第8話_7月13日開会宣言
7月13日土曜日。時計の針は20時を指した。
スポットライトが壇上の中央を照らす。黒のタキシードを着た男が姿を現した。
盛大な拍手と歓声が上がった。
「皆さま、本日はお忙しいところご参加をしていただき、誠にありがとうございます。株式会社神楽カンパニー代表取締役会長の神楽重吉でございます」
神楽重吉は頭を下げた。
一段と大きな拍手が大きくなる。その拍手が収まるのを待ち、神楽重吉は言葉を続けた。
「このコロッセオが10回目を迎えられるのは、ひとえに皆様のご尽力のおかげでございます。誠にありがとうございます。本日より開始いたしますコロッセオに先立ちまして、大会進行役の1人、スカウトマン・プロ―トスよりご説明をさせていただききます」
神楽重吉は深々と頭を下げた。
スポットライトは暗転し、壇上の脇の1箇所を照らした。そこには、白い仮面をかぶったタキシード姿があった。
タキシードの者は深々と頭をさげた。
「スカウトマン・プロ―トスと申します。神楽重吉に代わり、今大会の説明をさせていただきます」
スカウトマン・プロ―トスは少し間を開けてから口を開いた。
「今大会は、初のバトルロイヤル方式で進行致します。この大会の様子は、アプリ『コロッセオ』でご確認いただけます。まだ、アプリをダウンロードされていない方は、早めにダウンロードをお願い致します。今回の参加者は、神楽重吉と、我々スカウトマン9名、合わせて10名が、それぞれ5名の参加者を準備しております。今大会参加者50名の名簿がアプリでご確認いただけます」
どこからか「ラスボスがいるぞ」と声が上がる。そのざわめきは波紋が広がるように広がっていった。
スカウトマン・プロ―トスは「大会の覇者になった者はスカウトマンに選ばれます。本来であれば、スカウトマンは運営側ではございますが、ラスボスこと北上慶次の希望でスカウトマン・エナトスでありつつも、参加者の1名とさせていただいております」と静かに言葉を添えた。
その言葉に火が付いたように、会場の声が大きく広がった。そのざわめきがおさまるのにしばらく時間がかかったが、やがて、終息に向かい、おさまったところでスカウトマン・プロ―トスが口を開いた。
「今大会は例年と違うところがございます。大会の醍醐味の1つであるベットにつきましては、約1か月後の8月11日日曜日から8月15日火曜日にその期間を設けさせていただきます。また、オッズにつきましては、8月1日木曜日にご案内致します」
会場の誰かが「待っていたら、オッズが出る前に大会が終わるじゃないか?」と声を上げた。
「ご不安に感じる点はあると思います。もちろん、本日より開始しますので、参加者は間違いなく淘汰されていきます。ですが、ベット開始までの間はデモンストレーションと思いご歓談ください。皆様には、この期間は参加者の品定めの期間としていただき、お気に入りの選手を見つけてください。この期間の間に、よりエキサイティングになる仕掛けを用意しております。きっと喜んでいただけることでしょう」
スカウトマン・プロ―トスは言葉をきり、間を演出する。このスカウトマンが空気を支配していた。
「料理はおいしくさせるために熟成という工程がございます。今回の大会をさらにおいしくさせるための1カ月とご理解ください」
スカウトマン・プロ―トスは深々と頭を下げた。それを合図とばかりに、会場は声援と拍手の雨が降り注いだ。
雨が小降りになった頃合いを見計らって、スカウトマン・プロ―トスが「それでは、神楽重吉より、第10回コロッセオの開会宣言をさせていただきます」と頭を下げた。
スカウトマン・プロ―トスにあたっていたスポットライトが暗転し、再び、壇上中央にスポットライトが明転し、神楽重吉が姿を現した。
神楽重吉は満面の笑顔で両手を広げた
「只今より第10回コロッセオの開始致します」
会場は割れんばかりの歓喜と拍手に震えた。
<登場人物>
■崎山高校
・伊藤涼介:高校1年生。久原道場の元門下生
・古賀星太:高校1年生。生徒会所属。涼介の幼馴染。久原道場門下生
・高山明:高校1年生。同級生。思い出作りに燃える。
・長谷川蒼梧:高校1年生。同級生。美形。
・桜井千沙:高校1年生。同級生
・笹倉亜美:高校1年生。同級生
・小森玲奈:高校1年生
・池下美咲:高校1年生
・久原貴斗:高校3年生。生徒会議長。武闘派。久原道場師範代。
■株式会社神楽カンパニー
・神楽重吉:神楽カンパニー代表取締役会長
・白い仮面の男:スカウトマン・プロ―トス
・石田:スカウトマン・ヘクトス
・北上慶次:スカウトマン・エナトス、ラスボス
■不明
・水野:日本刀を持つ女
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