第24話 鑑賞会

ネットで心霊好きなA、Bと知り合って、私も含めた3人が各々でホラー系のDVDを1つ選んで、レンタルスペースで視聴して考察したり感想を言い合って楽しむという【ホラーDVD鑑賞会】をすることになったんです。自分のおすすめのDVDを用意してレンタルスペースに向かったんですけど、みんながホラー動画投稿系のDVDを持ち寄ってたんですよね。1巻あたりの時間が短そうだから4時間もかからないかな〜、終わったら何する?なんて話しながら観ていたんですけど、Bが持ってきたDVDの映像を観ていた時に、あれ?この建物、うちから数km離れた場所にある廃墟とすごい似てる、と思ったんです。その廃墟は特に誰かが亡くなったとか事件があったわけでもなく、でも何故か心霊スポットみたいに扱われている場所なんですけど、知ってる廃墟に似た場所が突然出てきたことに驚いてしまって、


「…ここ、うちの近くにある廃墟に似てる。」


と呟いたら、その廃墟に行ってみたい、時間あるし行こうよって2人が言い出したんです。まだDVD観てる途中なのに…と思ってたんですけど行く気満々の2人を前にしたらなんとなく断れなくて、レンタルスペースの鍵を返して車で向かうことになったんです。車を飛ばして40分ぐらいだったと思うんですけど、私が言っていた廃墟に着いて車を降りたら、映像の中の廃墟に似てる、というか映像に映ってた廃墟そのものが目の前にあったんです。本当にあるんだ…すごいね…と話してたらBが、


『あっち、進めそうだよ!行こう!』


て言い出したんですけど、何だかやっぱり私は気分が乗らなくて、


「ねぇ、やっぱり帰ろう。家の近くにそんな場所があるなんて嫌だ。気持ち悪い。」


と断ったら、聞こえてて無視したのか、それとも聞こえなかったのかBが1人で奥の方に進んで行ってしまったんです。Aと私で待ってよ、なんて言いながら追いかけたんですが、Bは慣れてるかのようにどんどん先へ進んでいくんですよ。その時に少し違和感を覚えたんですよね。あれ、私たちさっきまで観てたDVDの映像と同じことやってるようなって。その場で立ち止まってしまった私に対してAが大丈夫?と声をかけてきたので、


「観てた映像と同じ流れになってる…。」


と指摘すると、そこでAも気づいたのか立ち止まってしまったんです。遠くから私たちの名前を呼びながら来ないのー?ていう声がずっと聞こえてたんですけど、怖くなってBをその廃墟に置いて帰っちゃったんです。


呆然としているAと、廃墟に人を置いてきてしまった罪悪感から私は、観てた映像と同じ流れになっているなら最後まで観たら何か分かるかも、とAをなんとか説得して私の家でDVDの続きを見ることにしました。映像の続きでは、3人のうち2人が車で走り去ってどちらかの家に逃げ込んだところ、までが一緒でその後は、家の中で怯えていたら部屋のインターホンが鳴る、ドアの外で男性の呟く声が聞こえる、暫くしてその男性がいなくなったかドアスコープを覗いて確認する、ドアを開けて姿が見えないので安心して怯えている友人の元へと戻ると、友人の後ろに人影が映った、というところで映像は終わってました。


『…Bって何者なんだろうね。これからどうなるんだろう…。』


そう呟くAに何と返事をしていいか迷っていたら私の部屋のインターホンが鳴ったんです。お互いに目を見合わせて黙っている私たちに



『おいていくなよ。』



とドアの外でボソッとこぼしたBの声を今でも覚えています。DVDで観た映像と違う結末になってしまったのは【私たちが今回のことをそもそも撮影していなかった。】というのが大きい気がします。次のターゲットを廃墟に誘導するために見せる映像を私たちからは得られず、何ならBが持ってきたDVDも、私たちがドアを開けなかったために取り返すことができなかったから去って行ったんじゃないですかね。Bは結局なんだったのかは分かりませんが、あの廃墟が心霊スポットといわれる理由がわかった気がします。

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