第2話 赤信号は止まらない

「グッドモーニング世界!今日もいい朝だ!」


土曜の朝早く赤石太陽はモーニングルーティンであるランニングを終えて、ストレッチを始めようとしていた。


「いっちにーさんし。ごーろくしちはち。いっちにーさんし。ごーろくしちはち。」

「朝からうるさいな・・・何やってんだよお前。」


声の方には裕也が立っていた。どうも不機嫌そうな顔だったが朝が苦手なのだろう。


「何って朝はやっぱりストレッチだろ??裕也もやるか?」

「やらないし、ストレッチってじじくさくねぇか?」

「ストレッチは身体にいい!年齢に関係なくな!!」

「ねぇ朝から五月蝿いんだけど。」


さっきまで裕也がいた場所に日花里がいた。こっちもまた不機嫌そうな顔...というよりは呆れた顔をしていた。これがまたヒーロー事務所の日常なのである。


「別に俺はうるさくねぇだろ。」

「そうだぞ!!うるさいとはなんだうるさいとは!!」

「そういうところよ!なんでこう朝からそんなに元気なわけ!!」

「あれ日花里が朝から来るなんて珍しいな」

「まぁ今日休みだったし...たまにはいいかなって思って。」

「いい心がけだな。さて今日も任務をこなしていくぞ!!」

「そうはいうけど全部太陽がやっちゃうじゃない。私たち後ろからついてくだけよ?」

「そうなのか?」

「そうだろ。この前だって」


そう言って裕也はつい先日の任務の話を始めた。

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山田おじいちゃんの入れ歯がなくなったとのことで家に出向き探しに来ていたのだ。

実際到着してすぐに玄関にポツンと置かれた入れ歯を渡してすぐに去ることになったのだが...


「よし任務完了次は隣町の藤岡さんのところだな!!」

「太陽ちょっと待ってって...そんな走らなくても。」

「皆が俺を待っている!助けを求められる限り俺はその声に答え続けるのだ!!」


そう言い放ちながら太陽は自転車に跨り二人を置いて走っていってしまった。取り残された二人は諦めて山田おじいちゃん宅でお茶を啜って家に帰っていった。

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「ってことがあっただろ?」

「あーそんなこともあったな。申し訳ない。」


当の本人は全く反省の色が見えず今にも依頼をこなしたいと言わんばかりに体を揺すっていた。なぜこんなになってしまったのか...


「んで今日の依頼は?」


珍しく乗り気の裕也のそのセリフに太陽は驚きを見せたがすぐに自分のメモ帳を取り出し今日の依頼内容を確認し始めた。


「加藤さんの息子さんと遊んで、後藤おばあちゃんのお使いそのぐらいだな。」

「そのぐらいなら俺でもできるな。たまには俺にやらせてくれないか?」

「そうか...?裕也がそういうならお願いしよう。じゃあ俺は新たな仕事を...」


少ししょんぼりした様子を見せ新たな仕事を探し始めた。


「たまにはくつろぎましょ。とは言ってもここでだけど....」

「そうか?でも裕也は任務を...」

「いいって。適当にくつろいどけ。」

「じゃあお言葉に甘えさせてもらうとしよう。」


少し落ち着きのない様子ではあったが、これで少し話ができることだろう。裕也はプレハブ小屋を後にし私と太陽だけになったところで軽く整えられたキッチンのような所に向かった。


「お茶飲む?」


俺が入れると言われたが太陽の入れるお茶は絶対に不味くなるので軽く断りを入れこちらの判断で選ぶことにした。


「紅茶でいいよね。ストレートしかないからこれね。」

「ああ、ありがとう。」


お茶を入れると言っても太陽が持ってきたであろう電気ポッドでお湯を沸かして茶袋に注ぐだけなのだが...太陽の方を見やり疑問を投げかけた。


「何悩んでるのよ。」

「え...」

「何か悩んでる様子だったから。裕也もそれに気づいてたんでしょ。」

「悩みか...特段あるわけではないのだがな。」


少し時間を空けて太陽は口を開いた。


「日花里はどう思ってる?」


何を聞かれているのか分からず首を傾げているとすぐに言い換え


「日花里は...ヒーロー活動に対してどう思ってる...?」

「突然どうしたのよ。太陽が始めたことじゃない。」

「ああそうなんだが。最近思うんだ。本当に苦しいくて助けを欲してる人は、助けを求めることすらできないんじゃないかって...」


ただ子供の頃の遊びの延長線、太陽のことだからそれですら本気でやっている。そんなものだろうと思っていた。だから私たちもその時のような気持ちでついてきていた。でも太陽の中では違ったらしい。


「俺たちは依頼を受けてそこでやっと動き始める。それは俺のやりたかったことで何も問題はない。ただ、本当に助けなきゃいけない人を助けられない気がするんだ。自分勝手に優しさを押し付けようとしてる偽善かもしれなけど。本当はそういうことがしたい。だからこのままでいいのかって。」

「そうだったのね。人間できることは限られてるだから全員救いたいなんて傲慢は通らないと思う。でもそう思えてるだけでいつか太陽が望むものになるんじゃないかしら。」

「そうか。ありがとう。」


少し晴れたような、でもまだ何か隠し持っているようなそんな雰囲気に私はを聞きたくなってしまった。


「いいえ。ねぇ太陽一つ聞きたいことがあったんだけど。」


なんともいいタイミングで電話が鳴り響いた。太陽はすぐに反応して立ち上がった。


「すまん。『こちらヒーローチーム赤石です。あぁ裕也かどうした?・・・あぁそうかわかった今すぐ向かう。あぁ。わかった。一応周りの安全確保よろしく頼む。すぐに向かう。』どうも商店街の方でヤンキーが暴れているらしい。今すぐいくぞ。」

「ヤンキーが暴れてるって...漫画の中の世界でもないんだから...」


そういうとかけてあった赤いマントを背負って走っていってしまった。

正直に言おう。恥ずかしい。

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自称ヒーロー 桜 桜餅 @sakurasakuramoti

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