第6話
そして、俺と凪都は無事俺の家に着いた。2人は姿を消す魔法をかけるのをやめた。
すると、凪都はすぐさまその場に寝転んだ。
普段(俺達が11歳以上の時)はこんな姿見せな
かった。それを見て俺は立場の壁が消え失せ、俺と凪都の関係は幼なじみに戻ったのだと痛感し嬉しく思った。
やっぱり、俺達はこうじゃないとな。
俺はそう思いながら、 寝転んで伸びをしている凪都を見下ろして話しかける。
「こんな所で寝るなよ? 風邪ひくぞ」
「大丈夫、大丈夫ー。今まで出来なかったんだから好きにやらせてくれよー」
「はぁ、まぁいいけど。 お茶いる?」
「いるー冷たいの!」
「はいよ」
俺は、そう言いお茶を淹れて凪都に渡す。
凪都はそれを一気に飲み、さっきまでの緩い
雰囲気とは一変し真剣な表情になり口を
開いた。
「なぁ、るい」
「! なんだ? なぎ」
「やっぱり、俺の事恨んでるよな?」
「どうしてそう思うんだ?」
「だって、俺は王がるいの家族を殺すって言った時に庇えなかった。だから俺を恨んでるんじゃないかと思って..」
なんだ、そんなことか。
俺はそう思い、自分で淹れたお茶を飲み凪都の問いに答える。
「恨んでなんかないさ。 お前のことだ、色々と
根回ししてくれたんだろ? 庇いきれなかったのも仕方ないことさ。その時はまだ王にあまり
逆らわない方が良い。それについてはナイスとは思ったが責めたりなんかしない」
「そうか。じゃあ、俺はこれからもるいに協力するよ! 復讐だって、その後だって!お前に着いて行くさ!」
「そうか」
「あぁ!」
俺はこの後、何も言えなくなった。 俺はこれから1人で孤独に生きていくことになると思っていたのだ。 凪都も王の思想に染まっているものかと考えていたためだ。
「るいー」
「ん? 何?」
「袋のやつどうする?」
凪都の問いに俺は当然かのように魔法で空間を開き、それに王の入っている袋を入れ空間を
閉じた。
魔法の空間は、何年経っていても劣化などはせずに鮮度も変わらない。 だが、空間魔法は魔力操作が難しく消費魔力量も多く習得しにくい高難易度の魔法だ。 そのため空間魔法を使える
者は、極々僅かである。
そんな珍しい魔法を見せられた凪都は、呆れた顔をしていた。
ん? 凪は何でこんなに呆れてるんだ? 何かしたか?俺
「やっぱり、規格外だな。 お前は」
「え? どゆこと? だって凪だって出来るで
しょ?」
「そりゃ、出来るけどお前ほど使いこなせない
って」
「ふーん、そういうもん?」
「そういうもんなの!」
凪都はそう言いため息をつき思った。
(こいつが味方で良かった)
と。 俺は寝る準備に取り掛かる。それを見て
凪都は俺に問いかける。
「え? もう寝るのか? 国民の奴らが残ってるぞ?」
「あぁ。そんなの、いつでも出来る。俺は、あいつらの絶望するのが見たい。あいつらが崇めてた王が朝起きたら居なくなってて、王以外城のやつは死んでるんだぜ? それ以上にあいつが絶望することはないだろ?」
俺はそう言い、奴らの絶望する顔を想像し
不適切に笑う。凪都は、驚いていたが納得していた。人というのはここまで残酷に冷酷になれるのだ。
「なるほどな。 にしても、お前がこんな冷酷に
なれる奴だったんだな。俺はてっきり王以外の奴らは楽に殺すのかと思ったぜ」
「そんな甘ちょろい復讐はダメだ。 奴らも、俺の家族を後ろ指で指して陰口を叩いてたんだ。楽に何て死なせて堪るか」
「そうか」
「それに、俺は思うんだ。人の心には絶対に少なからず冷酷で残酷な心はある。今の俺は、それが表に出てきてるだってな」
俺の答えに「そうか」と返し、肩を組む凪都。
きっと、さっきまでは復讐の再確認をしようとしてくれてたのだろうと俺は思った。
「るい」
「何?」
「お前の復讐が終わったらどこ行く?」
「え?」
そんなこと俺は考えもしなかった。 凪都は1度両親を失っている。原因は王が殺せと命令したからだ。 凪都は、そのことを知らない。
事故だと知らされているからだ。 俺も王の部屋を探った時に判明したのだ。 国の奴らもそれに賛成していたことも。こんなこと凪都に言えるはずがない。
「るいと一緒に旅なんて何年ぶりだろうな!
きっと楽しくなるぜ!」
「そうだな」
「?るい。なんか俺に隠してくことあるんじゃねぇーの?」
「...」
俺は黙った。 凪都に嘘はつきたくなかった。
この時点で悪人になんてなれないだろうけどな。
凪都は無言の肯定と察して、俺の方をジトーと
見た。 俺はそれに耐えられなくなり白状する
ことにした。
「わかった! 言う! 言うからそんな目で見るな!」
「ハハハッやっぱり、お前これ嫌なんだな! 本当に変わんねぇな!」
「う、うっさいなー! ...じゃあ、話すわ。 俺が王の部屋を漁って気づいたことなんだけどな」
「うん」
「とりあえず、これを見てくれ」
俺はそう言いある書類を凪都に渡す。 それを
受け取り凪都は読み始めた。
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