水着回?編
そうだ プール、行こう。
放課後。いつものように芹那の机に駆け寄って、声をかける。
「せーりなっ、プール行きたくない?」
「行きたくない」
「えー」
とは言いつつ、ここまでは想定内。芹那からの『反対』は挨拶みたいなものだしね。
「なんでー? まだまだ暑いじゃん。中学と違って授業にも無いし、どこかでいっぺんつめた〜い水に浸かりたくない?」
「俺が人混み苦手って知ってるだろ。……行ったところでやることもないし。だいたいもう施設的にはシーズンオフの時期じゃないのか? 九月もそろそろ折り返しだぞ」
人混みを回避しつつシーズンオフにも対応できるたったひとつの冴えたやりかた、あったんだなそれが。
「ワタシの家なら構いませんよね?」
オレの背後からひょこっと顔を出すこまりん。学級委員長の出現に豆鉄砲フェイスな芹那、不意を突かれた顔もかわいい。
「なんとこまりんの家にはプールがあります」
「公共施設レベルとは行きませんが、そこそこ泳げますよ、ウチ。泳がなくても浮き輪や水鉄砲がありますし――おやつには自家製苺ジャムと練乳をかけたふわふわかき氷もお出しできます。どうです?」
かき氷のくだりで芹那が一瞬ぴくっと反応したの、オレじゃなきゃ見逃してたね。
「……み、水着無いし」
「こちらで手配します。参考にボディサイズは計測させてもらいますが――あ、別にいかにも女の子らしいデザインのものを着せてやろうとかそういう魂胆はありませんので、ご心配なく。……なんなら誓約書を作りますよ?」
あ、ちょっと引いてる。
「なんでそこまで全力なんだよ……」
「己が求める成果のため、何事も全力を尽くすに越したことは無いでしょう?」
……こまりんにとっての成果、イコール芹那の水着姿なことはさすがにナイショだなあ。ちょっと遊びたくて軽い気持ちで提案したオレより遥かにやる気がすごい。……たしかに芹那のいろんな姿は見てみたいけど。
「はぁ……わかった。断る方がメンドいことになりそうだし」
こまりんとオレ、歓喜のハイタッチ。
「このあと時間あります? ありますよね知ってます。早速保健室へ! 水着は見繕ってあるのでサイズ確認してデザインに問題が無ければ即注文と行きましょう! あ、
またたく間に芹那が連れ去られてしまった。ごめん、こうなったこまりんはなかなか止めるスキが無くて……。
「……さすが力の委員長、中学時代から衰えるどころかますます人間台風っぷりに拍車が掛かりまくっているな」
遠くでこっそり見守っていた技の副委員長!
「珍しくマッキー、今回は助手ポジションにされなかったね」
「肉体的性別のこともあるからだろう。代わりに
「あ、じゃあツナ氏もプール来る感じ?」
「恐らくな。……廊下は暑い、保健室へ向かう前にこの麦茶を飲んでいくといい」
「ありがと、いただきまーす。……ところでさ、『マタタクマ』ってポケモンにいそうじゃない?」
「スピード系のクマ型生物か、恐ろしいな……」
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