彼(女)、ポニーテールになります。

 さっと水着に着替えて、タオルを持ってマッキーと軒下待機なう。

 この手の着替えって女子は時間かかるよなあ……とか思いつつ、芝桜家貸し出し品の浮き輪とビーチボールを膨らませ終わったところで――。


「お待たせしました」


「待たされました」

「もう一度言ってみなさいマツライ」

「こちらも今着替え終わったところです閣下」

 女子組(芹那含む)のエントリーだ!

 こまりんは質実剛健な競泳水着、ツナ氏はおしゃれな半袖短パン風、そして芹那、は……ッ!!?

「こっ……この髪型をプロデュースしたのは誰だーッ!」

「えっ!? わ、わたしです……」

 ツナ氏とすかさず握手。牛乳瓶が握られていたらバターが出来上がりそうな勢いで握手。両手で握手。

 ポニーテールがこんなに最高の髪型だとは思わなかった。その気がなくても「俺、実はポニーテール萌えなんだ」なんてラノベの主人公めいたセリフを口走ってしまいそうになるほどキュート、キューティー、キューティスト。シュシュでまとめているのもナイス。

 そこへジャージ風の長袖ラッシュガードにショートパンツな水着が合わさり最強にスポーティー。そして黒い生地との対比で白くて細いおみあしがまぶしい。

 もはや全オレがスタンディングオベーション。甲子園優勝。ノーベル平和賞……。

「――はっ」

 斜め下からほっぺに向かって飛んできた鈍くて軽い感触のおかげでただいま現実。

「ヒトの手握ったままトリップするな、つなし困ってたぞ」

 慌てて両手を離――そうとしたらもう離されてた。ツナ氏の方を向けば返答は苦笑い。

「もう大丈夫、芹那の猫パンチのおかげでオレはしょうきにもどった!」

「その台詞、大丈夫じゃないやつじゃありませんでしたっけ? ……まあともかく、外に出て軽いストレッチから始めましょうか。男子も日焼け止めは塗っていますね? 終わったら外用のシャワーがあるのでそこで慣らしてプール内へ――」

 と、ここでマッキーに向けられる怪訝な視線。

「……一応聞いてやりますけど、なぜ片足立ちで体をひねって直立しているので?」

 これは……と顔を見合わせるツナ氏とオレ、ジト目の芹那、ハイパージト目なこまりん。

「Don't worry, I'm wearing――」

「「パンツ!!!」」

「Thank you!」

「……このためにブーメランタイプの水着を選んできたんですか?」

「そうだが?」

 こまりんのため息、マントルに届く勢い。

「顔だけはいいのに……カラダもそこそこ締まってるのに……」

 たしかにマッキーはしごでき委員長の右腕なクール系副委員長って見た目してるけど――でもオレはそこにとどまらない愉快なマッキーが好きだな。

「OK, Next naked pose……」

「……みなさん、バカは放っといてストレッチしましょうストレッチ。時間が勿体無いので。ほら外に出ますよ」

「アッハイ」

「…………」

「あははー……」

「……む、仕方無い。真面目に参加しよう」

 そして全員、勇者パーティのごとくこまりんの後に付いていくのだった。

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