第7話

読み進めていくうちに凪都の顔色が変わった。

そして最後まで読み終わり俺に返してくれた。


「...ありがとうな。 るい、お前はこれを読ませ

ないようにしてくれてたんだな。」


「うん」


「少し..るいにお願いがある」


「?何だ?」


「俺も、王と国の奴らの拷問していいか?」


「.....別にいいぞ。王は俺がやるけどそれでもいい?」


俺がそう言うと、凪都が言いずらそうな顔から嬉しそうな顔に変わった。相当日頃の鬱憤が溜まっているようだ。


お前復讐したがってんじゃん。 あーあ、隠そうとしてて何か損したわ。


本当は復讐に凪都だけは巻き込まないと決めていた。 凪都は優しく、敵にも情けをかけて

しまう人格者だ。そんな人格者が情けかけないで済むくらいのクズだったということだ。この国は。


「でも、意外だわ。 お前が拷問したいって言うの」


「そうか? お前も元々人を傷つけるの嫌いだったじゃん。それに敵にも情けをかけて見逃したりして王に怒られてただろ?今は復讐でいっぱいになってるかもだけど」


「...お前、それを娘の亡骸を父親に見せて絶望させた俺に言うのか?」


「それを言うなら『氷の団長』って言われた俺にも言えないだろ!」


2人はそう言い合い笑った。 俺も、悪人を演じることも忘れて『暗崎 瑠斗』として凪都と話した。 お互いに自分を押し殺していたのだ。 互いを心配する気持ちや仲良くしたいという気持ちを。俺は『無償に助ける英雄操り人形』として。凪都は『氷の団長』として。本当の自分たちは、ここまで人間らしい感情があったことに気づいた。


「なぁ、るい。お前、ちゃんと寝てるか?」


「え? ちゃんと寝てるぞ? どうしたんだよ?

急に?」


「本当か? 俺はお前が嘘ついてるのを知ってるぞ?」


「...」


俺はまた黙ってしまった。 本当は家族が亡く

なった時から6年。国の奴らに利用され続けた

6年俺が寝れる時間がどんどん減っていった。

5時間、4時間、3時間、2時間、2時間半と、

次第に眠れなくなってしまっていた。 今はもう目を閉じても1秒も寝れない。まぁ、目を閉じたら多少はマシだからするだけだ。そのため魔法を使って寝ていた。だが、それを魔法を眠れなくなってしまっていた。気が狂いそうだった。


寝るために目を閉じたら家族が亡くなった時の

情景、国の奴らの顔、俺が救いきれなかった

人達の顔が浮かんできて怖くなるのだ。苦しくなってくるのだ。もっと自分が強かったら助けられたのでは?とか王の言葉を無視してみんなで逃げれば良かったのでは?とか色々な考えをしてしまうのだ。 次第に俺は夜が、人が、嫌いになってしまっていた。


俺がいくら目の下に隈が出来てフラフラで、

顔色が悪くとも俺の異変に気づいた者はいなかった。 いや、俺が気づかないように隠していた。 隠すしか選択肢がなかったのだ。それはそうだろう、所詮俺は英雄操り人形なのだ。 壊れたら新しいのを使えばいいと考えるのも不思議ではない。そのため、壊れていると知られたら間違いなく殺されるだろう。


だが、凪都は気づいていたのだ。 気づいていて立場を考えて話しかけることが出来なかった。凪都の苦悩は想像に固くない。


俺は今まで6年間、弱音を吐かなかった。 いや、吐けなかった。病院の人間にも、門番の2人

にも。俺はいつしか弱音を吐く方法が分から

なくなっていた。 ただ、感情を殺してこの国のために働いていた。俺が全ての真実を知る

までは。


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