放課後採寸タイム

「で、脱げばいいのか?」

 ――保健室内の個室スペース、中には俺と委員長、そして採寸用メジャーを持ったつなし

「インナーの種類は?」

「タンクトップっぽいやつ」

「そうですね、ではパンイチになってもらう形で。……ワタシとツナは後ろ向いてるので、脱ぎ終わったら声がけください」

 さっきまでの勢いが嘘のように淡々とした口調だ。温度差で風邪引く。……まあいい、さっさと済ませよう。

 ――ポロシャツのボタンを外して脱いで椅子にかけて、ズボンを脱いで、タンクトップも。

 体育の着替えでもここまで脱ぐことはないな。身体測定くらいか? 女になってから学校で測ったことはまだ無いけど。

「脱いだぞ」

 ――声をかけると同時、つなしがそそくさとこちらに駆け寄ってメジャーを構える。

「丁字くん、ちょっとごめんね。すぐ終わるから――」



 メジャーを少し引っ張り出して、丁字くんに近付く。……肌、赤ちゃんみたいにすべすべでなめらかだ。うらやましいなあ、からだは華奢だし、髪の毛もふわふわで……――と、いけないいけない。作業に集中。

「えーと、まっすぐ立って……腕を少し浮かせてくれる? メジャー通すね」

「ツナ、水着だからアンダーはいいですよ。トップと一応ウエスト、ヒップの三箇所で」

 こまりちゃんに頷いて、採寸再開。

 胸囲に合わせてメジャーをくるっと通して、適度にきゅっと引っ張って――。


「……すれる、くすぐったい……」


「っ、ごめんね!? えーとっ、77っ!」

 ――数値をパッと確認して、メジャーをウエストの位置にずらす。

 な……なに今のかわいい声……!!? 縮こまるみたいにぼそっとした、つい抱きしめたくなっちゃうような……! ……い、いや、落ち着けわたし。今は与えられたミッションを忠実に遂行するのみ……。

「え、えーと……ウエストは55……で、ヒップは――80かな」

「なら水着はSSサイズですね。Sか判断しかねていたのでやはり測ってよかったです。――ふたりともお疲れ様でした。丁字は服着ていいですよ」

 丁字くんがもぞもぞと着替え出す。……もう少しゆっくり丁字くんの綺麗なからだを眺めていたかった、なんて思った自分に軽くビンタ。

「……蚊でも居ました?」

「いやっ、なんでもない……! あ、そ……そうだっ! こまりちゃんが丁字くんに選んだ水着ってどんなやつ?」

「ああ、今出しますね」

 そして、スマホに映し出された商品画像は――。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る