きみはツンデレTS娘

 帰ってとりあえずシャワーを浴びて、着替えてソファに寝転んで現在いま

 無理に追っても良くない気がしてあのまま芹那と別れちゃったけど――芹那、大丈夫かな。無事に帰れたかな。……連絡しても見てくれないかな。

「うーん、オレもなー、悪いよなー……」

 と、ここで静寂を切り裂く通知音。

「……ん、新着メッセージ……芹那から?」


『今日はごめんなさい』

『俺、すぐ嫌な態度取るし、ノリ悪かったり、久樹に当たるし』

『甘えてるよな』

『本当にごめんなさい』

『そば、おいしかった。ごちそうさま』

『歌も上手かった。正直びっくりした』

『お世辞とかじゃないから』


「『ありがとう!』……それと『いいよ』のスタンプ……よし。『また一緒に寄り道しようね』――と」

 即レスしたからかすぐに『既読』が付いてくれた。ちょっと安心。

「通話……かけてもいいかなあ」

 言い終わると同時、流れるように通話開始ボタンをポチー。口では迷うそぶりをしてても体はとても正直だった。

 ……さて、芹那は出てくれるか。

『……なに』

「あ、芹那? 大丈夫? 落ち着いて帰れた?」

『……うん』

「よかったー。……あのさ、オレもごめんね。芹那のこといろいろ振り回しちゃったり、いろいろ過保護に扱っちゃったり――」

『別にいい。……オマエがそういうヤツなの、十分知ってるつもりだし』

「えへへ……ありがと」

『…………あのさ』

「うん、なあに?」

 沈黙。……きっと言うこと考えてるんだろうな。大丈夫、ゆっくり待つよ。

『……髪洗ったあと……乾かすの、面倒で』

「うん」

『一応ちゃんと、ドライヤーしてるけど……でも不完全かもだから――……寝癖、つくと思う』

「うん」

『起きるのも……多分、明日もアラーム通りに起きらんない』

「うん」

『だから、あの……』

 申し訳無さそうな芹那の声。

 ……不器用でいじらしい友達が、最後の一歩を踏み出せずにいる。

 なら、オレのすることは――。

「――うん! 任せて、明日もバッチリ起こしに行くよ! 寝癖直しもどんと来いっ」

 ――電話越しに聞こえるため息は、いつもより小さくてやわらかい。

『ぁ……――えっと、も、もう切るからっ。おやすみっ!』

「うん、また明日ね。……ふふ、大好きだよ!」

『っ……一言余計だっ!』

 ――通話終了。

 画面を消して、ひと息つく。

「……よかった」

 さて――少し遅くなったけど、夕飯の準備をしようっと。

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