それから(前)
ほんと、今日も残暑どころか夏真っ盛りな天気だなあ――って話題が脳内ループしちゃう程度には暑い。オレも日傘買おうかなあ……。
と、カーナビなら「まもなく目的地に到着します」な距離まで到達。
ん? あのジャージ姿は――。
「あ、オヤスミくん」
「なずなちゃん、おはよう。今出るとこ?」
「うん、今日は朝練ないから。……
それとなく日陰に移動。なずなちゃんも追従。
「それでも早めの出発じゃない? もう少しゆっくりしても間に合うと思うけど――」
「早く着いたらそのぶん友達と話したりできるし。あと、今みたいにオヤスミくんと話してても遅刻しないし?」
へへん、と腰に手を当ててドヤ顔。……なずなちゃん、ほんと芹那と対象的だなあ……なんて思うオレであった。
「あ、そうだ。……お兄ちゃん、なんかあったの? 昨日帰ってからずっと、いつもの五倍くらいマジックインキな顔してたから」
訂正。芹那を『陰気』と称しながらも心配そうにしてるあたり、しっかり芹那と兄妹だ。
「んー、ちょっとね。オレと喧嘩――ではないんだけど、それでかな。でもちゃんと仲直りできてるから、大丈夫だよ」
そしてどことなく面影のあるジト目フェイス。
「……オヤスミくん、やっぱお兄ちゃんに甘くない? 絶対やなこと言われてるでしょ……。メに余ったら報告してね? もう『ガツン』だからっ」
……今のジェスチャー、『ドゴォ』くらいの勢いあったなあ……。
「――じゃあね! お兄ちゃんねぼすけだけど、根気よくガンバってねっ」
◆
ノック。……今日も返事無し。そのまま入室。
「芹那、おはよう――」
……改めて芹那の部屋、整ってて偉いよなあ。必要最低限って感じ。オレからするとちょっと寂しくも思うけど。
それはさておき――芹那起こしチャレンジ、第二日目開幕。
「せーりなっ、おはよー、朝ですよーっと」
まずは腕を優しくトントン。果たして芹那は――。
「おきてる……」
起きてた(横にはなってるけど)。それとむにゃむにゃボイスかわいい。
「よし、そのまま頑張って起きようっ」
「………………」
芹那がゆっくり起き上がる……も脱力! ぽふんと横に倒れそうなところを間一髪でキャッチ。ななめ45度を90度のところまで調整。
「んぅ……」
「――ん!? ちょっ……芹那!!?」
起き上がろうとしてオレを支えにするなら分かる、しかしどうして腰に抱きつかれているのかコレガワカラナイ。……あ、抱き枕だと思われてる?
「ちっ……違うよ? オレだよオレ」
詐欺みたいになっちゃった。……ええと、どうしたら……。
「………………」
……いや、違くて。なにやってんのオレ。頭なでてる場合じゃなくて。……ああ、でも ……なでる度に芹那が頭押し付けてくるの、嬉しいな……。このまま学校サボってずっとナデナデできたら確実にハッピーだよなあ……。
……いや、人ん
えーとえっとえっと考えろオレ。芹那が起きる方法、起きれる方法、起きたくなる方法――。
「……あ」
ポッケからスマホ召喚。アプリ起動して……ウォッチリスト、……で、テキトーな話選んで、ちょっと飛ばして音量上げて……。
『宇宙の片隅の惑星、チキュー。五つの王国が治めるこの星に、巨大な危機が迫っている!』
「んえ」
がば、と顔を上げる芹那。作戦大成功!
「えへへ……おはよう。さすがに戦隊始まったらイヤでも頭起きるよねぇ」
ライダーだと放送順の関係でまだ頭ぼんやりしてそうだし。あとはイントロのギターと前口上がすみやかに脳まで行き渡るかなって。
「……なんでオマエにくっついてんの俺」
ばっと離れる芹那、そして名残惜しいオレ。
ともあれ目が覚めてくれてよかった。
「これからこの作戦で行こうかな」
「やめろ、曜日感覚バグる」
ベッドから降りた芹那を先導して、部屋のドアを開けてあげて。
それじゃあ今日もはりきって待機&準備!
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