800ヨ~で、魔物は~800ヨ~だ、合計1600ヨ~でい~よ」


「絵本の代金は・・・?」


「大分古いからねぇ~ おまけであげるよ」


「本当ですか?ありがとうございます!」


「い~よ~、また来てね~」


 店を後にして、馬車へ急ぐ


 南門を出て、馬車に着く


馭者うんてんしゅさん、遅くなって本当にごめんなさい」


「いいえ、お気になさらず ですから」


「このまま【タカミ村】まで送ってもらえるんですか?」


「はい!お送りしますよ」


「1つお願いがありまして…」


「何でございますか?」


「【ハルヨシ村】に寄ってもらいたいんですけど?」


「畏まりました!それでは向かいましょう」


「お願いします!!」


 道中、本を読みながら3時間弱・・・


「お嬢様【ハルヨシ村】に到着致しました!」


「は~い!今降ります」


「では、こちらでお待ちしております」


「あの~、私が奢り… 御馳走しますので、食事を摂りましょう」


「お気遣い頂きありがとうございます しかし大丈夫です」


「【タカミ村】まで行って、6時間位掛かりますから」


「しかし・・・」


「あの酒場で一人で食事は、怖いですから、ねっ」


「は…い、そういった事でしたら」


「良かった!」


 そして2人は、宿屋1階の酒場に向かった

 酒場に入ると、昨夜のように店内は賑わっていた

 中央奥にある大きいテーブルの一角が空いていた


「お嬢様、あちらが空いていますよ」


「良かった!」


2人は空いてる席に座り、注文を済ませる

そのテーブルで食事をしていたスキンヘッドの男が、ティセに話しかけてきた


「お嬢ちゃんは、旅でもしてんのかい?」


「王都に行って、ギルドの登録をしにいった帰りです」


「じゃあ職に就いたんだな? 何の職だ?」


「色々と迷ったんですけど『商人』にしました」


「商人って事は、スキルの『鑑定』は持ってんのかい?」


「さっき登録したばかりですよ・・・ まだ何にも覚えてませんよ」


「そりゃあそうか!ごめんな それで何の商売を始めるんだ?」


「えへへ、内緒!」


「なんだよ!ケチなお嬢ちゃんだな… 全く…」


ホール係のエルフが、食事を運んできた

2人は食事を摂りながら、男の話を聞く


「俺たちはここにいる10人でパーティーを組んでいる冒険者だ

 自己紹介が遅れたな 俺は『勇戦団』リーダーのフォルだ!

 職は『戦士』をやっている

 戦士でも『タンク』って言ってな、敵の攻撃を引き受ける『壁』の役だ!

 他には・・・」


 フォルは『勇戦団』のメンバーの紹介をしてくれた

 『勇戦団』メンバー

 フォル  戦士LV12 (タンク)※リーダー

 ローズ  戦士LV10 (アタッカー)剣

 ミラー  狩人LV11 (アタッカー)斧

 ベイカー 狩人LV10 (アタッカー)槍

 ゲイル  商人LV12 (中距離)  弓

 カレン  魔法使いLV15(後衛 攻撃)杖

 テス   シスターLV11(後衛 回復)杖

 ルダ   ネクロマンサーLV16(アンデッドを使役し、戦闘に参加させる職)

 ダンカン シーフLV14(攪乱するくらいで、基本戦闘には参加しない)

 デニス  リフターLV21(攻撃不参加)

 ※リフターとは『荷物持ち』の呼び名

 ※行き帰りの食料や各種アイテムの携行 ドロップ品や戦利品等の運搬等

  リフターの能力が、パーティの収入を左右するほど、とても重要な職業


「以上が『勇戦団』のメンバーだ!

 ここ1年くらいは、この村(ハルヨシ村)を拠点にしてるんだ」


「なぜ王都じゃないんですか? 色々とあって便利だと思うんですけど?」


「そりゃあ簡単な話だ ゲイル、説明してやってくれ」


「良し、俺が教えてやろう 確かに便利は便利なんだが、全部が高いんだ         

 食料、宿、通行税、諸々全てだ この村の1.5倍から3倍程高いな」

 

「へぇ~ 王都ってそんなに高いんですか…

 皆さんは、どんな事やってお金を稼いでるんですか?」


「主に魔物討伐の依頼だな 王都ほどではないが、村にもギルドがあるんだ

 討伐達成の報奨金とドロップ品や戦利品の売却だな 肉や素材も売れるぞ」


「ドロップ品や戦利品って、どんな物があるんですか?」


「魔物ってな、自然界に元からいる魔物と、魔王が作り出した魔物、

 大まかに分類したら2種類いるんだ

 魔王が作り出した魔物を倒した時に、稀にアイテムを落とすんだが、

 それが『レアドロップ品』だと高値で売れたりするんだ

 金や宝石・武器防具の装備品は勿論、薬の類もあるな

 スキル書や魔道具だと激アツだ 物にもよるが、数千から数十万の儲けになる

 まぁ毎回レアアイテムをドロップする訳じゃないからな

 武器や防具、装飾品を身に着けた、人型の魔物もいるんだ

 そいつらを倒して、身ぐるみ剥がして売っぱらうんだよ それが戦利品だ」


「今日は、何か良い物取れましたか?みんな楽しそうだから」


 フォルはニヤニヤしながら、ティセに小声で話す 


「今日は『ゴールドダガー』を手に入れてな、武器としては大した物ではないんだ

 ただ、金で作られてるのが特徴でな、貴族や金持ちが観賞用で高値で買うんだ

 今回はそれだけじゃねぇ!『魔道具』の『マジックバッグ』をゲットしたんだ」


「『マジックバッグ』って、アイテムがたくさん入れられるバックですか?」


「なんだお嬢ちゃん、良く知ってるな!

 これがあると、リフターの負担が軽くなるんだ なっ!デニス」


「そうだな… リフターは食料やら戦利品を何とか工夫して運ばなければならない

 持てる数が多ければ、それだけ戦利品を多く持って帰れるからな

 パーティー全体の収入に関わってくるんだよ

 今回手に入れたのは『ポーチ』と呼ばれるタイプのバッグだ

 どれだけ大きい物が入るかは分からんが、12個のアイテムが収納できる

 バッグとしてのランクは小さい物だし、収納数も少ない方だがな…

 商人をやるなら、『マジックバッグ』は必須だぞ!」


「お嬢様… そろそろ…」


「あぁ… そうですね…

 皆さん、色々教えてくれてありがとうございました とっても勉強になりました

 またお話聞かせて下さいね」


「おぉ、気を付けて帰んなよ

 俺たち『勇戦団』は、しばらくの間はこの村で稼いでるからな

 宿も飯もここにいるからな またこの村に来た時には訪ねてこいよ」


「はい!それじゃあまたね!」


 食事を終え、馬車に戻ってきた

 キャビンに乗り込む際


「痛てて、あ~」


「どうかなされましたか?」


「まぁ… ギルドで色々あって、それで転んで右肩をちょっと・・・」


「ちょっとよろしいですか?」


 馭者は右手を、痛めた右肩にかざす


「ヒール」


 ホワンホワン温かい感じが広がり、徐々に痛みが無くなってゆく


「どうですか?」


「はい!? 全く痛みは無くなりました!」


「良かったです!」


「それは魔法ですか?」


「はい!僧侶のLVを少しですが持っていますので」


「凄いですね!」


「いいえ、大した事はございません」


「僧侶もよかったなぁ」


「何でしょうか?」


「いいえ!では行きましょうか!」


「畏まりました!」


 そして【タカミ村】へ向けて出発した


「お嬢様…お嬢様・・・ 【タカミ村】に到着致しました」


「ふぇい・・・ ふぁい?はい!… 今降ります!」


「家の前までお送りします」


「はい…」


 2人で歩き出し・・・ 家へ向かう途中


「あの~2つお伺いしたい事があるのですが、良いですか?」


「はい!何でございますか?」


「あのお馬さんは何ていう名前ですか?」


「あの馬は『アハルテケ』です コストは☆☆(2)なんで使いやすいです」


「とっても速いんで、気に入りました!」


「馬としては、と比べたら速いですが、もっと速いのは結構かなりいますよ」


「この子より速いなんて、ヤバ…凄いですね!」


「空を飛ぶ魔物は、もっと速いですから 妖精の類は除きますけど」


 私は馭者と目を合わせながら、こう質問した


「もう一つは・・・ 貴方とあのおじいさんは、一体何者ですか?」



 次回 第5話『連行』

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