第 2話 老人

 乗り合わせたおじいさんが、口を開く


「お前さんは、何処へ行くんだね?」


「私は昨日15歳になりましたので『王都』のギルドに行きます!」


「成人したのかい?おめでとう」


「ありがとうございます!」


「何かやるのかい?」


「はい、戦士か商人か… たくさんあって迷っています」


「何の為にやるんだい?」


「まずは死なない為です」


「死なない為? 生きる為ではなく死なない為?」


「はい!死んだらそこで試合終了だとパパ…父に教えてもらいました」


「ちょっと何言ってるのか、じいさんには分らんが、恐らく深いんだろう」


「あとはお世話になった方々に、御恩を返していきたいです」


「殊勝な心がけじゃ」


(異世界)だと無双できるって噂ですけど、特別なスキルも無いし、 聞いた話と違いすぎるし、スライムいないしちょっと違うんですよね!」


「ま、まぁ落ち着きなさい!さっぱり分からん」


 乗り合い馬車のオヤジから

「休憩するよー」の声が

 私とおじいさんは乗り合い馬車から降り、

 縮こまった体を伸ばしたり反ったり解放させる


「うーん、気持ち良い」


 おじいさんが、乗り合い馬車の進行方向の先を指さす


「あそこに見えるのは【ハルヨシ村】だ【タカミ村】より大きいぞ」


「あぁ、本当だ!!」


「陽も落ちてきた あそこで一泊して、明日の朝出発じゃ」


「このペースで2日か『王都』に行くのも結構大変だ」


 おじいさんがオヤジに出発を促す


「もうええじゃろ 出発してくれ」


「はい、分かりましたよ・・・」


 オヤジは渋々と返事をし、全員が乗り込んだ事を確認後出発した


 前回の休憩から何時間経ったのだろう 辺りは既に真っ暗だ


「着いたぞー」オヤジの大声が響いた


「よし、降りるぞ」


 おじいさんが私に促すが、『王都』までの料金を払ってるので腑に落ちない


「これで行った方が安いんですよ・・・」


「大丈夫じゃ!これより早いのがあるんでの 料金も大丈夫みたい」


「大丈夫みたいって何なの?」


「ほれ、ほれ、早ようせい」


 二人が降りたのを確認すると、乗り合い馬車は行ってしまった


 門番に何かを見せ、耳打ちした

 すると私は何事もなくスルーっと入る事ができた

 しばらく歩くと、ある建物の扉に手を掛け


「ここじゃ」


 入っていくおじいさんについて行く

 中はそこそこ広く、20人はいるだろうか みんな飲み食いしている

 おじいさんは更に進んで行き、ホールの女の子に声を掛ける

 少し待つと奥からエルフの女性が出てきた


「すまんが、この子に部屋と食事を出してくれんかのぅ」


「はい、畏まりました!」


「食事は部屋に持ってきてくれ」


「では2階へどうぞ」


 エルフの誘導で2階に上がり、部屋に案内される


「こちらへどうぞ!」


 部屋に入る2人


「それではお食事をお持ちします」


 エルフは部屋を出て階下に降りて行った


 おじいさんが口を開く


「もう夜も更けた 食事を摂ったら休みなさい」


「あのぅ、お金を払います」


「ええんじゃ、取っておきなさい」


「・・・はい!遠慮なく頂きます!」


「今日は遅くなったんで、迎えにくるんで昼まで寝ててよいぞ」


「わかりました!」


 おじいさんと入れ違いでエルフが食事を持ってきた


「お待たせ致しました!」


 おじいさんが宿屋を出ると男が3人待ち構えていた

 中央の男がおじいさんを誘導する


「こちらへ」


 男は部下らしい2人を残し、馬車へ乗り込み動きだした


閣下宰相、お久しゅうございます!」


「お主も元気そうじゃの!」


 おじいさん:泡沫国 宰相:テリー

     男:【ハルヨシ村、タカミ村】領主:ノア男爵


「お主が先だって落とした【タカミ村】を見てきたんじゃよ」


「落としたと言いますか、小さな村でしたから話し合いで済みました」


「周辺の村や魔物はどうじゃ?」


「村は2つあります 魔物は【ハルヨシ村】や王都周辺と大差はないです」


「ふむ、早々に2つの村をお主の領地に取り込んでくれんかの?」


「・・・しかし宜しいのでしょうか?勝手な事をして」


「もうええじゃろ… いずれにせよ泡沫国この国は亡ぶ」


「・・・・・・」


「【タカミ村】をこの【ハルヨシ村】ほどの大きさにして欲しいんじゃが?」


「ここほどの大きさにですか… 手の物だけとなると、お時間が掛かりますが…」


「心配せんでよい『王都』からも人を遣わすのでな」


「…はい その後はいかが致しますか?」


「2つの村の住人を、【タカミ村】に住まわせてやってくれ」


「移住させるのですね」


「うむ、そうじゃ」


「しかし、3つの村人を合わせても、200… 150にも満たないかも知れませんが」


「よい、よい、そのあとは、またの機会に」


「して、本題じゃ」


「はっ!」


「今しがた宿屋に泊めた子じゃが、恐らく『外乃者げのもの』じゃ!」


「!!!『外乃者げのもの』!!!」


「【タカミ村】から一緒に乗り合わせてな、ここまで来たんじゃ」


「【タカミ村】の者でございますか?」


「そう聞いたぞい、15になったので『王都』に行くんじゃと」


「産後15の儀ですね」


「それでお主に頼みたい事は………お主は… ノートンは…」


「…全て承知致しました」



 そして翌日の昼頃 宿屋


「コンコン、コンコン、起きとるかい?」


 じいさんが来てくれた


「は~い、今開けますね~ ガチャ」


「用意出来たら、下で食事を摂って出発じゃ!」


「はい!」


 2人は1階に降りる


 既に食事が用意されていた

 席に腰を掛け、食事を頂きながら


「よく眠れたかぃ?」


「はい!とても 乗り合い馬車と比べたら、ぐっすりです!」


「おぉ、それは良かったのぅ」


「ここから『王都』まではどのくらい掛かりますか?」


「あの乗り合い馬車なら1日は掛かるじゃろうな」


「まだ半分って事ですか…」


「もっと早いのがあるから安心せい」


「えっ!本当ですか?」


「本当じゃ!3時間くらいじゃろ」


「さ、3時間!? となると…夕方前に着ける… ごちそうさまでした!」


「じゃあ行こうかの」


 おじいさんはエルフから籐製のバスケットを受け取り外に出ると

 そこには立派な2頭の馬と豪華なキャビンが待っていた


 【cost☆☆(2)アハルテケ Lv2】 ×2頭


「さぁ乗ってごらん、心地良いじゃろ?」


 そーっと乗り込む


「座り心地抜群!」


「あーしてこーするとベッドにもなるんじゃ」


「まるでキャンピングカーだわ」


「気に入ったかい?」


「はい!とても では行きましょう」


「実はな、急な用で行けなくなってしまったんじゃ」


「ええ~、行けないんですか?」


「あぁ、すまんのぅ」


「あの、運賃だけでも払います」


「ええんじゃ、今回は無料ただみたいでの」


「本当にありがとうございます」


「食わんかも知れんが、これは食事じゃ」


「確かに食べたばかりですからね」


「食わん時は、馭者にやっとくれ」


「はい!何から何まで、感謝します」


「じゃあ気を付けて行っておいで」


 おじいさんはキャビンの扉を閉め、馭者の耳元で囁く


「では、諸々頼んだぞ」


「はっ!」

 

 ティセを乗せた馬車は【ハルヨシ村】を出発した


「よし出たな、着替えてわしらも出発じゃ」


 赤毛の馬が引かれてきた


 【cost☆☆☆(3)赤兎馬 Lv1】 ×3頭


 20分ほど遅れておじいさんは出発した


 そして馬車は【王都トーラ】に到着した


 

 次回 第3話『検索』

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