第11話 ジェネレーションギャップ

「尾道といえば、有名だろうよ。」

「ラーメンですか。」

「違う!」

京一はそんな言葉の後、アクセルを踏んだ。事故りそうになった事がなかったような空気が流れている。京一は、前方を見つめて、耳を立てて徹の言葉を待った。

「…。」

徹は、<尾道>について考え込んでしまう。

「わからんか、<時をかける少女>とか<転校生>とか、知らんね。」

「知らないです。」

迷うことなく発せられる言葉。徹の中でも、事故りそうになった事が、どこかに行ってしまっていた。京一は、こんな状況の中、年齢のギャップ,ジェネレーションギャップを覚えてしまう。映画好きでなくても、角川映画の<時をかける少女>ぐらいは知っていると思っていた。年齢を考えれば、当たり前の事なのかもしれないが、何か寂しくなってしまう。

「フぅ…。」

「なんですか、田口さん。」

「こういうのを、ジェネレーションギャップって言うやな。ほう、知らんのか。」

インドアで、映画好きである京一にとっては、よほどショックであった。徹にかける言葉が見つからず、しばらく、黙りこんでしまう。盛り上がっていた車内が、一気に冷めていく。初めから、わかっていた事であるが、年齢が離れていれば、話題が噛み合わない事多数ある。部下との酒の席では、こんなにショックを受けた事はなかったのだが、徹と噛み合わなかったことがショックだった。順調に、楽しいと思える時間を過ごしてきた。なんなら、十年来の友達だと、錯覚するほど、距離は近づきつつあった。年齢という壁が、親しんだ雰囲気を壊してしまう。どんなに親しくなっても、生きてきた年齢だけは、埋められない。何とも言えない悲しみを感じつつ、京一はハンドルを握っていた。

まァ、こんな事があり、二日目が終わっていく。明日になれば、そんな沈んだ気持ちも回復している事でしょう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る