第 3話 王都

「お嬢様、お嬢様、【王都トーラ】に到着致しました」

 

 うっかり寝てしまい、高級馬車を満喫する間もなく着いてしまった


「は?はい、起きました~」


「出て目の前がギルドでございます」


「ありがとうございます!」


「お帰りの際は、ここを真っすぐ行きますと南門がございます

 門を出て右側に居ますので、そこでお待ちしております」


「帰りも乗って帰っていいんですか?」


「はい、大丈夫でございますよ」


「ちょっと時間が掛かるかも知れませんよ・・・」


「はい、お待ちしております」


「あぁ、そうだ、おじいさんから貰った食事です 良かったら食べて下さい」


「頂いて宜しいのですか?」


「はい、良いですよ!」


「ありがたく頂戴致します」


「じゃあ、行ってきます」


「行ってらっしゃいませ」


 馬車を降り、真っすぐ歩いて行く


「これがギルドか… 緊張する~」


 間口はとても広く、城門ほどの馬鹿でかいドアは開け放たれている

 入っていくと頭上は「吹き抜け」になっている

 中央は立ち飲みができるテーブルが十数台

 パーティらしいグループやソロっぽい人

 戦士や魔法使い、鎧やローブを着た人も、農民の親子もいる

 まるで「コスプレ」のイベント会場にいるみたいだ

 まばらに30人ほどいるが、広いせいか圧迫感はほぼ無い

 時間的な問題だろうか? やや寂しい印象だ

 左側の壁には、採取や雑用などの単純そうな作業の依頼書が

 右側の壁には、魔物の討伐依頼書が貼られている

 中央奥に窓口が5つ、いや4つだ 

 一番左にはどでかい「黒いスクリーン」がピンと張られている

 その手前はポールで区切られ「立入禁止」になっている


「う~ん、システムがわからん」


 辺りを見回すと案内係のようなお姉さんが居たので話しかける


「すみません、ギルドに登録しに来たのですが…」


「はい、ご職業はお決まりでしょうか?」


「一応決まってるんですが、職業の一覧表とか本とかってあります?」


「申し訳ございません こちらでは用意はなくて… 街の書店にはございますよ」


「いいえ、大丈夫です! 確認しただけなんで で、決まってまして」


「左様でございますか、一番右の窓口へどうぞ」


 誘導され、一番右の窓口で声を掛ける


「スミマセン、ギルドに登録したいんですが」


「はい!ありがとうございます こちらに記入をお願いします」


「…名前…主な所在地…現在の職業…希望の職業っと、はい、終わりました~」


「それでは登録料が『1万Yore(ヨー)』になります


「はい… 一万円っと」


 このYore(ヨー)は、全世界共通の通貨だ

 『Yore(ヨー)』が未だに慣れない私は、頭の中で『円』に変換しているのだ

 硬貨は10、50、100、500、1000、5000、10000、100000の8種類 紙幣は無い

 1と5は廃止されたが、流通はしてるしまだ使える


 で「1万ヨー」は、非常に高い

 【タカミ村】のガードマンさん(門番)に聞いたら月給『約2万ヨー』だそうだ

 部分だけで判断したけど、私はお金の価値を分かってない

 何故なら、村ではお金が必要無かったからなの

 村人は給料も無い、お店も無いので、払う所も無い

 子供達には、時間になれば食事が出される

 大人達は、農作業や狩りには出る

 売る為じゃなく、自分たち村人が食べる為の物

 それでも村の兵士さんに、細々した雑用や用事なんかを頼まれる事がある

 大人も子供も「ヒマだから良いよ」的な感覚で手伝う

 子供はいつでも「ヒマ」ですけどね

 まぁ使い道のない「お小遣い稼ぎ」をしているようなもんだ

【ハルヨシ村】や【王都トーラ】に住んでれば価値が分かるんだろう

 こんど調査しておこう


「こちらの窓口へどうぞ!」


 結構スムーズだ 隣に移る


「ギルドの紋章ですが『眼球』か『手の甲』の2通りございますが?」


「が、眼球ですか!? どんな違いがあります?」


「『眼球』ですと、現在のステータスやコスト、次のLVまでの経験値を任意で確認する事ができます 料金は5万ヨーになります」


「5万ヨー… 手の甲だとどうなります?」


「ギルドの紋章を、手の甲に刻印します 諸々の情報は

『送魔システム SLK-818』でご確認できます 料金は無料です」


「はい… 手の甲でお願いします」


 考える余地もなく1択だ・・・


「それでは左右どちらかの、手の甲を上にしてカウンターにお出しください」


 私は右手を差し出した

 窓口の職員は、右手の甲に『ドライヤー型』の何かを押し当て


「動かないで下さいね」


 親指部分にあるボタンを押す

 スィーーーーン

 気持ち熱いくらいの感覚で終わった


「はい!終了致しました!」


「ありがとうございました! あのぅ『送魔システム』を使いたいんですが」


「只今ご案内致します…」


 お姉さんはカウンターから出て誘導してくれた


『立入禁止』手前のブースだ そこに腰を掛ける


「まず、こちらとこちらのボードに認証する装置がございます」


 左右を確認すると、仕切り板の部分に赤く◎が書かれ

 そこに手の甲を押し当てるようだ


「刻印した側の手の甲を、ここに押し当てて下さい」


 右手の甲を押し当てる

 すると正面に置かれた『黒い鏡』に文字がハッキリと出た


 こんにちは、ティセ様 

 ※村の住人は「ちせ」を「ティセ」と呼ぶので、結局「ティセ」にした

 その文字の下に正方形が4分割され、それぞれに

『ギルド本部』『売買』『魔物センター』『商会』とある


「ティセ様ご希望の項目を、タッチしてください」


「これを触っちゃって良いんですか?」


「はい、左様でございます こちらを『送魔鏡そうまきょう』と言います」


「魔物が欲しいのですが『売買】と『魔物センター』はどちらですか?」


「どちらも可能ですが『魔物センター』はLV1から、魔物によっては高LVまでいます

 高LVになるほどお値段は高くなっていきます 取り扱いは魔物センターです」


「『売買』だとどうですか?」


「はい『売買』は個人の出品で『競売』と『固定売』があり、魔物は全てLV1です」


 あぁ、オークションかフリマね


「『競売』は少額から始まり、入札が増える毎に金額が上がります

 したがって、希少で珍しい魔物は高額になります 締め切りは毎日午後7時です」


「一方『固定売』は予め決められた価格で、即時購入する事ができます」


 「(まんまそのままだね…)」

「ですので、お時間がある場合は『魔物センター』と『固定売』で最低価格をチェックしながら『競売』で入札が無い、安い魔物を狙うのが、良いと思います」


 ある程度、操作方法を教えてもらい


「あと2つ良いですか?」


「はい!」


「ここの営業時間と『送魔鏡そうまきょう』を使える時間は?」


「ギルドは午前8時から午後8時に閉店です 買取り部門は24時間です

送魔鏡そうまきょう』は、今日のようにお使いになる方が他に居なければ、

 閉店まで大丈夫ですよ 人数にもよりますが、お待ち頂いてる場合は、20分位で交代してもらえれば」


「なるほど… ありがとうございました ちょっとやってみますね」


「はい!どうぞごゆっくり」


「じゃあ見ていこう!

 まずは『魔物センター』から、高レベルは多分予算的にムリっぽいから、

 コスト1 LV1 ソートして…」


 魔物は、使役者の持ちコスト以内で最大『10体』まで使役できる

 魔物にはコスト(☆)がある

 自分が就いた全ての職業レベルの数が、総コストになる

 就いた事のない職業のコストは加算されない

 例)戦士LV10=総☆10、☆10の魔物なら1体、☆1の魔物なら10体

 例)戦士LV10・僧侶LV5だと、総☆15 ☆15以内で10体までだ

 一度就いた職業は、LVを1つ以上上げないと転職できない


「コスト1でも結構な種類がいるなぁ」

「うわ~ 魔物図鑑とか無いと… う~ん」

「これが… 戦闘… 狩りと採取… むむむ」


 同様に『固定売』もチェックしていく


「最安は… 同じだね…」

「残金は3200ちょっと…」

「あぁ~、一つだけか~」

「候補は4つ、決められない~」


 ギルドに入ってから2時間半が経過した頃

 騒がしい一団が入ってきた


「あーこちらでござーしたねぇ」

「何回来ても、汚いとこざーすね」


 部下らしい連中に案内された男が、すぐ後ろにつくと私の右腕を掴み

「早くどくざーす」


 後方に引っ張る

 ビックリした私は


「口で言えば分かりますけど!」


「何を言ってるのざーすか? 私は大事な用事があるざーす」


「わかりました! ログアウトしますから!」


「早くするざーす」


「・・・・・・・」


「子供は早く帰って寝るざーすよ」


 ティセは怒りながらギルドの外に出る


 

 次回 第4話『何者』

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