見た目は美少女、中身は

 紙パックのいちごミルクをすすりながらジト目でこっちを見てくる芹那――ずっと見てられる。見入っちゃう。椅子に座った足元が微妙に浮いちゃってるのもかわいい。身長、何センチくらいだろう? 見た感じオレと頭いっこ分くらい違いそう。

 カーディガンがちょっと大きくて萌え袖っぽくなってるのもかわいい。……あ、よく見たらズボンの裾も折り返してる……。

「……静かにされると逆にきもい」

 まさしく『美少女』と言うのにふさわしい人。

『今まで出会ったことない』と断言できるレベルの衝撃。

 でも、こっちをじとっと見てくる表情かおはまさしく見慣れた芹那のそれで……。

「……なんか喋れよ」

 芹那が拗ねたみたいに呟く。

ごめんね。かわいい。えっと、何から結婚して話そうかなください

「帰りに脳みそ検査してくか?」

 だめだ、おかしい。冷静にしゃべれない。

「……『はっ、つい本音が』みたいなポーズ、何?」

 つよい、愛想を尽かした面接官みたいなため息すらゴッドブレス。それか花束。

「ていうかさっきからなんだよ結婚結婚って……冷静に考えろよ、俺だぞ。なーかーみーはーおーれ。……見た目が良いのは認めるけど……見た目さえ良ければ誰でもいいのかよ。最低だな」

 吐き捨てるように芹那が言う。――けど。

「え、オレふつうに芹那のこと好きだよ?」

「は?」

 あ、スペースキャットな瞬間ところもかわいい。

「芹那のこと好きだよ。大好き。芹那はなんていうか……たまに『俺なんて』とか言ったりするけどさ、でもオレは芹那のこと好きだよ。大好きな、大事な、大切な友達!」

「……誰にでもそういうこと言いそうだよな、オマエ」

「誰にでもは言わないよ?」

 てんてんてん、な間を置いて、二度目のゴッドブレス。

「中身ありきの『結婚して』じゃないだろって言ってんの。もとの俺には思わないだろ」

「うーん、きっかけ次第?」

 ジト目。もはやご褒美。

「オマエって変態だな」

「ありがとうございますっ」

「マジできもい。そういうのやめて」

「ふふ」

 いつもの調子が戻ってきた気がする。

 ……うん、見た目が変わっても芹那は芹那。オレもオレ。いつも通りお話できる。大丈夫。

「いったんお茶飲んでいい?」

「別に、勝手にしろ」

「ありがと。――――ぷはーっ! この瞬間のために生きてるって感じが」

「そういうのいいから」

「ふふっ」

 いつもの視線が心地いい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る